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【IS】例えばこんな生活は。

作者:海戦型
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例えばこんなお姉ちゃんは結構世話が焼ける

 
前書き
こんな小説・・・忘れてくれたって構わないのに! 

 
9月10日 リューガの無差別ファイル

呼び出されて所長室に行ったら親父とねーちゃんが居た。
ねーちゃんは親父の教え子でISの開発者であるすげー人だ。性格は究極な自己中。というと語弊があるが普通の尺度で見ればそんな存在だ。なにせこの人、自分が興味のないものをまるで世界に存在しないかのように扱うんだから俺がそう解釈するのも無理らしからぬことだろう。正直ねーちゃんが親父に敬意を払ったりガキの頃俺の遊び相手になってくれたことが不思議でしょうがない。

「リューガ、我が息子よ。IS学園行ってきなさい」
「えっ」
「入学許可は出てるよ~」
「えっ」

そして、ねーちゃんと親父は変な所で悪戯好きだ。

資料をぶんどって読んでみると俺は「3人目の男性IS操縦者」ということになっているらしい。確かに親父謹製のコアを使えばISに乗ることは出来るが、逆を言えばそれ以外のコアでは無理だ。というかぶっちゃけ親父に勉強を殆ど教えてもらってる俺は学校に今更行っても学ぶことが無いんだが。もう就職してるし。

どういう事か問い質したが、どうやらねーちゃんは漸く「ISの最終到達地点」を本格的に目指すつもりらしい。ガキの頃からそれなりに世話になった人だ。親父も賛同してるなら、俺が断る理由は特にない。が・・・行きたくないなぁ。
親父は何を考えてるんだろうか?親父の最終到達目標は俺も知ってるし、それが実現の難しい事であるのも、人類に必要なことであるのも分かってる。でも、目的に到るための手段はさっぱり分からないことが多い。

親父は天才だ。それは間違いない。学会を追放された今でも親父の才能を知る人間はその力を求めてラボまで来るし、学園とのパイプも持っている。カリスマって奴もあるのか、出資者にも一切困ったことが無い。何より俺が持つヴァルシオンⅡも独学で作り上げていることからもそれが分かるってものだ。・・・俺はいつか、そんな親父に恥じない人間になれるんだろうか?

今はそれを気にしてもしょうがないか。取り敢えず今のうちに開発中の新型を向こうでも弄れるように手配しておこう。次は何作るかな・・・そろそろ本格的な第4世代機でも作ってみるか。



9月11日

久方ぶりにねーちゃんの養子であるクロエに会った。今日も元気があるんだか無いんだかわからない顔をしている。学園まで行くのに手伝ってくれるそうな。この子の教育は俺も関わったからこうして久々に会うと感慨深いものがある。
昔は箸一つ覚えさせるのにも苦労したが(・・・何で俺はアメリカ人のくせに日常的に箸使ってるんだ?・・・親父が日本かぶれな所為か)今では自炊を除く大抵の事はこなせるようになっている。自炊を除けば。

今日はおにぎりを押し付けられた。私だっておにぎりくらいは作れます、だそうだ。前に料理がてんで駄目なのをからかったことを根に持っていたのか・・・ん、砂糖と塩を間違えるとかベタなことはしていないようだ。米に水分が多すぎてべたべたではあるがね。
指摘したら「悔しくなんかありませんっ!!」と叫んでいた。悔しさをバネに成長するんだよ?

・・・おい親父?何だよその桐箱に入れたお菓子は?・・・学園長への手土産?何で桐箱なんだよ・・・時代劇とかの見すぎじゃないのか?



9月12日

いや、うん。一夏君とゴエモン君はよくこんな環境で平然としてられるな、って素直に感心してしまう。技研にはそれなりに人はいるが、これだけの好奇の目線に晒されたのは初めてだ。こっちの一挙手一投足に過敏に反応されたんじゃ気が滅入るぞ・・・

さて、それはさておき俺の仕事を確認するか。明日は休暇の間に改良を施したティアの簡易メンテとヴァルシオンⅡ・・・っと、ゴエモン君の命名でルーシィになったんだったな。この子の調子を確かめる。
明後日は鈴音ちゃんのシャロンのシステムアップデートと組立途中だった「藤花」の仕上げ。明々後日は何と先生方の頼みで整備科の特別講習を任されてしまった。忙し過ぎだろ!!

