とある星の力を使いし者
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第104話
何とか海に投げ出された人は全員、生きたまま回収する事はできた。
その中で身元が分かったのは四名。
上条、ルチア、アンジェレネ、オルソラだ。
それ以外は別の部屋に移動してもらった。
「んで、どうして敵さんは自分の艦隊を攻撃していたんだ?」
建宮は疑問に思っていた事を麻生に聞く。
「インデックスが「女王艦隊」が氷でできていると聞いた分かった。
「女王艦隊」は魔術を使って海水を氷に変換させ、それを使い艦隊を作っている。
つまり、破壊してもまた同じ艦隊を作る事が可能だ。
何せ、資源は幾らでもあるんだからな。
破壊してもすぐに作り直す事ができるのなら、当麻達がその艦隊に潜んでいると分かり攻撃する事ができる。」
麻生の説明を聞いて納得する、建宮。
すると、倒れていたオルソラの眼がゆっくりと開かれる。
周りを見渡しながらゆっくりと起き上がる。
「あら、皆さま。
どうして此処に?」
「どうしてと言われても街の方で騒ぎがあったから、様子を見に来ればお前さんらは「女王艦隊」に巻き込まれたって聞いたよな。
それで、助けに来たって訳よな。」
「それはそれはどうもありがとうございました。」
ペコリ、と頭を下げるオルソラ。
と、オルソラの視線と麻生の視線がぶつかり合う。
見慣れない人物にオルソラは小さく首を傾げながら聞く。
「あの、そちらの方は?」
「こいつは麻生恭介。
前にお前さんが「法の書」の事件で、こいつもお前さんの為に戦ってくれた一人よな。
あの時はすぐに帰ったから今回が初合わせよな。」
「そうでございましたか。
その時は大変お世話になりました。
私はオルソラ=アクィナスと申します。」
今度は麻生に向かってペコリ、と頭を下げる。
「俺は麻生恭介。」
「はい、知ってるでございますよ。」
にっこり、と笑顔を浮かべてそう言った。
「なら、自己紹介をする必要はなかったな。」
「ですが、初対面ですのでこういうのは大事でございますよ。」
「・・・・・・・」
この時、誰が見ても麻生が少し苛立っているのが分かった。
だが、オルソラ自身はその事に気がついていない。
麻生はこれ見よがしに舌打ちをするが、オルソラはその意味に気づく事無くにこにこ、と笑っている。
今度はルチアとアンジェレネが眼を開ける。
だが。
「がっ!!」
突然、二人は目を開けると共に苦しみ始める。
それを見たオルソラや天草式やインデックスは突然の苦しみに驚く。
「おいおい、どうなってるよな!?」
建宮は慌てて、二人に近づき様子を確かめる。
「これはローマ正教の拘束術式だね。
「ある一点から一定以上離れなくなる」鎖と首輪の効果があるんだよ。
その一点は「女王艦隊」かな。」
インデックスは冷静に二人を観察しながら術式を看破する。
「だったらどうすればいいよな?」
「これは布地の織り方や縫い目を魔術的に利用しているから、手順に則って縫い目を壊せば何とかなる筈だよ。
今から指示するから、言うとおりにしてほしいかも。」
「そんな事に時間をかけられるか。」
麻生はそう言うと、二人に近づく。
「な、にを・・・・」
ルチアは苦しそうな表情を浮かべながらも、麻生を睨みつける。
前の一件で彼女達の部隊は麻生一人に壊滅させられた。
その張本人が近づいてくるのだから、警戒するのも無理はない。
「黙って見てろ。」
麻生はしゃがみ込み、右手をルチアの頭にある金色のサークレットに触れ、左手はアンジェレネの頭にある金色のサークレットに触れる。
次の瞬間、二人の金色のサークレットはどこにいったのか突然消滅した。
加えて、袖やスカートの金色のパーツも色が黒色に変色していた。
「これで術式は全部解除されたはずだ。」
そう言われると、ルチアとアンジェレネの身体にはいつの間にか先程の苦しみが無くなっていた。
その光景を見たインデックスは麻生の顔をじっと見つめ、言った。
「本当にきょうすけは何者?
