東方異形録
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第55話 散る生命と憎しみ
少女「(つ、強えぇ…)」
少女の会話でも分かるように、かの“クソ野郎”は翔にあっけなく敗北した。 どうなったかは…あえて言わないでおく。
「ふぅ…あっ、紫大丈夫か?」
紫「(悪意しか感じなかったんだけど…)恨んでやるわ」
「ん、大丈夫そうでなによりだ。」
俺は紫の手を取り、服に付いている汚れを取り払う。 おいおい紫さんよぉ、手を握っただけど何顔紅潮してんだぁ? 見た目に反して、経験無しの乙女だな~
紫「そ、そんな事よりあの娘のことはいいのかしら?さっきからこっちを見ているわよ?」
「おっと、指摘ありがとさん。」
紫の指摘通り、後ろを振り返るとさっき助けた少女がこっちを畏怖するかのように見つめていた。
…俺なにかしたかなぁ....
「ま、あれだよ。とんだ虐殺現場を見せてしっまてすまない、俺は桜坂 翔だ。お嬢さんは?」
妹紅「私の名前は藤原 妹紅。こっちも助けてくれたのに引いてしまってすまない。」
(おぉ!髪の色と服装の違いで分からなかったけれど、彼女が…!)
しかし、話している妹紅はどこか悲しげに見えたのを翔は見逃さなかった。
紫「ま、解決はしたわね。翔、先を急ぎまs」「待った。」
俺は紫を咎めた後、妹紅に歩み寄った。
「何かあったような目つきだな。」
伊達に3億年生きている訳じゃないのだよ。
妹紅「やれやれ、力量といいあんたには叶わないな。私は-----
-----あの女、蓬莱山 輝夜が憎くてたまらない。」
うん、知ってた。
妹紅「私のお父さんは、あの女に溺愛していた。 けど結果はどうだ、あの女は到底解くことのできない 難題を押しつけた。父さんは嘘をついてまでそれを解決しようとした----結局嘘はバレて赤っ恥をかかされ、恋の実らなかった父さんは…っ、」
妹紅は座り込んで泣きながら戻しかけている。 ハッキリ言って見ているこっちも痛ましく感じる光景だ。
紫「………。」
紫はその光景を見て唖然としていた。 が、その表情はどこか暗かった。
「紫、分かっていると思うけど人間の全てが美しいは限らないんだ…おっと、これは運んだ方が良さそう だな。」
妹紅は地面にパタリっと倒れ込んでしまった。…気を失っている。
俺は妹紅を担いだ。
「今度こそ行こうか、紫。」
紫「そうね…」
俺たちは重い足取りで12ヤード先に見える妹紅の屋敷をめざして歩いた。
「(…命が消えるというのはなんとも悲しいことだな。)」
改めて命という物を知ることになった翔はふと思ったのだった。
満月、そして死の時間まで残り4日------満月の時に何者かの命が散ると、天だけがそのことを知っていた。
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