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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第79話 少年たちは無双するようです


Side ネギ

「ハァッ!!」

「かぺぽっ!?」

「そぉい!!」

「たわばっ!?」

『両者、一撃でダゥゥゥゥーーーーーーン!!新人ペア強い!前回上位ペアを寄せ付けず圧勝!!

これが本当に新人かぁーーー!?』


拳闘大会予選(?)、僕と小太郎君の弱強化正拳を一発食らっただけで、獣人種の二人は吹っ飛び気絶した。

あまりの呆気無さに佇んでいた僕達の所に、司会のお姉さん(悪魔っ娘?)がマイクを持って走って来た。

これがどうやら、トサカさんが憎憎しげに言っていた勝利者インタビューらしい。


「いやー、お二人とも強いですね!前回4位のラウラウコンビを下してのデビュー戦おめでとデス!

本当に新人さんですか!?」

「え、ええ、この拳闘士団に入ったのはつい昨日です。」

「アハハ、緊張してカワイイですねー!では、そんな新星お二人の名前を高らかにどうぞ!!」


元気の良いお姉さんにマイクを渡され、少し考える。―――ナギ・スプリングフィールド。

申し込みの時咄嗟に自分で書いた名前だけど、ここで出して良いものか。


「コジローや、イヌガミ・コジロー!覚えとき!」

「コジローさんですね!では相方の赤髪のイケメンさんは!?」

「あ、僕は………。」


小太郎君が気を利かせてか、先に名乗った。僕も・・・覚悟を決めよう。

司会のお姉さんからマイクを拝借し、ざわつく会場に向け、放った。


「僕の名前は……ナギ。ナギ・スプリングフィールドです。」

「ちょぉっ!?」

「ほぇ………?」


名を聞いた瞬間静まり返り、さっきよりざわめきが大きくなる。

英雄である父さんの名前を出した理由。騒ぎが大きくなれば、散り散りになった皆が気付いてここへ向かって

くるかもしれない。それに、麻帆良に連絡が行って愁磨さん達が来てくれるかもしれない。


「な、ナギ・スプリングフィールドと今言ったデスか!?それは『千の呪文の男』と言われた英雄と同姓同名の!

もしや血縁者デスか!?そう言えば面影が……と言うか本人!?」

「いやぁ、他人の空似でしょう。」

「と言うことはそのお名前も?」

「ええ、偶然です。親が英雄みたいに大きな男にー、と。この名前と外見のせいで子供の頃から

よくからかわれましたよー。」

「(オイネギ、どういうつもりや!?幾ら名前売るかて、悪目立ちしすぎりゃ賞金首てバレるかもしれへんぞ!)」


小太郎君の危惧は尤もだけれど、多少の危険を冒すくらいじゃないと元の地球へは帰れない。


「(それに、これは小太郎君にも有益な事だと思うよ?)」

「(なんやと?)」

「……僕は彼とは何の関係もありませんが………最強の男の名に恥じぬ戦いをして見せましょう。

強敵を待ちます!ガンガン掛かって来てください!!」

「おぉ、なるほどな!」

ワァッ!!
「良いぞ若いのー!フカしやがった!!」「こりゃ面白い新人が出て来やがった!!」

「ホントに無関係かよ!?ソックリすぎんぞ!」「どっちにしろ賭けが盛り上がる!」


僕の傲岸不遜とも言える宣言に、会場の盛り上がりは最高潮になった。

後はこの大会を勝ち抜きつつ結果を待つしかできない。だけど、僕にとっては最重要事項だ!


「待っててください、のどかさん。必ず救い出して見せます……!!」

「……メガネの姉ちゃんはええんかいな。」


・・・あ、あと、ハルナさんも!待っててください!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
subSide ノワール

