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深き者

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第二十一章


第二十一章

「有り難いことです」
「じゃあ行ってらっしゃい」
「昨日と同じ様に過ごさせてもらいます」
「はい。それではです」
 ここまで話してそのうえで二人に深く頭を下げてまた言うのであった。
「行って参ります」
「ええ。じゃあ」
「また明日に」
 こうして牧師は己の教会を後にした。後に残ったのは二人だけであった。二人は牧師が村を去ったのを確認してからまたあの式神達が見ているものを見ようとした。それは幸いにして全て残っていた。
「全部無事だったみたいですね」
「そのようだな」
 まずはそのことをよしとする二人であった。そのうえで画面を見続けていく。
「ですが」
「どうした?」
「何も見つかりませんね」
 本郷はこのことに少し苛立ちを覚えだしていた。そしてそれはその言葉にも出はじめていた。
「本当に何も」
「そうだな。あの鮫の骨以外はな」
「まああれはあれで確かなものですけれどね」
 それでもであった。今の本郷はよりよい情報を求めているのであった。
「あれ以外にはまだ何も見つかりませんか」
「奴等自体は今眠っている」
 役はここで村人達について述べた。
「それでこれといった動きがある筈もな」
「ありませんか」
「鮫の骨が見つかっただけでよしとするか」
 彼はこうも言い出したのだった。
「ここはな」
「それだけですかね、今は」
「知りたいものは全て知られるとは限らない」
 こんなふうにも述べる役であった。
「常にそうだとはな」
「そうですね。それじゃあ」
 これで観るのを終えようとした。その時だった。
「んっ!?」
「あれは」
 二人同時であった。ふとあるものに気付いたのだ。
 多くの映像のうちの一つだった。そこにあるものを見たのだ。それが映っているのは海底の映像であった。ふとある穴を見つけたのである。
「あの穴は」
「今まであんな穴はなかったな」
「ええ」
 本郷はその穴を見ながら役に対して答えた。
「しかもあの大きさは」
「かなりのものだ」
 見れば人数人が一度に入られるまでだ。そこまで大きな穴であった。
「あれだけの穴があればな」
「あの連中も入られますね」
「まさかとは思うが」
 ここで役は言った。その穴を真剣な顔で見ながら。
「あの穴の中にあるものは」
「連中の何かですかね」
「その可能性はあるな。それではだ」
「式神を中に入れますか」
 本郷はこう提案してきた。
「そうしますか。ここは」
「そうだな」
 本郷のその提案に対して頷く役であった。話を聞くうちにであった。
「そうするか」
「ですね。それじゃあ」
「すぐに行かせる」
 役も決断を下した。そうして穴の中に式神を進ませる。穴の中は暗闇であった。何も見えはしない。しかしここで役はある術を使ったのだった。
「明かりですか」
「式神の目から出させた。
 それだというのである。見ればそれによって確かに暗がりの中が見られるようになっていた。そしてそれを頼りにさらに奥に奥にと進むのであった。
 そうして奥に進むうちにだった。二人はその穴、いや洞窟の長さに気付いた。そこにも不審なものを感じ取ったのである。
「役さん、これは」
「怪しいと思うか」
「かなりあからさまに」
 本郷の言葉もこれまでの気軽さを出したものではなかった。まるで刀身の如く研ぎ澄まされた鋭いものになっていたのであった。
「そう思いますよ」
「そうか。やはりな」
「多分この先にです」
「あるな」
 ここで言った役だった。
「間違いなくな」
「それでどうしますか?」
 本郷はさらに役に対して問うた。
 
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