Element Magic Trinity
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上には上がいる
前書き
祝!40話!
・・・だからといって、特別何かをする訳ではありません。
しいて言うならば。
・・・ティアさんが再びデレる!かも!
「10分なんてとっくに過ぎてるのにまだ魔法は発動してない」
「もう心臓に悪すぎるぜぇ!いつ終わるんだよ」
「ねえ・・・あの巨人の動き・・・遅くなってない?」
ギルドを守る為戦うクロス達は、巨人が発動しようとしている煉獄砕破の魔法陣を見ていた。
ミラの話では発動まで10分ほどなのだが、10分経っても魔法は発動されない。
それはこの巨人の動力源であるエレメント4を倒しているからなのだが・・・それをクロス達は知らない。
「中にいるナツ達が必死に食い止めてるんだよ、きっと。祈るしかないね・・・」
「姉さん・・・俺、信じてるよ」
カナが巨人を見上げて言い、クロスはティアを心配するかのように呟いた。
「グレーイ!」
「ルーーー!」
一方その頃、こちらは先ほどまで大海のジュビアと戦っていた巨人の屋上。
そこには倒れるジュビアと、ジュビアの熱湯により火傷を負ったグレイとルーがいた。
「エルフマン!?アルカ!?あれ?何でミラちゃんまで・・・」
「ミラ、いつの間に乗り込んで来たの?」
「それがよー!ファントムがミラを潰そうとしてよー!マジで許せねー!ぶつぶつぶつ・・・」
その2人にエルフマンとミラ、アルカが駆け寄る。
アルカは相当ご立腹の様で、明らかに不機嫌そうな顔をしていた。
「こいつは3人目のエレメント4か!?」
「何か幸せそうな顔でぶっ倒れてるな」
何故か幸せそうな笑みを浮かべて倒れるジュビアに首を傾げるアルカ。
そしてすぐにジュビアから目を逸らし、「ファントムめ・・・ミラを泣かせやがって・・・」と再びぶつぶつ呟きはじめた。
「あと1人。あと1人倒せば煉獄砕破を止められるわ」
「え!?」
「!?」
「この魔法や巨人はエレメント4が動力だったんだ」
「じゃあ僕達、動力源を倒したって事!?やったー!」
ミラとエルフマンの言葉に驚く2人。
ルーは状況をすぐに理解し、絞り終えたブレザーを着た。
「まだ間に合う!いけるわっ!」
一方、最後のエレメント4にしてエレメント4最強の男『大空のアリア』と戦っているナツは・・・。
「ハァ、ハァ、ハァー、ハァ、ハァ・・・」
傷だらけの姿でアリアと対峙していた。
対するアリアの身体には掠り傷1つなく、苦戦を強いられているのは誰が見ても明らかだった。
「よくぞそこまで立っていられる。大したものだ」
「くそっ!」
右拳に炎を纏い、勢いよくナツはアリアに向かっていく。
(何だコイツ・・・こんな一方的にやられてるナツは初めて見るぞ・・・)
柱に身を隠すハッピーは細かく震える。
6年間、ナツとはほぼ毎日一緒に行動しているが、ここまで一方的な勝負を見るのは初めてだった。
いつも見る勝負はすぐにナツが勝つか、最初は苦戦したが最終的には勝つか、エルザやティアを相手にした時のように一瞬で終わるかのどれかだったからである。
この勝負が始まってかなり経つが、ナツの攻撃は1つもアリアに当たらない。
逆にアリアの攻撃は見事なまでにナツに当たっていた。
「しかし我が『空域』の前では手も足もでまい」
そう言って右掌をナツの方に向ける。
「ぐっ!」
するとナツは何かに押されたかのように後ろへと飛ばされた。
アリアがナツに触れた訳ではない。これが彼の魔法『空域』なのだ。
(見えない魔法!どうすればいいんだ!)
