FAIRY TAIL 真魂の鼠
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序章 出会い
第1話 旅立ち
前書き
FT友恋でお馴染みの紺碧の海ですっ!遂に始まりましたっ!紺碧の海の2作目がっ!こちらも目が飛び出るくらい駄作になると思いますので、覚悟を決めてからご覧下さい。このお話では、大魔道演舞編が終わった後の作者のオリジナル出来事であり、作者のオリキャラが主人公です。ちなみに1人で、男です。
それでは、記念すべき第1話・・・どうぞっ!
『プロローグ』
フィオーレ王国の一番端にある小さな村、リンドウ村。村の人口約100人という小さな村である。
村人達の6割は70歳以上の高齢者で、2割は40~60歳以上の農民で、残りの1割は10~20歳以上の子供と、10歳以下の子供である。
村人達は畑仕事をしながら、共に笑い合い、共に悲しみ合って暮らしていた。これは、そのリンドウ村に住む1人の少年の、大冒険の物語である―――――。
?「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
額から汗が流れ落ち、頬を伝う。
リンドウ村から列車で往復6時間かかる、漁業が盛んなハルジオンの街に行って、魚や貝が入った緑色の革製のバックを上下に揺らしながら、俺はやっとの思いで辿り着いた家のドアをガラガラと開ける。
?「母さ~ん!買ってきたぜ~!」
ドアを開け放ったのと同時に大声で叫ぶと、部屋の奥から薄汚れたピンク色のエプロンを身に着けた母さんが出て来た。
母「お帰りシン。いつも悪いねぇ~。」
シ「あんくらいの距離、もう慣れたっての。」
俺は服の袖で汗を拭いながら緑色の革製のバックを母さんに手渡すと、すぐに外に飛び出して、家の隅にある木製の桶を2つ掴み取り、家から1km程離れたところにあるリンドウ村唯一の井戸に向かって走り出した。
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シ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
水をたっぷり汲んだ桶を両手に持ち、水が桶から零れないよう、出来るだけ早足で家に向かう。家から井戸まで往復2時間。空は澄んだ水色から鮮やかな茜色に変わっていた。時間が経つのは、どうしてこんなに早いんだろうな?
いろんな家から夕飯の美味そうなにおいが漂う。グゥ~と唸る腹の虫の声を聞きながら、俺は家に向かって足を進める。そして、家のドアをガラガラと開ける。
シ「母さ~ん!水汲んできたぜ~!」
ドアを開け放ったのと同時に大声で叫ぶと、台所から薄汚れたピンク色のエプロンの裾で手を拭きながら母さんが出て来た。
母「お帰りシン。いつも悪いねぇ~。」
シ「母さん、それさっきも言ってたぞ。」
母「さっきって、もう2時間くらい前じゃないか。」
この村に住んでいると、どうも時間の感覚が鈍くなるんだよな~。
俺は風呂に汲んできた水を入れると、外に出て、薪に火を点け、竹の筒を使って風呂を沸かし始める。
シ「ふぅー、ふぅー、ふぅー、はぁ、はぁ、はぁ。」
額から流れる汗を拭いながら、俺は風呂を沸かす。あっつぅ~・・・
風呂を沸かすのに30分。
ようやく風呂を沸かし終えた俺は服の袖で汗を拭い、右肩を大きくぐるぐると回しながら家に戻ると、小さな木製のテーブルには2人前の夕飯が並んでいた。献立は、ふっくら炊き上がった真っ白なご飯と、昨日俺が買って来た牛肉と、畑で俺と母さんが一生懸命育てたキャベツの炒め物と、今日俺が買って来たあさりの味噌汁だ。グゥ~と、俺の腹の虫がまた唸る。
母「お疲れシン。さぁ、ご飯にしようか。」
シ「おぅ!」
俺は短く返事をすると、3秒ルールのようにものすごい速さで夕飯が乗った木製のテーブルを挟んで、母さんの向かい側に正座をした。
シ「いただきまぁ~すっ!」
手を合わせて食事前の挨拶をすると、ふっくら炊き上がったご飯と、牛肉とキャベツの炒め物を頬張る。
シ「ふぁあしゃん、ふはい。」
母「はいはい。口に食べ物を入れたまましゃべったらお行儀が悪いよ。」
シ「ふぁ~ひ。」
さて、かなり遅くなったがここで自己紹介をしよう。
