Element Magic Trinity
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雨の中に咲く花
「いい事思いついたぞ、ハッピー!」
「なぁに!?」
大火の兎兎丸を倒し、ジュピターを破壊したナツはハッピーと共に巨人と化したファントムギルドの廊下を走っていた。
「ジョゼをやっつけちまえば、この戦いは終わるんじゃねーのか?」
「何て事言ってんだよ!ジョゼはうちのマスターと互角の魔力を持ってるんだよ!ナツなんか勝てる訳ないじゃない!」
「でもじっちゃんはいねーんだ!だったら誰がジョゼを倒すんだよっ!」
ナツの言葉にハッピーは『ガーン』と背後に文字が見えそうな勢いでショックを受ける。
「ナツのバカー!考えない様にしてた事思い出しちゃったじゃないかー!」
「なぬ!?」
そう叫ぶと、ハッピーはしょげたように飛ぶ。
「そうだよ・・・マスターもエルザもティアもいないんだ・・・この戦争・・・どうやっても最後にはジョゼが・・・あぎゅ」
すると、そんなハッピーの頭にナツが手を乗せる。
「俺がいるだろーが!」
そして笑みを浮かべ、力強くそう言った。
「な」
「・・・あい」
いつもと変わらない笑顔を向けるナツに、ハッピーも元気と安心感を取り戻す。
(何でだろ?マスターやエルザ、ティアの方が魔力が高いのに・・・ナツには皆が期待しちゃう何かがあるんだ・・・)
そんな事をハッピーが考えていると、2人の前に風が吹き荒れる。
その風は竜巻のように渦を作り、そこから大男が姿を現す。
「悲しい・・・」
「ぬお!?」
「炎の翼は朽ちて堕ちてゆく・・・嗚呼・・・そこに残るのは竜の屍・・・」
「あ?」
「ナツ・・・こいつ、エレメント4だよ!」
そこに現れたのは、マスターに枯渇を使い重傷にまで追い込んだ『大空のアリア』だった。
「我が名はアリア・・・エレメント4の頂点なり。竜狩りに推参いたした」
一方、ナツとは別ルートでこの巨人の動力源を探しているグレイとルーは屋上へと出てきていた。
「ん?雨・・・なんか降ってたか?」
「おかしいなぁ、今日のマグノリアは1日中快晴予報のはずだよ」
2人が外に出ると、何故かそこだけ雨が降っていた。
傘なんて持っていないのでびしょ濡れになりながらも屋上へ出る。
と、そこに傘を差した女性の人影。
「しんしんと・・・」
「!」
「誰か来た!」
そこに現れたのは暗い色のバーパパに同じ色のコート、ハートが散りばめられたピンク色の傘を差した女性だった。
「そう・・・ジュビアはエレメント4の1人にして雨女。しんしんと・・・」
「エレメント4・・・」
(ティアに声が似てる・・・)
エレメント4の1人、『大海のジュビア』に対し、ルーは内心そう思う。
コイツの呑気で若干KYなところはいつだって変わらないらしい。
「まさか2つのエレメントが倒されるとは思わなかったわ。しかしジュビアとアリアは甘くみない事ね」
ジュビアは2人にそう忠告する。
「悪ィけど、女だろうが子供だろうが仲間を傷つける奴ァ容赦しねぇつもりだからよォ」
しかし、その忠告に対しグレイはそう言い放つ。
するとそれを聞いたジュビアは何故か頬を赤く染めた。
「そ・・・そう・・・私の負けだわ・・・ごきげんよう」
そして何故か戦ってもいないのに負けを認め、グレイとルーに背を向け、立ち去ろうとした。
「オイオイオイっ!何じゃそりゃ!」
「一体何がしたいんだろう・・・」
当然驚くグレイと、ジュビアの謎すぎる行動に首を傾げるルー。
(はぁ・・・ジュビア・・・どうしちゃったのかしら・・・この胸のドキドキは・・・)
一方、2人に背を向け立ち去ろうとしているジュビアは自分のてるてる坊主のぶら下がった胸を押さえていた。
「待てコラ!この巨人を止めやがれっ!」
「そうだそうだー!」
巨人の動力源を探している2人はジュビアを追い、それを聞いたジュビアの胸が『キュン』と高鳴る。
(私のものにしたい・・・!ジュビア・・・もう止まらない!)
そう心の中で叫んだジュビアは向かってくるグレイの方を振り返り、右手を向ける。
「水流拘束!」
「ごぽっ」
「うわっ・・・て、あれ?」
そしてグレイを水の塊に閉じ込めた。
ルーシィを捕まえる時に使ったのと同じ魔法である。
・・・が、なぜか自分には攻撃が来なかったルーはますます首を傾げる。
「何でグレイだけ・・・」
「うぎっ」
が、その思考もグレイの声で完全に消えた。
慌ててグレイの方を向いてみると、ガルナ島でリオンに刺された脇腹の傷が開いてしまっていた。
それを見たジュビアは慌てる。
「まぁっ!怪我をしていらしたなんてっ!ど、どうしましょっ!早く解かなきゃっ!」
「え?グレイを倒すんだから魔法解除する必要ないんじゃ・・・」
急いで魔法解除しようとするジュビアにルーが珍しく冷静にツッコむ。
「ぬぅぅぅ・・・あああっ!」
が、グレイは水流拘束を凍らせて砕き、自力で脱出した。
その光景をジュビアは驚いたような目で見つめる。
何故か目はキラキラと輝き、頬は赤く染まっているが・・・。
(こ、凍らせて砕いた・・・ジュビアの水流拘束は決して破られないと思っていたのに・・・氷と水・・・なんて運命的なの・・・!?)