見える魔法なら避ければいい。ナツの身体能力なら並みの攻撃は避けられるだろう。
が、相手は見えない魔法。『見えない魔法を見えるようにする魔法』でもあればいいが、ナツはそんな魔法は使えない。
そもそも、そんな魔法を使える魔導士が妖精の尻尾にいただろうか。
ガルナ島で戦ったユウカの『波動』の様に魔法を無力化させる事も出来ないのだ。
これではかなりナツは不利である。
「む」
だが、この男に『諦める』という言葉は似合わない。
否、似合わないというより、この男は『諦める』という言葉を知らないだろう。
アリアの攻撃を受けても尚、ナツは立ち上がる。
「まだ立つか、火竜」
「倒れる訳にはいかねぇんだ・・・俺は妖精の尻尾の魔導士なんだ・・・」
しっかりとした足で立つが、息は荒い。
が、ナツには倒れられない理由がある。
ボロボロにされたギルド、傷ついたレビィ達、重症のマスター、ジュピターが直撃したエルザとティア・・・そして、狙われているルーシィの為にも。
「燃えてきたぞコノヤロウ!」
アリアに向かってそう叫ぶナツ。
「ナツ・・・」
そんなナツを見てハッピーは心配そうに相棒の名を呟く。
しかしアリアは表情1つ変えず、左掌をナツの方に向けた。
「空域・・・『絶』」
「ぐあああああっ!」
ズガガガガガガガガッと音を立て、空域、『絶』はナツに直撃した。
容赦ないアリアの空域の攻撃に、再びナツは吹き飛ばされる。
(強すぎる・・・これがエレメント4、最強の男・・・)
ハッピーの目には涙が浮かんでいた。
力の差は明らか、ナツが勝てるかどうかさえも解らない。
そんな事は初めてだった。
「ちくしょオ!」
「上には上がいるのです。若き竜よ」
ナツは何とか立ち上がり、頬を膨らませる。
「火竜の咆哮!」
勢いよく炎のブレスがアリアに向かって放たれる。
が、アリアは文字通り煙のようにスゥゥゥゥ・・・っと消え、ブレスを避けた。
「!ど・・・どこだ!?」
きょろきょろとアリアを探すナツ。
と、そこに姿は見えないがアリアの声が響いてきた。
「終わりだ、火竜・・・あなたにマカロフと同じ苦しみを与えてやろう」
その瞬間、アリアはナツの背後に姿を現した。
手から光が溢れ、その溢れ放たれた光はナツを包んだ。
「空域、『滅』!その魔力は空になる!」
その瞬間、ナツはゾッと背筋を凍らせた。
「やば・・・」
「ナツーーーーーーーーーーーー!」
「う・・・あ・・・が・・・」
光に包まれると同時に、ナツは自分の体から魔力が抜けていくのを感じる。
バキバキバキ・・・と魔力は空中に流れていく。
ハッピーが悲痛な叫びを響かせた。
もうダメだ、とハッピーが思い、アリアが勝利を確信した、その時だった!
「全く・・・何やってるのよ、バカナツゥゥゥゥゥゥッ!」
「!」
呆れた様なソプラノボイスと共に、アリアの顔面に飛び蹴りが決まる。
その蹴りによってアリアはよろめき魔法を中断させ、魔法から解放されたナツもよろめく。
すると声の主はよろめくナツの腕を鞭で絡めて引き、アリアと距離を離す。
「え!?」
何とか立ったナツは、アリアに飛び蹴りを決め舞い降りてきた人間の姿を見て、思わず驚愕の声を上げた。
そこにいるのは本来、ここにいないはずの人間。
巨人の外でギルドを守っているはずの少女。
もうお気づきかと思うが、その人物とは・・・
「ティア!」
ジュピターを消そうとし失敗、エルザと共にジュピターを喰らって大怪我を負ったはずの・・・ティアであった。
当然怪我を負ってはいるが、ジュピターを消すのに使った魔力は既に回復しているようだ。
「ほう・・・」
アリアは体勢を整えながら声を漏らす。
「オ、オイ・・・動いて大丈夫なのかよ・・・そのケガ・・・」
「アンタに心配されるほど、私は弱くないわ」
「んなっ!」
こんな状態でも捻くれているのか、と言いたげなナツを見る。
「それに・・・」
「?」
「アンタの方が怪我してるじゃない。大丈夫なの?」
こてっと首を傾げ、珍しく誰かを心配するような発言をし、アリアに目を向ける。
アーモンドに近い形の青い目が、怒りの輝きのみを残していた。
「この愚者がマスターを・・・」
「っ!」
変わらないソプラノボイスから一切の感情を消し、呟く。
その声を聞いたナツはゾッと背筋を凍らせた。
「悲しいな・・・火竜だけでなく、海の閃光の首まで私にくれるとは・・・」
「何を言っているの?私からしたら、エレメント4最強の男の首をくれるなんて、この戦いの場を作ってくれた人に感謝しなくてはいけないわね。それと・・・」
そこで一旦区切ると、氷の女王の名に恥じぬほどの冷たい瞳でアリアを見つめた。
