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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第六十八話 一つの裏切り

「チッ、コーディネーター風情が!」

ロッソイージスに乗るエミリオはザフトの敵部隊に苦戦を強いられていた。巡航形態に変形すればエミリオのロッソイージスが三機の中で最も速い機体であっても、直線軌道では狙いを取られてしまう。なら純粋にMS状態での加速力が高いG‐Vとライゴウに任せた方が最善だと判断し、エミリオはより敵の注意を引く為に派手に攻撃を仕掛けていた。

『こいつでどうだッ!』

「この程度で!」

黒いザク――――ディアッカの乗るガナーザクファントムがハンドグレネードを投げつけ、その衝撃で隙を見せたロッソイージスを狙い銃撃が放たれるが、シールドでガードし、何とか敵の攻撃を退ける。

『グゥレイト、貰ったぜ!』

シールドで防いだことによって動きを止めたロッソイージスを狙い、ディアッカはオルトロスを構え、一撃を放つ。しかし、エミリオはすぐさまロッソイージスを正面に向け、同様に収束ビーム砲を構えて放った。お互いに放たれたビームが衝突しあい、衝撃が巻き起こる。

『マジかよ、あのタイミングで反応しやがった!』

「コーディネーターは一人残らず殺す!」

エミリオも頭のスイッチを入れ替える。現状、突破は困難。ならば任務よりもコーディネーターを殲滅させることを優先する。そう判断してビームサーベルを手足四本に展開し、ディアッカのザクに斬りかかっていった。







「いい加減――――しつこいんだよ!」

G‐Vで戦場を駆けていたアウルも流石に敵の多さに辟易しながら戦闘を続ける。今はインコムとミサイルによって迎撃が追い付いているものの、実弾であるミサイルやエネルギーの充電が必要なインコムの稼働時間に限界が来れば、多数の敵に囲まれているこの状況は不味いだろう。

『ガンバレルシステムか……動きを止めるな!相手に狙い撃ちにされるぞ!』

G‐Vから展開されるインコムをザフトの部隊はガンバレルと同様のシステムだと認識して対応する。事実、OSなどの関係上でマニュアルかセミオートかの違いでしかない為、あながち間違いというわけではないが、その認識の誤差はインコムの特性上、危険な差となる。

『この位置からなら!』

「ハッ、貰ったァ!」

一機のグフが複雑に移動したインコムと機体自体の位置関係から攻撃するために移動させればワイヤーが絡みついて、すぐに攻撃できないと判断し、突撃を仕掛けた。しかし、インコムは巻き上げ式の中継点を用意することで移動のタイムラグや複雑な動きをせずに機体に戻すことが出来る。結果、インコムは一瞬でグフを射程に収め、ビームが貫いた。
こうした一戦ごとの戦績を見ればアウルは十分にエース級の実力を誇っていると言ってもいい。だが、やはり数の違いが戦力の決定的な差として如実に表れる。ミサイルの弾数は心許なくなり、インコムの稼働時間が近づき、シールドに用意されている推進剤も尽きつつある。
 
「あとからあとから虫みたいに現れやがって――――一体、何機いるってんだ!」

余裕を見せるように戦ってはいるものの、アウルはぎりぎりの戦いを強いられている。敵を倒すことが出来ても次々と群がる相手にアウルは如何することも出来ない。また、戦線を無理矢理突破しようとすれば集中砲火を浴びることとなり、強行突破も難しい。
エミリオは思考を切り替えて戦闘を継続した。ネオは忍耐強く我慢し、きっかけをつかんで突破した。しかし、精神年齢や思考が両社と比べ幼いとも言えるアウルには思考の切り替えも長期的な我慢も難しい。その結果、彼は三機の中で一番多く戦果を稼ぎつつも、最も危険な状態に陥っていた。
だが、アウルはそれを自覚しきれていない。それがエクステンデットとしてのデメリットなのか、彼本来の性格ゆえなのかはともかく――――彼は自覚がないままに追い込まれつつあった。







「突破したか!」

遂に戦線を突破し、コロニーレーザー周辺までたどり着いたネオ。成功は絶望的であり、ネオ自身ですら成功の可能性を見限っていた部分があったとにも拘らず、作戦は突破した時点でほぼ成功といっても良かっただろう。
ライゴウはザフトからは死角になる場所に移動させ、一見コロニーレーザーの外壁にしか見えない場所をアーマーシュナイダーで切り裂き、隠し通路に入り込む。

