ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百七話:着せ替えドーラちゃん
「お姫様だ……!お姫様がいる……!」
「やだ、ドーラちゃん似合いすぎ……!可愛すぎ……!!」
「……ありがとうございます」
お風呂上がりに、例の乙女チックなネグリジェを着てみた結果。
うん、こうなるんじゃないかと思ってた。
褒められるだけなら、まあいいんですけれども。
「ちょっとだけ……!ちょっとだけ、触っても……いい?」
「嫌です」
「ちょっとだけだから!軽いスキンシップ程度なら!いいでしょ!?」
「……二度目は無いって、言いましたよね?」
「……ちょっとくらい……」
「私と縁を切る覚悟がおありなら、どうぞ」
「うう……。ドーラちゃん、冷たい……」
「誰のせいですか」
甘やかすと調子に乗るとわかってる相手を、甘やかす馬鹿がどこにいますか!
「……お姉様って!お姉様って、呼んでみてくれない!?」
「嫌です」
「できれば、頬を染めて恥じらいながら!上目遣いで!瞳を潤ませて!」
「お断りします」
「……もー!釣れないんだからー!そんなこと言ってると、イタズラしちゃうぞー?言うこと聞いてくれるまで」
「……ほほう?力尽くで、私に言うことを聞かせられるとでも?いいでしょう、試してみればいい。結果がどうでも、それでお別れになりますけれども」
「……ドーラちゃんが!ドーラちゃんが、怖い!こんなに可愛いのに、怖い!!」
「誰のせいですか、この変態」
私だって、女性にこんなこと言いたくないよ。
必要が無ければ。
「ドーラちゃんのさっきの、魔法?便利ねー。髪が、もう乾いてるなんて。私にもやってくれない?」
「勿論です、クラリスお姉様!!私に、任せてください!!」
そんなことで良ければ、いくらでもしますとも!
クラリスお姉様のためならば!!
「ちょっとー!?ドーラちゃんー!?」
「あからさまに、態度違い過ぎないー!?」
「差別だ!差別だーー!!」
クラリスお姉様で和んでるところなのに、なんだか外野が五月蝿いですが。
「……当たり前でしょう。尊敬すべきお姉様と、変態の差です。当然の区別です。自業自得です」
変態の分際で、私とクラリスお姉様の邪魔をしないで欲しい。
「ごめんなさいね、ドーラちゃん。あとでやっぱり、絶滅させとくから」
「いいんです、クラリスお姉様!これくらい、自力で殲滅できますから!」
「あら、強くなったわね。でもそれはそれとして、こっちとしても示しがつかないから。キャサリンと協力して、きっちり締めないと」
「お姉様も大変ですねー」
「わかってくれる?」
「……すみませんでしたーー!!」
「許してくださいーー!!」
どっかで見たな、このパターン。
まあいいか、変態のことなんて。
どうでも。
「学習しない馬鹿は放っといて。ドーラちゃん、下着大丈夫だった?思ったよりだいぶ大きかったし、合わなかったんじゃない?」
「……はい。ダメだったから、上は着けてません」
「あ、やっぱり?見た目で、そうかと思ってたんだけど。私のなら、なんとか着けられると思うから。部屋に戻ったら渡すわね」
「寝る時は外すし、別にこのままでも」
「でも、明日があるからね。すぐ外してもいいけど、試すだけ試しておいて」
「はい」
「ドーラちゃんが……このお姫様が、着けてない……!?」
「……ドーラちゃん!!やっぱり、ちょっとだけ!!ちょっとだけ、触らせ」
「殲滅されたいんですか?このド変態どもが」
「うう……このドーラちゃんになら、殲滅されるのも、ちょっといいかも……?」
「救いようの無い変態ですね、本当に」
女性に暴力とか気が進まないが、体に覚えさせることも、もしや必要なんだろうか。
「ドーラちゃん。そろそろ逆効果になりそうだから、やめておきましょうか。私が黙らせるから」
「はい!クラリスお姉様!」
「うう、クラリス……!!なんて、妬ましい……!!やっぱり殲滅より、あっちがいい……!!」
「なら学習しなさいよ、いい加減に」
と、ドーラちゃんのあまりの可愛さに混乱状態に陥った変態ども……いやいや踊り子さんたちを、クラリスさんが散々説教して正気に返らせて。
普通に会話が成り立つようになったところで、クラリスさんのお部屋に戻ります。
で、また持ち寄って頂いた服を前に、明日の衣装選びが始まったわけですが。
「ドーラちゃん!これ!これ、着てみて!」
「……これ。踊り子さんの、舞台衣装ですよね?……これを着て、バネッサさんを倒せと?」
いわゆる、踊り子の服ってヤツですが。
ゲームでは防具扱いだったとは言え、普通に街で着るようなものでは無いと思うんですけれども。
いくら相手が踊り子さんとは言え、対抗して着る必要があるとは思えない。
「試しに着てみるだけよ!スタイルいいし、絶対似合うって!」
「いやー……でも……」
またみなさん、混乱状態になるんじゃないの?
