とある星の力を使いし者
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第102話
五和と街を観光していると日も落ち、夜になった。
二人は宿に向かって少し道が狭い小道を歩いていた。
「一日中歩き回って疲れませんでしたか?」
「気にするな。
おかげで大体の街の地理は把握した。
ありがとうな、五和。」
「いえいえ、そんな・・・勿体ないお言葉です。」
少し顔を赤くしながら五和は言う。
もう麻生と話すのも慣れたのか、テンパる事もなく話すようになった。
「明日はヴェネツィアの街を案内します。
ヴェネツィアの街も観光としては結構有名な街です。
住むとしたらキオッジアですけど、見るとしてならヴェネツィアですね。
「水の都」、「アドリア海の女王」、「アドリア海の花嫁」、と様々な言葉で絶賛されるくらい綺麗な街なんです。」
と、五和がいつもの様に説明を始めようとした時だった。
突然、麻生が五和を抱き寄せた。
「は、はわわわわわ!!!」
麻生の突然の行動に五和は顔を真っ赤にして驚く。
次の瞬間、ばん、と不自然な音を立った。
五和の立っていた所の道の一部が不自然に穿たれていた。
「ッ!?」
それを見た五和は一瞬、違った意味で驚いた顔をするがすぐに周りを見渡す。
「狙撃・・・・この感じは魔術師ですか。」
「どうやらそのようだな。」
五和の顔もすぐに魔術師の顔に切り替わる。
麻生の胸から離れると、周りを警戒しながら言う。
「助けて下さってありがとうございます。」
「礼はこいつらを倒してからだ。
五和、武器は?」
「大丈夫です。
ここに。」
五和はポケットから一枚の紙を取り出す。
すると、紙から槍のパーツがいくつも出現し、五和はそれを素早く組み立てる。
「それを見た限り、大丈夫そうだな。
来るぞ。」
その瞬間、運河の水面がドバン!!という音がすると内側から三人の黒い影が現れる。
その三人は麻生と五和を取り囲む。
その襲撃者達は全身真っ黒な修道服を着た男達だ。
彼らの手には槍や剣などの武器を持っている。
「一体、何の用ですか?」
五和は槍を構えながら彼らに質問する。
彼らは何も答えないが、武器の刃を麻生と五和に向ける。
これだけで彼らが何が目的なのか大よその見当はついた。
襲撃者の一人が手に持っている槍を五和に向かって突き出す。
単純な軌道を描く槍を受け流し、カウンターを加えようとする五和だった。
だが。
(この感覚、狙われている!?)
咄嗟にカウンターを止め、横に跳ぶ。
すると、五和の立っている所の地面がばん、という音と同時に穿たれる。
「なるほど、近距離と遠距離のコンビネーションか。
五和、狙撃犯は俺に任せて目の前の敵に集中しろ。」
「分かりました。」
麻生の言葉を信じ、狙撃犯の注意を外し三人の襲撃者に集中する。
今度はレイピアのような剣を持った襲撃者が五和に襲い掛かる。
そのレイピアの先端をかわし、横一線に槍を振り払う。
その時にさっきと同様、狙撃の気配を感じたが五和は無視する。
(麻生さんを信じる。
あの人なら。)
そう心に言い聞かせ、躊躇わず槍を振るう。
五和の払いは襲撃者の脇腹を的確にとらえるとボキボキ、と骨が折れる音が聞こえ、横に吹き飛び地面に転がり動かなくなる。
そして、ばんという音が聞こえる。
弾丸は五和の顔面に向かって放たれるが麻生の左手がその弾丸を捉える。
「そこか。」
麻生は軽く地面を蹴る。
足の衝撃を上手く操り、顔一つ分の地面の石が麻生の顔の位置まで上がる。
その石を殴ると、バチバチ!という音を立てる。
すると、石が徐々に変化して尖った石へと形を変える。
ベクトルを操り、尖った石は凄まじい勢いで五階建ての建物の屋上に向かって飛んでいく。
「がああああああああ!!!!!」
屋上にぶつかると男の悲痛な叫び声が聞こえた。
おそらく、あの尖った石が的中したのだろう。
その光景を二人の襲撃者は唖然と見つめる。