勘が良くても鈍くても皆さんお気づきだと思うが、どうやらジュビアはグレイに惚れたらしい。
「やってくれたなァ、コノヤロウ・・・」
「はぅあっ!」
「グレイ大丈夫!?今止血するから!」
真っ赤に染まった白シャツの上から脇腹を抑えジュビアを睨むグレイ。
そんなグレイを見てまた『キュン』と胸を高鳴らせ、更に顔を赤くするジュビア。
そしてグレイの脇腹の傷を一気に塞ぐルー。
何ともバラバラな3人だ、いろんな意味で。
「痛て・・・」
「あ、グレイ。服」
一応傷は塞いでもらったものの痛みは残っているらしく、小さく呻きながらグレイは白シャツを脱ぎ、それをルーが軽く注意する。
グレイは脱ぎ癖を持っているから365日いつでも服を脱ぐのだが、それを知らないジュビアは更に顔を赤く染めた。
(な、何故服をお脱ぎに!?わ、わわ、私・・・まだ心の準備が・・・)
何かいろいろ勘違いしているようだ。
そんなジュビアはさておき、2人は先手を打つ。
「アイスメイク、槍騎兵!」
「大空槍騎兵!」
氷と風の槍は真っ直ぐジュビアに向かい、ジュビアに突き刺さる。
「え?」
「あれ?」
が、突如ジュビアの身体が液体と化し、その槍達はジュビアを突き抜けその後ろに直撃した。
「ジュビアの体は水で出来ているの。しんしんと・・・」
「水だぁ!?」
「ティアと同じだ!」
ジュビアの異常な体にグレイは驚き、ルーは驚きつつも「そういえば見慣れた光景だな」とティアを思い浮かべる。
それに対し、ジュビアはどこか悲しそうな表情で俯いた。
(今のは攻撃・・・そう、彼は敵!ジュビアはくじけない・・・!これが戦争!)
小さく震え、何とか自分と納得させる。
そして叫んだ。
「さよなら小さな恋の花!水流斬破!」
「何言ってんだコイツ!ぐぉわっ!」
「え!?グレイ気づいてないの!?わわわっ!」
ジュビアの放った水の斬撃を何とか避け直撃は免れた2人。
そしてすぐさま次の攻撃態勢へ入る。
「くっ、アイスメイク・・・戦斧!」
「大空大鷲!」
作り出した氷の斧を横一閃に振り、ジュビアを斬りつける。
と同時に風の鷲がジュビア目掛けて飛んだ。
しかしまたもジュビアの体は水と化し、その攻撃は不発に終わる。
「チッ」
「何だったかな・・・ティアの弱点・・・それさえ思い出せれば勝てるのに・・・」
舌打ちをするグレイと、必死に同じような体を持つティアの唯一の弱点を思い出そうと頭を捻るルー。
しかし昨日の晩御飯さえすぐに思い出せないルーが随分前に聞いたティアの弱点など覚えている訳が無かった。
「あなた達はジュビアには勝てない。今ならまだ助けてあげられる。ルーシィを連れてきて頂戴。そうしたら私がマスターに話して退いてもらうわ」
2人の交渉を持ちかけるジュビア。
が、2人の答えなどかなり前から決まっている。
「オイ・・・ふざけた事言ってんじゃねぇぞ。もう互いに退けねぇトコまできてんだろうが」
「君達の欲の為に仲間を差し出せって?冗談じゃないよっ!」
その為、2人の意見はほぼ即答でジュビアに届いた。
「ルーシィは仲間だ。命にかえても渡さねぇぞ」
「それに、レビィ達やおじいちゃん、エルザ・・・何よりティアが傷つけられてるんだ。退き下がるなんて絶対にしないよ」
その瞬間、ジュビアの手から傘が落ちた。
ここからは少しジュビアの思考となる。
命にかえても・・・
命にかえても・・・
命にかえても・・・
命にかえても・・・
恋
恋・・・
恋・・・
恋敵!
何を思ったのか、ジュビアの脳内では『ルーシィ=恋敵』となってしまった。
するとジュビアはグスン・・・と涙を流す。
「!」
「泣いてる!?」
当然驚くグレイとルー。
そして涙を拭いながらジュビアはプルプル小さく震え、バーパパに手をかける。
そして・・・。
「キィイイイイイィイィイィ!」
バーパパを脱ぎ捨て、突然体から湯気を噴出し始めた。
「ジュビアは許さない!ルーシィを決して許さない!」
彼女の中で勝手に恋敵とされたルーシィに怒りを覚えるジュビア。
しかしジュビアの考えている事が解る訳が無い2人は・・・。
「あちっ!熱湯!?」
「てゆーか、何でルーシィにキレてるの!?」
当然、驚愕のリアクションを取ったのだった。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
漫画次回分まで書くか悩みましたが、書くととてつもなく長くなってしまうのでここまでにしました。
それと、かなり前にとったアンケートですが、『ティアにチートになってしまう力をつけるかどうか』。ティアの過去の話に違和感が生じ、もしかしたら力すら出てこないかもしれません。
もし出てこなかったらすいません。
感想・批評、お待ちしてます。
主要キャラ説明、ここまでの情報を更新しました。
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