八条学園怪異譚
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第四十四話 学園の魔女その七
「特にイタリア語やフランス語は」
「あっ、ラテンだからですか」
「それで、ですね」
「そうです」
扉を開けながら二人に笑顔で話していく。
「とはいっても魔術書は日本語のものが多いです」
「部室の中にあるのはですか」
「そうなんですね」
「だって皆ラテン語とか読めないですから」
至極当然の言葉であった。
「私も読めないですよ」
「じゃあ部室の看板は」
「これは」
「これはこの単語だけ勉強して書きました」
それでだというのだ、七生子は二人に話しながらそのうえで部屋の灯りを点ける。天井の蛍光灯に照らされている部屋の中はというと。
本棚が幾つもありそこは全て分厚い本で埋まっている、部屋のあちこちには置物や像が置かれ壁にはカバラやペンタゴンが描かれている。そして床には魔法陣がある。
そういったものを見てだ、愛実がまさかという顔で七生子に問うた。
「あの、このお部屋で」
「あっ、私達は別に」
「悪魔を召喚したりしないですか」
「研究はしますけれど」
それでもだというのだ。
「実践はしないです」
「そうなんですか」
「だっていますから、この学園」
ここでこう言った七生子だった。
「ですから」
「あっ、ひょっとして」
「この学園いますよね」
それでだというのである。
「妖怪さんや幽霊さん達が」
「先輩もこのことご存知だったんですね」
「そうなんです、だからなです」
七生子も彼等のことを知っている、そのことがわかる言葉だった。
「私達はそうしたことはしないです」
「そうだったんですか」
「はい、そうです」
その温和な笑顔で愛実に話す七生子だった。
「魔術部の部長は悪魔博士ですし」
「えっ、博士がこの部活の顧問なんですか」
「そうだったんですか」
「そうなんです。博士は他にも様々な研究会の顧問を掛け持ちされていますけれど」
七生子は博士の名を聞いて驚く二人にさらに話していく、二人もそれに乗っていく。
「魔術部の顧問でもあられるんですよ」
「それじゃあここの蔵書も」
「それで魔術のことも」
「全部博士に教えて頂いているものです」
「じゃあ先輩って博士のお弟子さんなんですか」
「そうなりますよね」
「そうですね、そうなりますね」
七生子はこのことをにこりと笑って自分から認めた。
「私も博士のお弟子さんですね」
「ううん、凄い縁ですね」
「私達も博士とは知り合いですけれど」
「まさか先輩もだなんて」
「思いませんでした」
「博士ってあれで結構社交的なのよ」
茉莉也も言って来た、茉莉也は部屋の中にある机の上にあるものを見ながら言うのだった。
「実はね」
「そういえば結構出歩いたりされてますね」
「色々なとこに知人がおられるみたいで」
だから世界中からあらゆる文献を取り寄せることも出来るのだ、人脈がなければそうしたことも出来るものではない。
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