神器持ちの魔法使い
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ディアボロス
第09話 気が変わったから
一誠が悪魔になってしばらく。
小猫伝いに様子を聞くと、少し前にようやく契約取りの仕事をするようになったとのこと。
ただ、類は友を呼ぶということわざがあるように、一誠を喚ぶ相手が変人が占めているらしい。
御愁傷様、ドンマイなどの慰めの声をかけるしかない。
そんな中、悪魔として初めての危機に遭った。
喚ばれて来てみると、契約者は殺され、代わりにいたのははぐれエクソシスト。
名をフリード・セルゼンといい、人・人外関係なく手にかけ続けたために教会から追放、はぐれの烙印を押された人物。
ただ、実力は折り紙つきで、エクソシストの中でも天才と呼ばれた実力者。
そんな人物が一誠の眼前に現れた。
「で、そんな二人を覗き見している俺がいるわけで」
教会から離れた場所から覗く俺。
それにしてもフリード・セルゼンの口がこんなに汚いとは……って、それはともかく、どうしようか。
一誠を助けるかこのまま放置するか。
相手はエクソシストだし、やることには抵抗無い、というかやりたい。
けど、後々グレモリーさんに呼ばれるとか面倒臭いんだよな。
「ん?」
そうこう考えているうちに状況に変化が見られた。
フリード・セルゼンに光弾放つ銃を突きつけられる一誠の前に一人のシスターが。
「一誠をかばってる? ああ、そういや言ってたな、金髪のドジッ娘と知り合ったとかどうとか。じゃあそれがあの娘なのか」
何というか、保護欲の駆り立てられるような娘だな。
大概ああいう娘は重い過去だったり、何らかの不幸を持ってるってなんかの小説に書いてた。
「しゃあない。助けるまではいかずとも時間稼ぎくらいはしておくか。情愛の深きグレモリーさんが来ないはずない。接近しているカラスで遊んでいるうちに回収するだろうし。ま、一誠も死にはしないだろ」
神器の能力で一誠の場面から堕天使へと切り替える。
「三人か。とりあえずは」
手元で複数の魔方陣を展開させると、同じものが画面越しに現れる。
そして、
『な、なんなのよ、コレはッ!?』
堕天使三人の行く手を塞ぐように魔力弾の弾幕が敷かれた。
『レイナーレさまっ、囲まれました!』
堕天使の一人がそう叫ぶ。
弾幕は一面だけでなく全面。
まるで鳥を閉じ込める鳥籠のように展開されている。
「籠目。威力や弾幕の数を結構落としているからすぐに抜かれるか?」
警戒し過ぎて動きが止まって時間を稼げればよし。
突破しようとして怪我を負わせつつ時間を稼げれば尚のことよし。
とはいえ、軽傷で強行突破されるかもだが……
「まあ、それもやつらがそれなりの実力を持っていればの話だが」
◇―――――――――◇
結果だけ言うと、一誠はグレモリーさんたちに無事回収された。
はぐれエクソシストが依頼先にいるとは想定外だったらしく、眷族総出で来た。
フリード・ヒルゼンに牽制していたが、堕天使の接近を感知し、早々に帰っていった。
ただ、一誠はアーシアと呼ぶシスターへ必死にてを伸ばそうとする姿、シスターの一誠が助かったという安堵ともう会えないという悲しみで涙を溜めたその顔が頭から離れない。
「はあ、平穏を望んでいるからこそ矛盾するな。久しぶりに一誠があんな顔を見るんだ。一応、あいつの友人としてあのシスターを助けますかね。さっき放置した俺が言えることではないけど」
自分の甘さや矛盾する行動に苦笑する。
「ま、誘拐といえば神隠しだよな。となれば―――八雲立つ紫」
手元に一冊の書物が現れる。
「神隠しの主犯」
幼き頃に母親の書いた物語に登場した一人の妖怪。
口にしたのはその中に描かれた者たちの内の一人の二つ名。
「さて、まだ悪魔祓いだけ。一瞬でも意識が彼女から離れればこっちのもの」
目の前と悪魔祓いの背後の境界を繋ぎ、魔力弾を放つ。
着弾の直前、それに気付いた悪魔祓いは驚異の身体能力でギリギリのところで避けた。
そして何か言っているが、意識完全に外れ、視界からシスターをが消え、その隙ができた。
境界がシスターを呑みこんだ。
それは一瞬。
悪魔祓いが気付き、振り返った時にはすでにその場には誰もいなくなっていた。
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