「はぁぁ!!」
五和はその隙の見逃さずに槍の払いを二人の襲撃者に向かって振るう。
それを見て襲撃者は驚くが反応する事ができずに槍の払いを受け、地面に転がり動かなくなった。
ふう、と五和は息を吐く。
「どうして狙われたのでしょうか?」
五和は意識を失っている襲撃者達を見ながら、麻生に聞く。
麻生は意識を失っている襲撃者の一人の身体を調べる。
すると、何かを見つけたのか五和に何かを投げ渡す。
五和は咄嗟にそれを受け取り、投げた物を見る。
それはローマ正教の十字架だった。
「おそらく、俺と五和が並んで歩いている所を見られたんだろうな。」
「で、でも、それだけの理由で襲撃されたのですか?」
「俺と当麻と天草式とイギリス清教。
これらにローマ正教は大きな借りがあると思うぞ。」
「大きな借り・・・・・あっ!?」
少しだけ考え、何か思い当たる節があるのか五和は声をあげた。
それを聞いた麻生は小さく笑みを浮かべて言う。
「そう、オルソラを救う時に俺達はローマ正教であるアニューゼ部隊と交戦して、倒した。
火織から聞いた話だが、アニューゼ部隊が勝手に動いただけで自分達に罪はないと弁明したらしいが、それでも俺達に何かしらの警戒、もしくは恨みを持っている筈だ。」
「それだけの理由で私達を襲ったのですか?」
「仮にそう言った理由で襲ってきたら戦争が起こるぞ。
これはまだ予想の範囲だが、あいつらは何か重大な準備をしていて、街で俺達を見てその準備に気づかれ邪魔をしに来たと思ったんじゃないのかと思う。
まぁ、まだ予想の範囲だが。」
麻生が自分の考えを話していると、ドパァ!!という音が聞こえた。
五和と麻生はその音がする方に視線を向ける。
「この音は何でしょうか?」
「さぁな。
だが、そこに倒れている襲撃者達と関係はありそうだな。」
「確認しに行きましょう。」
五和は槍を持ちながら音のする方に向かって走り出す。
麻生はため息を吐くと、五和の後を追う。
道なりに沿って走ると、人だかりが見えてきた。
五和は騒ぎが大きくならないように槍を分解して、先程の紙に収納する。
麻生と五和は人をかき分けながら、前に進んでいく。
最前列に行くと、運河の壁となる左右の道路が砕かれていた。
まるで、強引に何かが進んだ後のように見える。
「一体、何が・・・・」
五和はその光景を見て呟く。
ふと、麻生は見覚えのある人物が立っている事に気がついた。
白い修道服を着て、安全ピンで服を止めている。
こんな修道服を着ている人物など麻生の記憶の中で一人だけだった。
麻生はその修道服の人物に近づいてこう言った。
「やっぱり、インデックスか。」
麻生の声を聞いたインデックスは振り返り、驚いた表情を浮かべる。
「きょうすけ!?
どうしてここにいるの!?」
「天草式に招待で此処に旅行しに来たんだ。
うん?当麻はどこだ?」
インデックスの側に上条が居ない事に気がついた麻生は周りを見ながらインデックスに聞く。
「話せば色々と長くなるかも。」
「何だか、急に聞きたくなくなってきたんだが。」
ローマ正教に狙われた時から何やら面倒くさそうな事件の匂いを感じつつあった麻生。
そして、この街には上条が居る事が分かった。
これはどう見ても巻き込まれるフラグが立っている。
「とりあえず、建宮さんらと合流しませんか?
この騒ぎです、きっと建宮さん達も気がついている筈です。」
「私もちょうど天草式と合流したいと思っていたからちょうどいいかも。」
「麻生さんはどうしますか?」
と、五和は麻生に聞く。
「私的にはきょうすけは一緒に来てほしいかも。
今回の相手は少し・・ううん、かなり厄介な敵だもん。」
インデックスの言葉を聞いてさらに面倒くさいと率直に思った。
(でも、結局巻き込まれるんだろうな。)
はぁ~、とため息を吐いて言う。
後書き
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