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万華鏡

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第四十四話 高校の運動会その十二

「それでね」
「美味しい食べ物もよね」
「そう、出るから」
 だからだというのだ。
「お手伝いさせてもらってね」
「また飲むのね」
「出るわよね、秋も」
「それはね」
 酒は当然として出るというのだ。
「御神酒だから」
「それでよね」
「ええ、あと秋だから」
 実りの秋だ、まさに。
「ちょっと殺生関係出ないけれどね」
「それでもよね」
「ええ、秋の実りがね」
 まさにそれがだというのだ。
「一杯出るから」
「茸とか?」
「それとね」
 まだあった、茸以外に。
「果物もあるから」
「それもよね」
「銀杏もあるし山菜もあるわよ」
「栗もね」
「勿論よ」
 これも出るというのだ、山の幸のこれも。
「一杯出るから」
「じゃあスーパーみたいな感じね」
 秋のそれだ、秋のスーパーはそれこそ野菜や山菜や果物で一杯になる。秋の実りがもたらされた結果である。 
 そしてだ、何といってもこれだった。
「特にお米が」
「ああ、それね」
「お餅出るわよ」
 秋の実りの最たるものだ、神道においてとりわけ重要なものだ。
「それもね」
「出るのね」
「そう、お正月だけじゃなくて」
 秋の八条神社のお祭りにも出るというのだ、その餅が。
「楽しみにしててね」
「ええ、じゃあ」
「じゃああれよね」
 彩夏は景子の話からこう言った。
「お餅でお酒を飲むのね」
「いや、実りが一杯あるから」
「私お餅好きだから」
 米どころの秋田にルーツがある彩夏らしい言葉だった。
「だからね」
「その組み合わせがいいのね」
「うん、合わないかしら」
「合わないとは思わないけれど」
 だがだとだ、景子は首を少し右に傾げさせてそのうえで彩夏に答えた、その答えた言葉はどういったものかというと。
「ただ、お米ばかりだから」
「ああ、糖分ね」
「日本酒だけでも危ないから」
 かつて糖尿病といえば日本酒が第一の原因だった、明治帝にしても深酒が過ぎた結果だという説が有力だ。甘党でもあられたがそれ以上にだというのだ。
「それでね」
「止めた方がいいのね」
「ええ、ちょっとね」
 景子はこう彩夏に話した。
「それはね」
「そうなのね」
「秋の実りは他にも一杯あるから」
 肴にすべきそれはというのだ。 
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