俺の名前はシン・バンギ。ここ、リンドウ村に母さんと二人で暮らしている18歳の男だ。母さんの名前はリャナ・バンギ。51歳の主婦だ。えっ?父さんはいないのかって?実は、俺の父さんは、俺がまだ母さんのお腹の中にいる時に事故で死んだらしい。リンドウ村のナズナ山に筍を採りに行った時、過って崖から転落したんだってさ。だから、俺は父さんの顔も知らないまま、この村で18年間生きてきたんだ。母さんはそんな俺を、女手一つで18年間も育ててくれたんだ。感謝感謝だぜ。
家は貧しいけど、食べるものなら十分ある。だから、そんなに苦しい生活ではない。ただ、さっきみたいに他の街まで6時間や10時間もかかったり、井戸まで1kmも歩かなければならない。これが一番の悩みの種だ。でも俺は幼い頃からこういう生活を送ってきたからもう慣れっこなんだ。昔から心配性の母さんは未だに心配してるけど。俺的には、もう50歳を超えた母さんの方が心配なんだけどな・・・
ここまでの説明を簡単にまとめて言うと、俺は18歳のちょっと苦しい生活で育った男って訳だ。
んで、この物語の作者である紺碧の海によると、俺はどうやらこの物語の主人公らしい。自覚ねェんだけどな。
俺の茶碗に盛られたご飯が無くなったのと同時に、母さんがテーブルに箸を置いた。まだ母さんの茶碗にはふっくら炊き上がったご飯が残っていた。
シ「どうしたんだ母さん?具合でも悪いのか?」
母さんは首を左右に振る。
・・・という事は、またアレだな。俺はわざとらしく「はぁー」と大きなため息をついた。
シ「母さん、いつも言ってるだろ。“トップを目指す”のはまだ先でいいって。」
母「シン、お前はもう18歳なんだ。そろそろ“任務”を果たさなきゃ、“お釈迦様”に大変失礼だよ。」
たぶん、読者の皆には意味不明な会話だよな。今から今の会話の内容について出来るだけ詳しく説明しよう。
読者の皆は『十二支』って知ってるよな?古くから伝わる歴法の事だ。
そして、この世界には『十二支』の動物の血を持つ者が存在するんだ。我がバンギ家は、『十二支』の動物の1つである“子”―――つまりは“鼠”の血が流れているんだ。俺はバンギ家10代目の“子”の血が流れている人間なんだ。
そして、『十二支』の血が流れる10代目の“子”の人間―――つまりは俺は、この生涯を終えるまでにとある“任務”を果たさなきゃならないんだ。その“任務”はと言うと―――――
―――――『十二支』の中で、“トップを目指す”事。
これは“お釈迦様”という、仏教の神様の命令だから、絶対に逆らう事は出来ないんだ。その代わり、自分の生涯を終える=死ぬまでなら“トップを目指す”事はいつでもいいんだ。
母「今の『十二支』のトップは“辰”だよ。気を引き締めて戦うんだよ。」
シ「戦うって、まだ行くって決まった訳でも」
母「今決まった。シン、明日お前はこの家を出て、“任務”を果たす為に旅立つんだよ。」
シ「はいはい、そうですか・・・ってえぇぇぇぇぇっ!!?」
何時何分地球が何回回った時そんな事決まったんだよォ!!?
これが母さんの悪い癖だ。勝手に人の事を決めて、一度決めて事は絶対に止めない。全く、困ったものだ。だが、俺はこの母さんの悪い癖に18年間もつき合わされてきたんだ。俺だってそう簡単に言いなりになる訳が無いっ!
シ「俺が“任務”を果たす為にこの家を出たら、母さん独りぼっちになるんだぞ?」
母「そんな心配は無用だよ。この村には優しい人達がたくさんいるんだ。独りぼっちなんかじゃないんだよ。」
シ「・・・・・」
母「それに、女手一つでお前をここまで育て上げた、母さんなんだよ?侮ったらいけないさ。」
・・・俺は静かに両手を上げる。降参だ。さっきは強がってみたものの、恥ずかしい事にこの18年間、母さんと口喧嘩で勝った事が一度も無い・・・
母さんは年を取るに連れて、どんどん口が達者になっていくんだ。
母「決まりだね。それじゃあ、早速旅支度しないとね。」
母さんは茶碗のとっくに冷めた残りのご飯を平らげると、いつも夕飯が済んだら真っ先にやる皿洗いもそっち退けて、俺の青い革製のリュックサックにいろいろ詰め込み始めた。着替えやタオル、箸や寝袋、懐中電灯やお金などなど・・・用意周到の母さんが詰め込むと、リュックはあっという間にパンパンになった。
母「シンは風呂入って今日はもう寝なさい。」
シ「う・・うん・・・」
・・・母さんは寂しくないのか?