「私の首をアンタの様な愚か者にくれてやる訳ないでしょう」
ナツは察した。
ティアはキレている、と。
感情表現を苦手とするティアは、大きく表情を変える事が滅多にない。
が、ギルドに入って7年、幼馴染に近い存在と化しているこの無表情少女の本当に小さい表情の変わり方で、ナツはティアがどのような感情でいるかを察知出来るようになっていた。
今は右の眉がピクリと上がり、目に怒り以外の感情を存在させていない・・・。
つまり、相当怒っている、という訳だ。
「私達の親に手を出したのは、この男ね」
「ティア・・・」
顔には出していないが、その拳は痛いほど握りしめられている。
「ふふふ・・・さすがにティアが相手となると・・・」
そう言いながら、アリアは自分の目を隠している目隠しに手を伸ばす。
「この私も本気を出さねばなりませんな」
そして、外した。
「目!?」
「そう・・・アリアは普段目を閉じている。目を閉じる事で強大過ぎる自分の魔力を抑えてるらしいの」
一方、グレイ達はファントムギルドの中を走っていた。
「何じゃそりゃ!?」
「目を隠した状態で生活できるのかな・・・」
「難しそうだよな」
「とにかく、アリアを見つけたら目を開かせる前に倒すのよっ!」
ルーは試しに目を隠して走り、転んだ。
「目を開かせたら勝機を失うかもしれない」
一方、外では・・・。
「魔法陣が光り出した!?」
「まさか、完成したのか!?」
煉獄砕破の魔法陣が、突如光りはじめていた。
「ここまでなのか・・・」
「姉さんっ!」
カナが悔しげに呟き、クロスは姉を最後まで信じようと叫んだ。
「来い、ティア」
カッとアリアの目が見開かれる。
それと同時に魔法が発動された。
「死の空域、『零』発動。この空域は全ての命を喰い尽くす」
「おあああああっ!」
アリアの空域に巻き込まれ、ビリビリと感じる魔力に叫ぶナツ。
その魔力をナツ同様、肌で感じながら、ティアは口を開く。
「命を奪う魔法ですって・・・?」
確かめるように呟き、ふっと口元を緩めた。
「・・・私の敵じゃないわ」
彼女は勝利を確信している。
死の空域・・・つまり、下手をしたら死ぬ。
それすらも恐れない。否、彼女は『自分が死なないと解っている』。
何故ならば・・・勝つから。
「さぁ、楽しもう」
アリアが笑みを浮かべて言い放つ。
が、ティアは微動だにしない。
「ティア!」
そんなティアに向かって死の空域が放たれる。
慌てず騒がず悲鳴も上げず、ティアは指を鳴らした。
心地よい鐘の音が響く。
「大海針雨・剣」
青い魔法陣から降り注ぐ水の針が・・・死の空域を斬り裂いた。
しかもその針は剣のように鋭く尖っている。
「え!?バカな!?空域を針で・・・」
あまりの出来事に驚愕するアリア。
そんなアリアを見つめ、悠々とアリアへと向かっていくティア。
地を蹴り、水で構成された剣を2本持ち、勢いよく・・・跳んだ。
「大海魔剣!」
「うぐああああああああああああああっ!」
次の瞬間、アリアは二対の水の剣が放った十字の斬撃を喰らっていた。
「・・・!」
「・・・!」
自分があれ程苦戦した相手をまさか魔法2つで倒すとは・・・と驚愕の表情でティアを見るナツとハッピー。
まさか自分がやられるとは・・・と驚愕の表情でティアを見て、倒れ込むアリア。
「・・・言ったでしょう?アンタ程度の魔導士の魔法は、私の敵ではないと」
ティアの手から剣が消える。
そしてゆっくりと振り返った。
その目には怒りと・・・どこか楽しそうな光が灯っていた。
「それならば私より強いマスターがやられるハズがない・・・今すぐ己の武勇伝から抹消し、2度とそんな戯言は口にしない事ね」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
久々にティア大活躍!アルカとルーだけが活躍するなど、ティアは許しませんからね・・・多分。
そして聞きたいのですが・・・。
どうしてナツとティアのコンビはこれほどまでに人気なんですか?
感想を見ると必ずと言っていいほど「ナツとティアのコンビが見たい」とかの感想があるんです。まぁ嬉しいんですけども。
でも・・・何でなんだろうなーと思って。
特別仲がいい訳でもなく、特別仲が悪い訳でもなく・・・まぁ時々優しさは垣間見せますけど。
今回もナツを助けた白馬に乗った王子様ならぬお姫様・・・いや、女王様ですけどね。
誰か教えてください・・・。
感想・批評、お待ちしてます。
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