「やってるわねぇ……。」

『ふん、所詮は子供か。目の前の事しか頭に無い……なんら問題は無い。』

「ツェル、そんな事を言うとまた愁磨に拳骨喰らうよ。」

『……………あれは嫌だ。』


とある実験の休憩時間。主神のせいで巻き込まれてしまった坊や達がどうしているのか遠見の魔法で見つつ

お茶をしていたのだけれど・・・・。年齢詐称薬使っただけで、随分な大立ち回りね。

アレ、Bランク魔法使いでも見分けられる程度の代物なのだけれど。


「またあいつ等は面白そうな事を……。どれ、ちょっと様子でも見て「駄目よ。後で幾らでも出来るでしょ。」

ぐぬぬぬ………今この瞬間は戻ってこないんだぞ!」

『良い事を言ったつもりか。収集回路と条件設定は創ったのか?』

「回路は魔法世界全土に張り巡らせたよ。魂分離の方はもう少し調整しないと、まだ不確定な部分がな。

………一欠片も残す訳にはいかない。」

『そうだ。我々の計画に"可能性"など不要。必要なのは確実に確定された勝利のみ。』

「はいはい、基礎に忠実に。」


提示報告を終えたシュウは、また宮殿の奥へ戻って行った。・・・まったく、手伝えない自分が嫌になるわ。

心労の一つも減らしてあげたいのだけれど、あの子達への介入は思わしくないし・・・。

となれば、やる事は一つよね。


「それじゃ私は行ってくるわね。」

「………貴女も、意外と無駄な事が好きなようだ。余り無茶をして愁磨を引っ張っていかないでくれ。

計画に差支えたらコトだ。」

「言われなくても分かっているわ、それくらい。あなただって似た様な物でしょう?」

「ふふ、返す言葉も無い………。」


苦笑いしたフェイトに手を振って、認識阻害(と言うらしい)魔法をかけて件の闘技場へ転移。

いつの間にかくっ付いて来ていたアリアと共に、坊や達の戦いぶりを見る。

・・・・・・まぁ、成長はしているんだけれど。


『カルム選手ダゥゥゥゥゥーーーーーーン!!コジロー選手を後ろに控えさせた状態で、古参ペア相手に勝利!!

強い!強すぎる!伊達に英雄の名を騙っていない!!』

「・・・変わらない、なにも。」

「そうね。」


Bランク・・・いえ、C-(マイナス)ランクを相手に勝って、嬉しそうに笑って肩を叩き合う坊やとコタちゃん。

僅か一週間見なかっただけで腕が少々上がっているけれど、まだ足りない。まだまだ足りない。

彼等なら勝手にやってくれるでしょうけど、確実にしておくべきね。


「行くわよ、アリア。あの筋肉マッチョの重い腰を蹴飛ばしてやらないと。」

「・・・面倒、だけど、パパの為だから・・・がんばる。」


むん、と無表情のまま気合を入れ直すアリア。虎ちゃん達も勝手に出て来て気合を入れてる。

・・・微笑ましいのは結構な事だけれど、目立ってるのよね。

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「以上、今一番ノッてるル-キーナギ選手とコジロー選手でしたぁーーーー!!」


