深き者
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第二十八章
第二十八章
「海面にいるって位でしょうね、考えるのは」
「海にいるが故だな」
「ええ、わからないってことですね」
「しかし我々は陸と海だけではない」
役もまた彼等を見下ろしてそのうえで様子を窺い続けている。そのうえでの言葉であった。
「こうして空もある」
「術を使ってですけれどね」
「そういうことだ。それではだ」
「やりますよ」
本郷は言った。
「今から」
「まずは分身だな」
「ええ、ほら」
言いながらであった。本郷が二人、それから三人、四人と増えていく。最後には五人になったのであった。
「それでです」
「その手に持っている球を投げるか」
「これは効きますよ」
五人の本郷が一斉にその右手に持っている球を掲げてみせてそのうえで不敵な笑みを浮かべたのだった。
「海の中なら余計にね」
「爆雷か」
「まあそんなところです」
こう答えるのであった。
「海の中で使えばまさにそれです」
「海の中の相手に対してはやはり爆雷だな」
「そういうことです。それじゃあ」
五人の本郷が一斉に海面に向かってその手にしている球を投げた。
球はそれぞれ海の中に落ちる。それから暫くして。
五つの大きな爆発が海中で起こった。それにより巨大な水柱が発生したのだった。
「よし、成功ですね」
「上手くいったな」
「ええ、全くです」
本郷はその五つの水柱を満足な顔で見て述べた。
「これでどれだけ減りましたかね」
「少なくとも二百は減ったか」
「二百ですか」
「三百かも知れない」
その辺りは詳しくはわからないということだった。今の時点では。
「そしてだ」
「今度は役さんですね」
「そういうことだ。この剣で」
剣には雷が宿っていた。それは今まさに剣から放たれれんとしていた。その剣を構えながら。役は言うのであった。
「彼等を撃つ」
「水には雷ってわけですね」
「爆雷も効くがこれもかなりのものだ」
役はこのことにかなりの自信を持っていた。今それを放つというのである。
「さて、使ってみせよう」
「ええ、そういうことですね」
役は言葉を発さずそのまま剣を下に繰り出した。ライトグリーンの眩い雷が海面に突き進む。そうして雷は瞬く間に海面を、その中を覆い尽くしてしまったのだった。
雷が荒れ狂う。その中は見えはしない。ただ無数に分かれてしまった雷達がめいめい龍の如く暴れ回るだけであった。そうしてその雷が消えた時。
海面に次々と異形の者達が浮かび上がってくる。それは百やその程度では効かなかった。所々なくなった屍もある。それはどうやら先程の本郷の爆撃のせいらしかった。
「どうやらかなり」
「効いたようだな」
二人はその浮かび上がって来た異形の者達を見ながら言うのであった。
「半数以上は倒したみたいだな」
「ええ。六割ってところですかね」
その浮かび上がってくる異形の者達を見ながらの言葉である。
「どうたら」
「そうだな。そうした辺りか」
「成功ですかね」
その状況を役に対して問う本郷だった。
「これは」
「そう考えてもいいだろう」
役もそれでいいとするのだった。
「それでだ」
「ええ。いよいよですね」
「まず機先は制した」
それは終わったというのであった。
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