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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百話:船上で過ごす夜

「あ、ヘンリー。来たんだ、やっぱ」
「よくも間に合ったものでござるな」
「ピキー!」
『ヘンリー!きた!』

 船室に入った私とヘンリーを迎えた、仲間たちの第一声。

 なんですか、予想通りですか。
 そうなると、思ってたわー。わかってたわー。みたいな。

「素直に置いてかれるわけないと思ったんだよなー。だってヘンリーだし」
「とは言え、出港に間に合わねばそれまでであった所。ドーラ様の工作もあったゆえ、逃げ切れるかとも思うたが」
「ピキー!」
『ドーラ!ヘンリー!いっしょ!』

 やはり、色々とお見通しですか。
 ヘンリーの行動とか、私の工作とか。

 船出を乗り切ってもどっかで追い付かれる可能性もまだあったんだが、それは私とヘンリーにしかわからないところだからね!

「マリアさんが教えてくれたからな。ドーラの様子がおかしかったって。話を切り上げて戻れば居ないし、俺もこうなるかもとは思ってたから。デールは城内を捜索させてたが、俺はすぐ出てきた」

 くっ……!
 マリアさんか!
 マリアさんの仕業か!
 女の勘、侮れない……!
 そして相手がマリアさんでは、怒るに怒れない……!!

 ……まあ、知らないところで無茶して死なれるよりは、良かったと思おう!
 マリアさんに免じて!

 コドランやスラリンと話していたピエールが、一段落ついたところで私に向き直ります。

「……ドーラ様。宜しいので?もしも、意に沿わぬことであれば」
「……大丈夫。当面、一緒に行く」
「そうにござりますか。ならば、拙者に異論は有りませぬ」

 連れて入ってきた時点で、答えはわかってたようなものだろうから。
 特に食い下がることも無く、あっさり納得してくれましたが。

 ……私の意に沿わぬことであれば、どうするつもりだったんだ。
 まさか、斬り捨てるとか?

 ……やりそう!
 すごく、やりそう!!

「……ピエール。あのね?私は、ヘンリーにもみんなにも、死んで欲しくは無いからね?」
「そうにござりましょうとも。拙者とてドーラ様のためならば、何時でも死ぬ覚悟はあり申すが。ドーラ様のためなればこそ、簡単に命を捨てるつもりは有りませぬ。ドーラ様のお認めになったお仲間の命も、同様に」
「……そう。なら、いいんだけど」
()りとて。最も優先すべきは、あくまでドーラ様にござりますれば。意に沿わぬことを強いる輩であれば、排除することに(いささ)かの躊躇いも有りませぬ」

 最後の一文を、ヘンリーにチラリと目をやって言い終えるピエール。


 …………ええと。

 とりあえず、ルート回避にピエールを利用した日には、バッドエンドになりそうなのはわかった。
 間違って焚き付けたりしないように、気を付けよう。

 と、冷や汗を流しながら決意を固める私の横で、ヘンリーが気にした風も無く返します。

「大丈夫だ。ドーラが本気で嫌がるようなことは、しない」
「そうにござりますか。ならば、拙者の口を挟む余地は有りませぬな」

 ピエールから僅かに滲んでいた威圧感が消え、威圧されていたわけでも無い私の緊張が解けます。


 ……ああ、疲れた。

 ラインハットのお城で戦って、馬車で爆走しながら戦って。
 気が抜けたところでヘンリーの追撃を受けて、今のコレで。

 肉体的にも精神的にも、かなり疲れた。

「……みんな。私、ちょっと。……寝るね」
「は。お休みなさいませ。夕食には、お起こしします」
「ピエールは、大丈夫なの?」
「スライムナイトたるもの、体を休ませるのに必ずしも睡眠を必要とは致しませぬ。ドーラ様をお待ちする間で、かなり疲れも取れましたゆえ。全く、問題有りませぬ」
「そうなんだ。すごいね。じゃあ悪いけど、よろしく」
「はっ」

 スライムナイトだからっていうか、ピエールだからじゃないだろうか。
 散々薙ぎ倒してきた雑魚スライムナイトが、そこまでのレベルに達しているとは到底思えない。

 でもまあ、追求しても仕方ないし。
 ピエールさんすごいです。ってことで、まあいいか。

 と、いい加減な納得の仕方で誤魔化して、自分も含めて全員にキレイキレイして、船室のベッドで休みます。
 ベッドが四つしか無いので添い寝のチャンス、なんてことはもちろん許されず、私も添い寝の権利を勝ち取るために戦う気力も無く。
 スラリンとコドランがひとつのベッドで微笑ましい光景を作り出すのにニヤけつつ、あっという間に眠りに落ちて。