司会の悪魔っ娘お姉さんと歓声を背に、闘技場を後にする。・・・大会は順調に勝ち進めている。

でもなんだろう、この・・・不安?焦燥でも無いけれど、この胸がザワつく感じ。


「よぉ噂の新人。また勝ちやがったか。」

「ケッ、あないな相手に負けるかいな。ワイのライバルやぞ?」

「ハッハッハ、若けぇなぁ!!まぁ、てめぇらの強さは重々承知してるから賭けたんだけどな。」

「しっかり儲けとるやないかド汚い……。テメーに賭けれるならワイかてそうするわ。」

「ただ、いい気になるなよ!お前等が今まで相手して来てんのは良いトコCランクだ。

A以上、特に最強クラスの奴らはこんなもんじゃねぇぞ!!」


トサカさんの言に、頭がズキリと痛む。そう、そんな事はトサカさんより骨身に染みて分かっている。


「や、ネギ君コタ君!連勝おめでとう!」

「ハルナさん。ありがとうございます。」

「おう姉ちゃん、すっかり元気になったな!で、情報収集の調子はどないや。」

「うーん……それがねぇ。とりあえずこっち来て。」


僕と小太郎君が戦ってる間、四人には(主に千雨さんとまき絵さんだけど)情報収集をして貰っていた。

ハルナさんの様子を見るに・・・どうやら、どちらに転んでも思わしくないようだ。


「おっ、来たねぇ有名人!!」

「朝倉さん!?無事だったんですね!」

「無事だったのとは失礼な。この私がそう簡単にくたばりますかって。君らテレビで見て、ここ来て暫く

情報収集してたのよ?一人で!そう一人でね!!」


思わしくない・・・と思ったんだけれど、まさかの朝倉さんが一番に合流した。

あまり戦闘系とは言えないこの人の安全が確認出来ただけで、大分余裕が出来た。


「でまぁ、私が集めた情報だけど……まず、私達が来る時使った転移門?は、全部破壊されてるらしいね。

向うとの繋がりが完全に切れちゃってるから、私達じゃ帰る手段が無い。

でもそれは一般的な話。実はもう二つ、転移門がこの世界に残ってるみたい。」

「二つも残っとるんか!?……でもあのフェイトがんなヘマやらかす訳無いわな。」

「そう、その残ってる二つのウチの一つが処刑場で有名なケルベラス渓谷の一番奥。

それともう一つが、此処から千キロ少々行った廃都オスティアにある、らしい。」


朝倉さんが独自の情報を披露してくれた・・・のだけれど、その一つは聞き覚えが無い。

処刑で有名なケルベラス渓谷、って聞いただけで悍ましい印象だ。でも、廃都オスティアは聞いた事がある。


「オスティア……今僕達が出ている拳闘大会の決勝が行われる都市ですね。」

「そゆこと♪二十数年前の戦争までは風光明媚な王都だったらしいけど、その殆どが落ちて廃墟化したんだって。

ってまぁ歴史的な事は置いといて。そのどこかに転移門があるらしいの。」

「どこか……て、まさか探さなあかんのか。元王都を?」

「そういうこった。でも、今よりゃマシだろ。」

「だねぇ。地球に戻る為の魔法を開発するよりは早いでしょ!」


幸運にも、僕達がこのまま大会を勝ち進めばタダで転移門のある場所まで行ける。

しかも今年は終戦20年の記念祭。荒っぽさに磨きが掛るからお尋ね者である僕達が集合するには持って来い。

更にそこで優勝できればのどかさん達を開放出来て一石三鳥・・・最近三鳥多いな。でも・・・都合が良過ぎ――

ゴッ
「いたっ!?」

「ハッ、難しい事考えんなやネギ!全部丸っと解決出来んなら願ったりやろが!」

「そーだぜ先生。つか私はとっとと帰りたいんだよ!さっさとメイドさん助けてあいつら集めて帰るんだよ!

命が幾つあっても足りないんだよ!ついでに私のSAN値も足りないんだよ!!」

「ど、どーどー千雨ちゃん、分かってる。分かってるから。」


また後ろ向き思考をした所で小太郎君に頭を叩かれ、千雨さんがキレた。

・・・そうだよね。全部解決するんだ。なら、今はそこに向かって突っ走る以外ない!!


「よし!皆さん、目指すはオスティア。期限は一ヵ月!」

「ワイらは大会制覇!」

「あたし達は皆を見つける!」

「ついでに、転移門の場所も見つけられればラッキーだな。」

「それでは………ネギま部――――――ファイッ!」

「「「「オオッ!!」」」」

「……私はやらんぞ。」

………
……


「「ハァァッ!!」」
ドドンッ!
『衝撃!撃滅!抹殺ぅ!!ナギ・コジローペア驚異の14連勝!!このペアを止められる者はいないのかぁ!?』


翌日も試合が何度かあり、その全てで快勝・・・と言うか瞬殺で幕を閉じた。

その後、小太郎君達に断って一人で街に出た。

・・・昨日あんな風に言ったものの、不確定要素が多すぎるのも事実だ。フェイト・ヴァナミス・デュナミス。

そしてその主・・・奴らが何者なのか、その目的すら分からないけれど、転移門破壊は目的の一つだろう。


「(残る門は二つ、渓谷最奥とオスティア……その二つを奴らは放っておくだろうか?

また"偶然"にも奴らと顔を合わせる可能性は高い……。もしまた会ったら―――)」


―――僕には勝てない。それだけは確信出来る。全力を持っても遊ばれたんだ、天地が引っくり返っても無理だ。

どうすればいい?父さんや愁磨さんやノワールさん、アルビレオさん、ゼクトさん、学園長先生のように。

彼等に合って僕に無い物ってなんだ?・・・いや、逆だ。僕にある物は全て彼らの物だ。


「(オリジナルの技……僕だけの技………)必殺技、とか欲しいのかなぁ…………。」

「そりゃ欲しいだろ、男として。」

「ぬぅあるあぅわぅあぅあぅあぅあぅあぅ!?あ、いや、聞いて!?今のは別に!!」


ふと零れた一言を、昼間から飲んでる大男に聞かれて慌てる。

い、いや違うんですよ!?別に必殺技欲しいなーとかふと考えただけで・・・って、この人、どこかで・・・?