「大丈夫よ!学習したわ!さすがに!」
「そうね!怖いからね、色々と!」
「そうよ!美少女は、汚さずに遠くから愛でるものだったのよ!間違ってたわ、私たち!」
「はあ。……次は、無いですからね?本当に」
「大丈夫!!任せて!!」
と、妙に気合いの入った踊り子さんたちを、ひとまず信用して。
「きゃー!やっぱり、スタイルいいー!映えるわね、なんかもう理想像って感じ!踊り子の!」
「やだ色っぽい!完全に、負けたわ!」
「もう、ここで働かない?」
「いや、踊れませんし。事情もあるんで」
「ヘンリーさんの反応が見たいわね!いっそ、これで行っちゃう?」
「それも楽しいかもね!」
「いや……冗談ですよね?」
「見せたいのは、本当だけど。隙の無い勝利を目指すには、やっぱりこれは無いわね。これでも圧勝だとは思うけど」
「でも、これはあげるから!良かったら、使って!」
「……使う?……何に?」
「やだー!言わせないでよー!」
……私に、何をさせたいんだ!
そんな使い方は、しませんから!
まあ、くれるという物は貰っておきますけれども!
他にも、フリルがふんだんにあしらわれたブリブリに可愛らしい服だの、やたら体の線を強調するセクシーな服だの、色々と着せ替えられてキャーキャー言われた挙げ句。
最終的に、またどこのお嬢様かというような。
淡いピンクの、大変に愛らしい中に清楚さも感じさせるふんわりとしたデザインの、乙女チックなワンピースが選び出されました。
「これを……着るんですか……?ヘンリーの、前で……?」
踊り子さんたちなら、中の人の事情とか知らないんで。
あくまでも、十六歳の美少女ドーラちゃんが着てるという認識なわけだから、別にいいんですけど。
ヘンリーはなあ……知ってるからなあ、事情を。
具体的な数字を教えたわけでは無いとは言え、決して心まで十六歳では無いという事実を。
……こんな、少女趣味な格好をして。
いい歳して、何してんの?なんて失笑でもされた日には、バネッサさんに諦めて頂く作戦も台無しでは?
「そうよ!これを着て行けば、勝利はいよいよ間違い無いわ!」
「バネッサの、薄っぺらい見せかけだけの清楚さとは違う!本物の、清楚な美少女というものを!見せ付けてやりましょう!!」
「本物……ですか……」
むしろ、私こそ偽物なんですが。
まあ体はね?ドーラちゃんの体はね、間違い無く美少女ですけれどもね?
清楚ってたぶん、見た目だけの話じゃないよね?
……まあ、演技力の勝負なら負けないけれども!
それより、問題はヘンリーだ!