背景、親父殿へ。貴方の息子は今研究所を超えるハードワークを行ってます。敬具。






9月13日 セシリアの貴族日記

まるで装甲と手足が最初から繋がっていたかのような一体感。今までハイパーセンサーで知覚できなかった領域が押し広げられるような錯覚。ティアの事を意識して訓練すればするほど、ティアの意識が感じ取れるようになっていく。昔はゴエモンさんを頼らないと全く分からなかったのに、今では何となくティアの機嫌が分かるまでに至っています。

ひょっとしたらIS適性値も上がっているのかもしれないけれど、今の私には関係の無い事。リューガさんの手で生まれ変わったブルー・ティアーズと空を飛ぶのが、今は只々嬉しいです。
リューガさんがメンテナンスをしてくれたが、私の事をとても褒めてくれました。ISに愛がある人間の操縦だ、と。世界でも指折りのIS開発者とまで噂されるリューガさんのお墨付きは素直に嬉しかったです。BTの制御システムを開発した彼の言葉に偽りはないでしょう。

私はもっと高みへと行ける。ティア、貴方と一緒ならば、どこまでも。



9月14日

シャルロットさんと模擬戦しました。なかなかに手強かったですが、最終的には機体性能の差で競り勝ってしまいました。・・・どうにも面白くありません。シャルロットさん自身の技量は私に劣るものではないのにフレームの差で勝敗が決まるとは。

ファリンは決して劣っているISではありませんが、第4世代のヴァイスとツバキ、チューンが施されたシャロンとティア、もともと軍用機のレンと比べるとどうしても性能差が否めません。・・・オウカ?あの子は強すぎるので話の外です。
とはいえデュノア社の事情ならば私に出来ることなど・・・ん?リューガさんに頼んでみたらいいのでは?社の損にもならないだろうし、いい案かもしれません。

所で、ゴエモンさんから聞いたのですが、明後日にオウカとリューガさんのパートナー・ルーシィが模擬戦をするそうです。勝負になるのだろうか?と思いましたがゴエモンさん曰く「歴史が変わる予感」だそうです。相変わらず面白い事を言う人ですが、勘が良くて嘘を付けない方なので案外本当かもしれません。ちょっと楽しみです。







9月15日 簪の手記

突然真田君から電話がかかってきた時は驚いた。メールなら何度かやり取りしたことがあったけど、電話は初めてだった。柄になく妙に緊張してしまった。「お姉ちゃんの心が折れかけているから支えてほしい」という内容だと分かった時は何となくがっかりしたけど。

しかしあの神経の図太いお姉ちゃんの心を誰が折ったのだろうか?疑問に思って聞いてみたら真田君とミリアの二人で折ってしまったらしい。何をやったの?・・・ああ、それは折れても仕方ないかな。

お姉ちゃんは真田君を言葉でも身体でも捕まえきれない事を凄く気にしていた。それは自分が護衛対象を御しきれない事の証左でもある。簡単に言えば、もしも悪の組織が「Youこっちに来ちゃいなYo!」と言われた際にお姉ちゃんには彼を押さえつける力が無い。口で言い負かそうにも相手にされないし、実力行使も一人では難し過ぎる。こんな体たらくで生徒会長なんて、と漏らしているのを私は聞き逃さなかった。

そして重ねる様にミリアの言葉。それもお姉ちゃんが気にしていたことだ。本音を隠し、打算で動くその心の仮面は更識の当主として必要かつ便利だったから形成された物であり、カリスマの無い人間でもそれに近い求心力を得られる魔法の仮面なのだ。故にそれを被っている限り、虚構であることを決して悟られてはいけない。
ミリアはそれを突いた。見せ掛けだけのカリスマでは本当に欲するものを得られない。事実、お姉ちゃんの心情を知っているのは仮面なしで接する私や素のお姉ちゃんを知っている生徒会メンバー位のものだろう。それ以外の人間には理解されていないのだ。

でも・・・今までのお姉ちゃんなら、他人に理解されないなんてこと一々気にしなかった。それでも気にしているのは・・・やっぱり、ゴエモンと出会って、変わった?
でも、それでいいのかも。今のお姉ちゃんの方が人間味があって接しやすいし。
 
 

 
後書き
カーチャンから聞いた話なんだけど、昔々、ジーちゃんが校長してる学校にヤーさんの御曹司が入学した際に組長が家まで来て「何卒息子をお願い致しやす」って菓子入りの桐箱を差し出したらしい。

そんな話を聞かされたもんだから俺の中での桐箱はヤーさんの代名詞と化している。 
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