「くくく、恥ずかしがるこたねぇよ。中てれば"必ず殺す技"だろ?悪かねぇ。男なら皆持ってるもんだ。

そう、本物のナギ・スプリングフィールドだって新技幾つか隠し持ってたんだぜ?」

「とっ………あ、あなたは……?」

「俺が教えてやらんことも無いが……そうだな。必殺技一つにつき授業料50万Dq、考案料20万Dq、

版権料10%で請け負うぞ。」

「高ッ!?ぼったくり!?悪徳商法!?な、何なんですかイキナリあなたは!?」

「今は俺より頭上の心配しな、有名人。」


不審者がそう言った瞬間、僕は僅かに体をずらす。刹那、先程僕が居た空間が歪み、そこから黒い槍の様な

物が伸び、僕を追尾してきた。咄嗟に"銀龍"を腕に宿し、襲ってくる槍を打ち砕く!


「誰だっ!?」

「ほう、少しはやるようだ……。」


僕の背後に現れた気配の出所。舞踏会のお面の様な物を被り、今僕を串刺しにせんと延びた黒い槍を両腕に

巻き付けたその黒い影は、憮然と言い放った。まるで、僕を試すかのように。


「お前の呼びかけに応じ参上した。ナギ・スプリングフィールド。私は"ボスポラス"のカゲタロウ。

貴様に、尋常の勝負を申し込む!!」

「待ってください、ここでは街に被害が―――」

「そんな事を気にしてんのはテメーだけだぜ?」


先程の変質者の横槍に、周りの人達を見る。・・・確かに、既に賭けだなんだと騒いでる。

騒ぎには慣れてるって事ですか・・・なら!


「此処でやらなければ漢が廃る!その決闘、受けて立つ!!」
ゴバァァァアアアアアアァァァッ!!
「中級魔法遅延……!?楽しませてくれる!!」
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾンッ!!

こんな事もあろうかと常時遅延しておいた"雷の暴風"を放つも、幾十と束になり突き出される影の槍で

簡単に相殺される。やっぱり、この人は強い・・・!Bランクかそれ以上の実力者。

魔法を放つ度に、僕の中で淀んでいた何かが消えて行く。今なら、その正体が分かる気がする。


「("不足"……僕は満足していなかったんだ。そう、僕が欲していたのは……!!)強者との真剣勝負!!

"ラステル・マスキル・マギステル!天鳳降臨 紅の鳳は我が魂を糧とし 尚美しく!"『飛翔する火鳥(ブレイブ・ハード)』!!」
KhyAaaaaAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!

「次々と珍妙な魔法ばかり出せるものだ。『千影無間連槍』!!」


僕の出した白く輝く火の鳥とカゲタロウの束ねられた影の槍がぶつかり、ゴシャッ!と嫌な音がして

火の鳥が串刺しになり、そのまま僕へ飛来する。中るよりも一瞬速く『天掴む雷神の双手(ケーリュケイオン・アドルバナブル)』を唱え、

当たる物だけを掴み砕く。避け切られたのが意外だったのか、カゲタロウの動きが一瞬止まる・・・!!


「なにっ……!?」

「『武装化銀龍』!」
ズグンッ
「ガッ―――」

「双掌開放―――『皇竜轟雷掌』!!」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリィィィ!!
「ぐぅおぉおおおおおおおおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」


いつかの小太郎君のように、腰溜めにして威力を高めた"双掌打"を腹部に叩き込み、ゼロ距離で雷化させた

銀龍を開放する。流石に効いた様で、完全に動きが止まった。


「(今だ………!!)」

「―――開放、"絶死の影槍(ゲイル・ヴォ・ルーグ)"!」
ドゥッ!!! ザシュ ザシュ ザシュッ!
「がぁぁああああああ!!」

「よくぞ、私にこれを解放させた。」


完全に動きが止まっていたカゲタロウに油断した僕の後ろから、影槍が襲い掛かる。

全く反応できなかった為に右腕と腹に一本ずつ、脇腹を一本掠めた。

僕から距離を置いたカゲタロウの背後に浮いた影槍は、その全てに血のような赤い脈が這っている。


「さぁ、第二回戦だ。」

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