「ここか?」

そして、内部に入り込んだネオは機体から飛び降り、コロニーレーザーの小型制御ルームの一室と思わしき地点までたどり着いた。あらかじめ用意しておいた発射用のプログラムと防壁システムを突破するためのウイルスを入れてあるメモリを用意し、それを展開させる。

「それまでにここに誰か来るか?」

軽く隠してはいるものの、探せば見つかるであろうライゴウ。そしてメインサーバーを統括しているシステムとは違う緊急用の一部の連合兵士しか知らない一室とはいえ、外から道さえ見つけることが出来ればあっさりと侵入されることになるだろう。
そうは思いつつも、少なくともシステムが作動するまでは見つかることはないはずだと思い、一旦息をつく。長時間の緊張状態に肉体的にも精神的にも疲労はピークに達していた。しかし、腰を落ち着けようとしたその瞬間、嫌な予感を覚え、とっさにその場から離れる。

「何?あのタイミングで避けるのかよ!チッ、ついてねえぜ」

一発の銃声、そして聞き覚えのある声、銃弾が命中した場所は先程まで自分が居た場所。

「ダナ!貴様、一体どういうつもりだ!?」

コンピューターを壁にしてしゃがみ、銃弾が飛んできた方向からは死角になるように移動する。それと同時にホルスターから自分の銃を引き抜いた。撃ってきたことが誤解であることを願いつつも、事実確認の為に先程聞こえた声、ダナ・スニップ中尉に向かって声を掛ける。

「どういうつもりねぇ?ま、後始末って所だな。まさか本当に突破してくれるとは思ってなかったぜ。おかげでこっちの仕事が増えちまったじゃねえか」

「仕事だと?」

撃ってきたことを誤解だという事もなく、彼はそのまま話を続ける。

「そ、連合の残存戦力であり、独断行動に走ったファントムペインはコロニーレーザー奪還の為に攻撃を開始する。一度は奪還に成功したものの、一部の兵が暴走しプラントを直接狙えないことから中立都市コペルニクスに砲撃を行う。結果、ファントムペインは現時点でロゴスに次いだ最大級の大悪党って事になる。
その後はファントムペインをコロニーレーザーごとザフトが破壊。そうして月にはまともな都市としての機能を持つものはなくなり、宇宙圏は完全にプラント側の手に渡る。最初からそういう筋書き(シナリオ)だったんだよ」

「つまり、お前はザフトと裏で繋がっていたってわけか……?」

あまりの内容に驚愕するネオだが、冷静に状況は把握していた。まともに返答したネオにダナは驚いたのか口笛を吹きながらネオを称賛する。

「驚いたぜ、ネオの旦那。まさか状況をあっさり理解して受け止めてくれるなんてな。まあそういう事だ。正確にはプラントの上層部とだけどな。あ、一応言っておくが俺はナチュラルだぜ?」

「上層部……デュランダルか。ならここまで来れたのも納得だな。ネロブリッツの識別はザフトのものになってるって事だろ?」

いくらミラージュコロイドが展開されているとはいえ敵と戦闘をせずに突破など出来るはずもない。おそらくは味方識別信号をデュランダルあたりから受け取り、それを使う事でミラージュコロイドを展開したままここに来たのだろう。苦労してここまできたネオにとっては苛立たしい話だ。

「旦那、あんたマジで超能力者(エスパー)か何かなわけ?これだけで全部理解できるなんて思ってなかったぜ」

「大方、好みの状況を用意してくれるとでも誘われたんだろ。馬鹿な真似は止めろ!利用されるだけだぞ!」

ネオはデュランダル議長が胡散臭い人物だと映像越しからでも直感的なもので感じ取っていた。ダナに今からでも遅くはないと警告するが当然ダナはその言葉を受け入れることはない。

「利用される?してくれても構わねえさ。その分俺も利用させてもらうからな」

「あれに讒言の類が通用すると思ってるのか!」

デュランダルは利用していると思わせて逆に利用している側の人間だ。おそらくは自身が利用されていることに気付くことすらないままに最後を迎える事になる。

「どっちにしてももう遅いさ。アンタが使ったデータウイルスはもうすでにコペルニクスを捉えようとしてるはずだからな」

「何だと!?」

思わず確認しようと機器の方へ顔を向けようとして立ち上がりかけるがダナが拳銃を連続で三発ほど放ったことでしゃがみ直す。

(どうする――――)