とうまの幻想殺しより訳が分からないよ。」
「さぁな、できてしまうのだから仕方がないだろ。」
術式による拘束が無くなった二人はゆっくりと立ち上がり、ルチアは麻生に軽く頭を下げる。
「とりあえず、礼は言っておきます。」
「話を円滑に進めたかったから、解除しただけだ。
気にすることはない。」
「さて、後はこいつだけよな。」
建宮は未だに目を覚まさない上条に視線を送る。
インデックスも未だに眼が覚めない事に心配しているのか、上条の顔を覗き込んでいる。
はぁ~、とため息を吐いて麻生は上条に近づく。
そして、右足で上条の腹を踏みつけた。
「ちょっと!きょうすけ!」
麻生の行動にインデックスは声を荒げて言う。
「こうでもしないと起きないだろ、こいつ。」
「それにしたって他にもっといい方法があると思うかも。」
インデックスは麻生を睨みつけるが、その睨みを無視して麻生は壁に背中を預ける。
ごほごほ!、と上条は咳き込むと、濡れた前髪に若干塞がれたまぶたが、うっすらと開く。
「ほら、眼を開けた。」
「というより、無理矢理開けさせたよな。」
「インデックス。」
上条はまず視界に入ったインデックスの名前を呟きながら、ゆっくりと床から起き上がる。
ほっ、と安心の表情を浮かべるインデックス。
「た、建宮、斎字か?」
「おう、お久しぶりよな。
天草式十字凄教の教皇代理さんだ。
今は手前にイギリス清教所属ってつくけどよ。」
「となると、天草式、か。」
上条は安堵の息を吐く。
彼らとは「法の書」の事件で知り合った仲なので、信頼できる。
その中に天草式とは全く関係のない人物の姿を見た。
その人物の姿を見て、上条は自分の眼を疑った。
「き、恭介!?
どうして此処にいるんだ!?」
上条の驚いた声を聞いた麻生は少しだけ面倒くさそうな顔をする。
(説明するの面倒くさい。)
率直な感想が麻生の中で出てきた。
しかし、説明しないと上条は納得してくれなさそうだ。
そう思った麻生は、近くにいる五和の肩を叩いて言った。
「五和、お前が説明してやってくれ。」
「え?ええええええええええええええ!!!!!!!
私がですか!?」
突然のフリに五和は声をあげて慌てる。
しかし、周りの天草式は。
「いけ!五和!!」
「良い所を見せてポイントを稼げ!!」
「女を見せてやれ!!」
という声が飛んでくる。
無論、二人には聞こえていない。
いきなり、麻生に話しかけられて少しテンパっている五和に麻生は追い打ちをかける。
「どうした?顔が赤いぞ。」
周りから見れば狙っているように見えただろう。
しかし、これが麻生恭介という男だ。
自分の額と五和の額をくっつけようとする。
徐々に近づいてくる麻生の顔を見た五和の顔が徐々に赤みが増していく。
「で、俺に対する説明はまだなのか?」
「まぁまぁ、ここはちょっと傍観するよな。」
にやにや、と笑みを浮かべながら上条の肩を組んで言う。
その光景を見た、アンジェレネはふと思い出す。
「そ、そうでした!こんな事をしている場合では・・・・シスター・アニェーゼがまだ・・・ッ!
あの、皆さまには助けていただいて恩もありますので、現状の説明だけでも。」
ポツポツと小さな言葉で言うが、今のこの現状では誰の耳にも入らない。
「ああああ・・・あわわわわわわわわ!!!!!」
近づいてくる麻生の顔を見た五和はついに耐え切れなくなり、思わず顔を前に動かしてしまう。
接近する麻生の額と突き出すように出す五和の額がぶつかり合う。
ゴン!、と何やら鈍い音が響く。
頭突きをした二人は少しだけ距離をとり、額を押える。
一方、天草式のメンバー全員は残念そうな顔をする。
「え、ええとですね。
私達にはまだ目的があって、できればシスター・アニェーゼの事を説明・・・・うぁー。」
自分の言葉が一つも入っていない事に気がつく。
皆、五和と麻生のやり取りに夢中で変に盛り上がっている。
オルソラもまぁまぁとほっぺたに片手を当てて、にこにこスマイルを浮かべている。
「えーっと、ええーっと、そのうー・・・・」
アンジェレネのそわそわのペースが次第に速くなっていく。
そのピークが最高潮に達した途端に彼女の両目は、くわっ、と見開く。
すると、アンジェレネは隣にいたルチアのスカートを両手でグッと掴むと。
「ほ、ほらーっ!ちゅうもーく!!」
ルチアの修道服のスカートを、ブワサァ!!と勢い良く持ち上げた。
ピタリと会話が止まった。
ルチアを始め、耳が痛くなるほどの沈黙にきキョトンとして、その場の全員がこちらを見ている事に眉をひそめ、宮殿の窓から教皇様が手を振った時の様な高揚に包まれた静寂に不審感を得て、足元が妙にスースーする事に気づき、それから不思議そうな顔で下に視線を向けて。
「!?」
およそ二秒半で顔を先程の五和と変わらないくらいに真っ赤にすると、空気をまとって夜空を泳いでいるスカートを両手で叩き落とした。
ルチアは音もなく首を回して傍らの小さなシスターを見る。
「し、シスター・アンジェレネ?」
「い、いえ!私達の部隊内ではいつもこんな感じだったじゃないですか!
ですからその、あの、いつものクセで!!」
アンジェレネは弁解のつもりで言っているのだろうが、建宮や天草式の少年達はルチアと同じくらい顔を赤くし、余計に気まずそうに眼を逸らす。
上条にはインデックスに拘束され、頭をかじられている。
「何でだ!!今のアレは俺は関係してないだろうがああああああ!!!!!!」
という不幸の叫びが船の中で響き渡る。
麻生は麻生で疲れたようなため息と表情を浮かべるのだった。
後書き
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