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万華鏡

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第四十五話 運動会当日その一

              第四十五話  運動会当日
 運動会の朝にだ、琴乃は朝食の時に母にこう問われた。
「あんた制服で行くのよね」
「そうだけれど?」
「いや、小学校や中学校の時は体操服だったわよね」
 運動会のその日はというのだ。
「それで登校してたのに」
「高校は違うのよ」
 琴乃は朝食のハムエッグで御飯を食べながら母に答えた。
「だってバスとか電車で行くじゃない」
「中学までは歩きだったからね」
「それでね」
「制服なのね」
「そう、学校までは制服で通って」
 それでだというのだ。
「学校で体操服に着替えるの」
「体操服は用意してあるわよね」
「ええ、その上に着るジャージもね」
 そちらも用意してあるというのだ。
「しっかりとね、ただね」
「ただって?」
「お弁当だけれど」
 琴乃が今言うのはこのことだった。
「食堂は空いてるけれどね」
「食べたいのね、それも」
「駄目?お弁当は」
「もう作ってるわよ」
 母は自分の向かい側に座っている娘の問いにくすりと笑って答えた。
「安心して持って行ってね」
「有り難う、それじゃあね」
「いつもお弁当と食堂じゃない」
 育ち盛りだからだ、食べないと身体がもたないのだ。
「だからもうそっちもね」
「じゃあ持って行くわね」
「そうしなさい、それでね」
「今度はどうしたの?」
「あんたも競技出るのよね」
「クラスのにね」
 それに出ることになっている、母にそのことをありのまま話したのである。
「決まってるわ」
「何に出るの?」
「色々とお話して結局ね」
「どれになったのよ」
「ハードルになったの、二百メートルの」  
 琴乃が出るのはそれになったというのだ。
「今は軽音楽部でも中学の時はバスケ部だったからって」
「ジャンプ力があるからっていうのね」
「そうなの、体力測定でも跳躍よかったから」
 琴乃はジャンプ力がある、バスケ部で鍛えたバネのお陰である。
「それでそれになったの」
「じゃあハードル頑張ってね」
「そうするね、こけない様にしていくから」
 ハードルはこれが問題になる。障害物競走なので障害物を避けなければならないのであるから当然のことである。
「怪我はしない様にするから」
「そうよ、怪我はしないでね」
 母も娘の言葉を聞いてすぐにこう返した。
「絶対によ」
「うん、わかったわ」
「あと。競技の前はね」
「食べ過ぎないことね」
「食べ過ぎたら身体が重くなるからね」
 食べた量だけではない、その消化に身体のエネルギーが向かいその分身体を動かす方にエネルギーが及ばなくなるからだ。
「だからね」
「うん、じゃあね」
「あんたが出るハードルは午前?午後?」
「午前よ」
 行われるのはそちらだというのだ。 
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