死んでからの生き恥晒し
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序章:少女の後ろ
コツコツと、アスファルトの鳴る音がする。
自然界から見れば異質な、人間が作り出した物体。
その上に平気で歩く愛玩動物。
それが少女は大嫌いだった。
不自然極まりない。
生物としてのプライドが消し去られているような気がして。
「おいミヨ!帰るぞ!」
そして少女__ミヨを呼び止めたこの男。
ミヨにとって最も恥さらしに見えて仕方がない人間。
「うるせぇカトー!黙ってクレープ奢れぇぇぇぇ!」
カトーはため息をつき、ジャケットのポケットから財布を取り出す。
ミヨが近づいて覗いてみると、中身は千円ポッチ。
寂しい中身だ。
「今度のプログラムが終われば、買ってやるから。今は我慢しろ」
「はぁ?お前が食っていけてるのは私のおかげだろ?」
口々にお互いに溜めているものを出し、スッキリするわけでもない。
醜さを感じては、共に睨み合う仲だ。
「それもそうだが、お前、ペアを新しくしようとすればすぐにダメにするじゃないか。結局いつも俺になる」
「そりゃ、周りのやつらはバカしかいねぇからな」
「お前なぁ……」
再度ため息をつくカトー。
これが本日17回目であることをミヨは知っている。
完全に覚えてしまっているのだ。
「……とりあえず、帰るしかない。もう外出許可時間過ぎてるから」
「へえい」
帰路を見つめながら、足を動かす。
辺りは暗いと明るいの間。
夕焼けが空を染める。
あぁ、美しい。
と、ミヨとカトーは知らず知らずに同じことを考えていた。
「明日、千代田を探してみよう」
ミヨの発言は意図が掴めない時がある。
「なぜ?」
「私を疑うな。証拠はなくとも、わかるんだよ」
よくわからない勘を宛に、今までやってきたのでカトーも何も言えない。
それが分かっていて困らせるように、影を持って接する。
ミヨにとってそれが、つまらないという世界での一つの遊びだ。
彼らは二人で一つだ。
もう、世間には普通として認められない同士。
繋がる物があるのか何なのか。
それは周りにも分からず、いつまでも謎のままだろう。
二人に課せられた【プログラム】も、それを解くためのものではないのだから。
「あー……またスケジュール狂うじゃないか……」
「どうせ役に立つもんじゃなし!」
コツコツと、日が暮れるまで。
彼らの足音は周りの人混みにかき消されながら続く。
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