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八条学園怪異譚

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第四十四話 学園の魔女その十五

「生きている雉を殺してその生肉を食べたのよね」
「うむ、大使館前でな」
「それからその雉を日本大使館の中に放り込んだ」
「そしてそれを抗議としたのじゃよ」
「信じられんことにな」
「世の中凄い人がいるわね」
 茉莉也はここまで聞いて唖然となった、信じられないというのだ。
「カルトじゃないの?本当に」
「ううむ、どうだろうな」
「少なくともおかしいとは思うが」 
 尚鬼達も生肉は好きだ、特に生肝という生の内蔵が好きだ。
 だがだ、そうした行為はというのだ。
「生肝はあくまで料理として食らうものだ」
「その様なことはすべきでない」
「わし等もな」
「どうもそうしたことはな」
「そうよね、私には絶対に無理よ」
「私もそうしたことは」
 魔術に造詣の深い七生子もここでこう言う。
「よくないと思います」
「確か黒魔術ではそうしたことしますよね」
「生贄とか」
「話は聞いていますが邪法ですよ」
 こう二人に話す七生子だった、生贄を使う魔術は黒魔術でも邪法だというのだ。
「北欧やケルトの信仰ではありましたけれどそれはあくまで当時の倫理でして」
「今は、ですね」
「邪法になるんですね」
「はい、魔術にも倫理がありまして」
 魔術も人の理の中にある、だからなのだ。
 そこには倫理が及ぶ、黒魔術もそうだというのだ。
「ですから」
「生贄を使う魔術はですか」
「今の時代ではですね」
「はい、決してしてはならないものです」
 そうなっているというのだ。
「間違っても使ってはいないです」
「そうですか、じゃあそんな行為はですね」
 愛実は大使館前での奇行について七生子に尋ねた。
「絶対にしてはいけないですね」
「返ってきますよ」
 これが七生子の返答だった。
「それも凄いものが」
「生贄を使う様な邪法は恨みとかを使うからね」 
 茉莉也もその邪法について話す、やはり彼女も知っていることだった。
「そんなの使ったら後が怖いわよ」
「人を呪わば穴二つですね」
 聖花はその返ってくるものをこの言葉で表現して茉莉也に問うた。
「そういうことですね」
「そうよ、そんな邪法は使ったら絶対に返ってくるからね」
 絶対に使うな、茉莉也の言葉も厳しい。
「というか人を恨むこと自体がよくないからね」
「そうじゃ、だから出来るだけ楽しく生きることじゃよ」
「そんな気持ちにはなるな」
 赤鬼と青鬼も言う、そして。
 鬼達はあらためてだ、こう四人に言った。
「ではな」
「これから飲もうぞ」
「それでは今から」
「飲むわよ」
 七生子と茉莉也は微笑みになって二人に言って来た。
「ウォッカもありますし」
「楽しくやるわよ」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 二人も先輩達の言葉に頷く、そしてだった。
 四人で鬼達と車座になって飲みはじめた、その中で。
 青鬼は豆腐を食べつつこう言った。
「やはり豆腐はいいのう」
「全くじゃ」
 赤鬼もその豆腐を食べつつ相棒に笑顔で応える、尚二人が今食べている豆腐は大きな冷奴である。上には鰹節と生姜に葱をかけ醤油で味付けしている。その実に美味そうな冷奴を食べつつそのうえで話しているのだ。 
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