ネオを必死に頭を回転させる。ウイルスの話が嘘だというのはほぼ無いだろう。何せ手渡しで作戦前にデータを渡してきたのはダナ本人なのだ。こうなってしまった以上、ネオに止める手段は直接コロニーレーザーを破壊するしか他にない。しかし、それにはライゴウに乗り込む必要があり、ライゴウに乗り込むにはダナの立ち塞がる部屋の出入口を突破しなくてはならない。

「オイオイ、ネオの旦那よー。俺は面倒が嫌いなんだ。早いとこ死んでくれないかねえ?」

再び銃撃が放たれる。伏せたままの状態である為、攻撃は脅威ではないがいつまでも移動できないのは厄介だ。このままではコロニーレーザーが放たれるまで釘付けにされる。ネオの判断は早かった。コロニーレーザーを破壊するために突破を図る。

「どけ、ダナ!」

「そう言われて、はいそうですかって言うの思ってんの?」

正面突破――――流石のダナも無謀と一瞬呆けるが銃を構える。ネオも同時に走りながら銃弾を撃ち込んだ。ネオは撃つと同時に姿勢を低くして下からタックルするように進む。ダナは銃弾が頬を翳めながらも反撃する。しかし、姿勢を低くしたネオに銃弾が当たることはなく、タックルをよろめかせる。

「チッ!?」

倒れそうになりながらもダナは膝蹴りでネオの顎を蹴り上げようとした。ネオはそれを横にすべるように転がることで躱すが、出入口からは遠ざかることになる。

「このッ!」

転がってしゃがみ込んだまま銃を構えるネオと、よろめかせた体を壁で受け止めさせることで立ったまま銃を構えるダナ。両者の銃口から火花が散る。出入口の扉を盾代わりにしてダナは銃撃を避ける。一方でネオは銃弾がつけている仮面に命中し、頭が割れるような衝撃を受け、仮面が吹き飛ぶ。

「へえ、その趣味悪い仮面が無い方が格好いいじゃんか」

「――ッ、黙れ!」

仮面が吹き飛ばされた衝撃で額から血が流れると同時に彼の素顔が晒される。金髪で鼻のあたりに傷が付いている彼の素顔。知っている人間なら彼が前大戦の英雄であるムウ・ラ・フラガと一致していることに気付いただろう。
そして、ネオは銃撃を頭の仮面に受けた襲撃からか頭の中が混濁したかのように思考がまとまらない。それでも現状何をすべきかは理解しているらしく、拳銃でダナを近づかせないように牽制する。

(ま、目的は果たしたし放っておいても問題ないか……)

ウイルスが遠目から機器を見る限り作動していることを確認し、どの道ネオがこの後ザフトの部隊から逃れることなどできないだろうと判断して逃げを選択する。長い時間ここでいてネロブリッツがザフトの部隊に見つかると面倒だからだ。
ダナが来ているパイロットスーツ自体は連合所属のものだ。この後、プラントのデュランダル議長が用意している筈である母艦に向かわなくては彼はどちらからも敵のまま行動する羽目になる。面倒事というよりも自分の命をチップに差し出している状況からは彼としては一刻も早く逃れたい。

「じゃあな、もし生きてたら今度はちゃんと俺の手で殺してやるよ」

「待てッ!」

当然待つはずもなく、ダナは逃げ去っていった。ネオはふらつきながらも立ち上がり、コロニーレーザーのデータを確かめる。ウイルスを入れたメモリを抜き出せば止まるかもしれないといった淡い期待だが、何もしないよりはと思っての行動だ。案の定、ウイルスが止まることはなく、こういったデータを専門としていないネオでは止める術はない。

「クソッ!」

彼にとっては裏切られ、自分たちのやってきたことが無意味だと知らされたのだ。精神的にかなり衝撃を受けていた。それでも何とかしないといけないと思い、ライゴウの方に戻ってコロニーレーザーを破壊することを決心する。コロニーレーザー周辺にいるザフトの部隊には悪いが、中立都市であるコペルニクスを撃ち、民間人を虐殺しようというなど彼にとって許容できることではない。
そうして、争いは未だに続いていく。
 
 

 
後書き
プロットなしで書き始めるとこうやってキャラが暴走するから作者は涙目になるんだ!一体どうやって収集つければいいんだよ(笑)
誰かデウス・エクス・マキナでも持ってきてくれ(錯乱)

おまけ
クラウ「足のある機体がご要望だったので用意しました」
議長「腕が無いが?」
クラウ「……ビグザムにそんなものは不要です(よくわからん足のアプサラスよりはマシだろうに)」
議長「赤くないが?」
クラウ「……ザビ家仕様のデザインですので問題ないかと」
議長「そうか……(ザビ家って何?)」 
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