 ピエールに起こされて、夕食を取りに食堂に向かいます。

 到着早々に船長さんに詰め寄って赤面させたり、甲板でヘンリーを押し倒した(ように見えていた)りしたせいか、男装継続中にも関わらず船員さんたちの熱い視線が痛かったのですが。

 すかさず殺気と威圧感を放ったヘンリーとピエールの働きによりあっという間に視線が逸らされて、蜘蛛の子を散らすように船員さんたちが離れていきます。

 ……いいなあ、威圧。
 やっぱり、練習しようかなあ。

 私だって守る立場なら、自然にできると思うんだけど。
 そういう意味で自分が狙われてる状況だと、どうもなんていうか。
 下手するとご褒美と受け取られて余計に深く引っ掛けてしまいそうで、どうにも気が進まない。

 なんて考えてたのが、バレたのかどうなのか。

「……ドーラ。いいから、守られてろ」
「左様。あのような輩、ドーラ様のお手を煩わせるまでも有りませぬ」

 うーん。
 最終的に自分でなんとかできるようになりたいんだけど、その辺上手くこなすにはやっぱり踏んだ場数が足りないし。
 ヘンリーはともかくピエールを頼るのに何も問題は無いし、いる以上はヘンリーだって同じように頼っても、まあいいのか?
 いやいや、やっぱりそれは

「ドーラ。難しく考えなくていいから。俺が守りたいから、俺はお前を守る。お前がどう思っても、そこは関係無い」
「……ドーラ様。意に沿わぬのであれば」
「大丈夫、わかった!お願いします!」

 ちょ、バッドエンド!
 バッドエンドは、いかんよ!
 可能な範囲で、できる限りみんな幸せに!
 偽善でもいい、ギリギリまで粘って頑張る!
 私は、諦めない!!


 なんてこともありつつ夕食を済ませ。
 本来は一般客には使わせないというお風呂を、船長さんのご厚意によりお借りします。

「お客さんが少ないからって、特別に使わせてくれるなんて!内緒でって言われたけど、良かったのかな?私たちだけ」

 例によって例の如く、仲間全員に付き添われながらお風呂に向かいます。

「……いいって言うんだから、いいんだろ。……あのスケベオヤジ」
「え?なんか言った?」

 なんかボソッと付け足してた気がするが、聞こえなかった。

「いや、なんでもない。問題無いから、気にするな」
「左様。問題は全て排除し終えておりますゆえ、ドーラ様は何もお気になさりませぬよう」
「そう。でも昨日は修道院だったから、お風呂入れなかったし。船で入れると思ってなかったから、嬉しいなー!いい人だよね、船長さん!」
「……そうだな」
「そうにござりますな。もうそう呼んでも、差し支え無いでしょう」
「後でまた、お礼言ってこよっかなー?寝る前に」
「やめろ」
「不要にござります」
「そう?……そうだよね、迷惑だよね、遅い時間に来られても。なら、明日」
「だからやめろ」
「礼ならば、拙者らが存分に済ませておりますゆえ。この上ドーラ様が向かわれても、(かえ)って恐縮するばかりでありましょう。不要にござります」

 なんかちょいちょい、気になる表現があった気がするが。
 そんなことより、お風呂、お風呂!

「そっか!ありがとね、みんな!じゃあ、行ってくるね!」
「待て。先に中を確かめる」
「そうにござりますな。この期に及んで妙な真似はせぬとは思いますが、念には念を入れねば」
「……確かめる?」
「……よし、問題無いな。ドーラ、いいぞ」
「ドーラ様、ごゆっくり」
「……ありがとう?……行ってくる」

 盗撮とか、そんなことが可能な技術は無かったと思うけれども。
 なんだかわからないが、問題無いならまあいいか。

 少しは休んで回復したけど、やっぱりまだ疲れてるし。
 早く入って、早く寝よう。


 ということで、普段よりは短めに入浴を済ませ。
 いつもならまた全員に部屋まで送り届けられるところを、なぜかヘンリーが一人で浴室前に残り、私を送り届けた後にスラリンとコドランが引き返して。

 三人がお風呂にいる間、ピエールは一人部屋の前に立ちはだかって警戒にあたり。
 戻ってきた三人と入れ替わるようにピエールがお風呂に向かうという、よくわからない対応で全員が入浴を済ませ、その日は休みます。


 ……一応、私は男と認識されてると思うんだけど。
 あの妙な警戒ぶりは、なんだったのか。
 男でも油断は出来ないとは言え、私を守るだけならちょっとよくわからんところが……。

 ……まあ、いいか!
 どうでもいいことで頭を悩ませてないで、疲れてるんだから早く寝よう! 
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