「……大丈夫ですかねー?バネッサさんとの比較で、勝ったとしても。肝心のヘンリーに笑われでもしたら、意味無いのでは。むしろ、逆効果では。こんな格好、したこと無いし」
「無い無い!笑うとか、あり得ないから!」
「したこと無いなら好都合ね!びっくりさせちゃいましょう、ヘンリーさんも!」
「……びっくりして、吹き出したりとか」
「だから無いから!なんでそんな、後ろ向きなの?」
「いやー。だってー」
中の人が。
みなさんには言えない、事情が。
と、渋る私にどう思ったのか、踊り子さんの一人が励ますように、そっと私の手を取ります。
「……大丈夫。普段は男の子みたいな格好をしてるから、落ち着かないかもしれないけど。ドーラちゃんは、可愛いから。自信を持って。大丈夫、ヘンリーさんもきっと、喜んでくれるわ!」
うーん。
落ち着かないはいいとして、見た目に関しては自信が無いなんてことは、特に無いんですけれども。
ヘンリーが、喜ぶ……。
……うん、ある意味、喜ぶかもしれない。
エンターテイメント的な意味で。
そもそも、ヘンリーがバネッサさんを嫌がってる場合に備えて、効果的なキャラクターを作り込んでいくんだから!
例え吹き出したい気分に襲われても、実際に吹き出してしまったとしても、ヘンリーだって空気読んでなんとかするはず!
むしろ本気で嫌なら地獄に仏の気分で、笑うどころでは無いかもしれないし!!
「……わかりました。私、頑張ります。頑張って、清楚な美少女を、演じ切ります!」
「え?演じる?……いや、別にそのままで十分」
「私!絶対に、勝ちます!バネッサさんを完膚無きまでに打ち負かして、ヘンリーを救出します!」
「え?いや、打ち負かすとか。ありがたいけど、それは結果的にそうなるんだからいいくらいで。そんなことより、ヘンリーさんを惚れ直」
「ヘンリーが、本物の運命の相手に出逢えるまで!私が、確実に、ヘンリーを守ります!!」
微妙だと思う相手にとりあえずぶつけるなんてことは、今回限りにして!
ちゃんと、素敵な相手に出逢えるまで、守り抜きますとも!!
「え……ええーー??そういう感じなの、ドーラちゃん??」
「やだ……ヘンリーさん、お気の毒……」
「……応援すべきなのは、ヘンリーさんだったのね……。ドーラちゃんじゃ、なくてね……」
「せめて……せめて。明日は最高に可愛らしいドーラちゃんを、ヘンリーさんに見せてあげましょう……」
「そうね……ヘアメイクもしっかりして、一時の幸せを味わわせてあげましょうね……」
踊り子さんたちが、なんか涙を拭いながらヒソヒソと話し合っていますが。
なんだろう、私の健気な決意表明に、感動してくれたのか。
「ドーラちゃん、さっき着てみた服。全部、あげるから。たまには、ヘンリーさんに、着て見せてあげてね……」
「え?あんなにたくさん、いいんですか?」
「いいのよ。貰い物だけど、着てなかったから。趣味に合わない物を無暗に贈られても、困るのよね」
「……貰い物なら、私が貰ったら不味いのでは」
「いいのよ。気に入れば使うし、気に入らなければ使わないし。そのうち、こっちの趣味を相手もわかってくるから。相手だってもうわかってるんだから、いいの。あっても困るだけだから、持って行って」
「そうですか。なら、遠慮無く」
「ヘンリーさんに!見せて、あげてね!」
「……え?……まあ、着れば当然、見せることになるかと」
「そう!なら、いいの!着てね、ちゃんと!」
「はい。機会があれば」
「無ければ作って!作ってでも、着てね!」
「は……?」
「着てね!!」
「……はい」
「ネグリジェも!あげるから!着てね!!」
「……ありがとうございます」
踊り子さんたちの見てないところで私があれらの服を着ることを、そんなにも推された理由がよくわからないけれども。
くれるというなら、これもありがたく頂いていきましょう!
そして、明日!
首を洗って待っててくださいね、バネッサさん!!
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