18年間、育ててきた我が子が1人旅立つの事を、何とも思わないのか?しかも、その後は母さん1人暮らしなんだぞ?
俺は男だが、正直言って寂しい。
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次の日の朝、俺の布団の横には昨日よりもパンパンに膨らんだ青い革製のリュックサックが置いてあった。中を見てみようと開けようとしたが、止めた。母さんが用意した荷物を開けたら、中から詰め込んだ物が雪崩のように飛び出して仕舞うのが後々大変だという事を思い出したからだ。
布団から起き上がると、寝巻き代わりの灰色のTシャツとベージュのハーフパンツを脱ぎ捨て、リュックサックの隣に置かれていた、真新しい白いTシャツに黒いベストを羽織り、深緑色のハーフパンツを穿く。最後に左手首にいつも肌身離さず身に着けている緑と赤茶色の石のブレスレットがあるかどうか確かめる。
このブレスレットは俺のある“能力”を抑える為の物で、父さんの形見でもあるんだ。
台所に行くと、母さんが大きなおにぎりを握っていた。既に5つも出来上がっているというのに、まだ作る気か・・・?
母「おはようシン。いよいよだね。」
シ「う、うん・・・」
母さんは鼻歌を歌いながら6つ目のおにぎりを握り始めた。
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俺は木製の靴箱から青と白のスニーカーを取り出す。以前母さんが、俺がいつ旅に出てもいいようにと買っておいた靴だ。新品のスニーカーに足を入れ、靴紐をしっかり結ぶ。
母「体には十分気をつけるんだよ。」
シ「それはお互い様だろ。」
俺は母さんからリュックサックを受け取ると背中に背負う。
母「それと・・・」
母さんは俺の左手首からそっと緑と赤茶色の石のブレスレットを外す。すると―――――
ボワワワワワァン。
俺の体が白い煙に包まれた。煙が晴れると、そこには俺ではなく・・・いや、俺なんだが、人間の姿ではなく、鼠の姿の俺が、自分の体よりもでかいリュックサックの上にいた。
そう、俺は“子”の血が流れている為、鼠に姿を変える事が出来るんだ。
このブレスレットは、その“能力”を抑える為、代々バンギ家に受け継がれている物なんだ。俺が鼠に姿を変える事が出来るのを知っているのは母さんだけ。リンドウ村の人達も、誰一人知らない。
シ「母さん!いきなりブレスレット外すなよっ!」
母「とにかく、無闇にこのブレスレットは外しちゃダメだからね。」
シ「無闇に外してるのは母さんじゃないかっ!」
母「これを外す時は、“トップを目指す”為に、『十二支』の動物と戦う時と、信頼出来る仲間の前にいる時だけだよ。」
シ「それは生まれてから何億回も聞いたよ。」
ため息混じりに言うと―――――
ボワワワワワァン。
また白い煙が俺を包み込む。煙が晴れると、俺は元の姿に戻っていた。しばらくすると、勝手に戻るんだ。だが、そのタイミングが一切一貫してないから曖昧で困るんだよなぁ・・・
俺はブレスレットを左手首に着け直す。そしてドアに手を掛けると、
シ「んじゃ、“任務”を果たす為に、行って来るぜ。」
母「必ず・・・必ず戻って来るんだよォ!」
母さんの顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
・・・やっぱり、寂しいんだな。俺は後ろを振り返らずに手だけを振ると、
シ「行って来まーーーすっ!」
家を・・・いや、リンドウ村から勢いよく飛び出した。
俺は“トップを目指す”という“任務”を果たす為、自分の故郷を旅立った。この旅が、俺をこんなにも強くしてくれるなんて、この時はまだ思ってもみなかった―――――。
後書き
記念すべき第1話終了ですっ!いかがだったでしょうか?この物語の主人公であるシンは、『十二支』の“子”の血を持つ者であり、“お釈迦様”の“トップを目指す”という“任務”を果たす為にさまざまな冒険をします。今回はナツ達は出て来ませんでしたが、ナツ達も心強いシンの仲間になるはずです。
余談ですが、皆さんは何年ですか?ちなみに作者は“辰”ですっ!
次回は“任務”を果たす為に旅立ったシンだが、いったいどこへ行ったらいいのか迷っていると、そこに現れたのは・・・!?
次回もお楽しみに~!
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