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八条学園怪異譚

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第四十四話 学園の魔女その四

「それでも怪物はね」
「本当はいないわよね」
「ええ。けれどこれじゃあ」
「怪物みたいよね」
「そう見えるでしょ」
「巨大な蜘蛛?かしら」
「蠅じゃないの?」
 二人で話す、とにかく何が何かわからなかった。
 それで茉莉也もだ、こう二人に言うのだった。
「こういう絵を描く人なのよ」
「残念な人なんですね、本当に」
「絵は」
「ご本人に会ってびっくりしないでね」
 茉莉也はこのことに釘を刺した。
「そのこともね」
「どんな人か一体」
「気になりますね」
「今からお呼びするから」
 茉莉也は自分の店の携帯を出した、そしてだった。
 メールを入れるとすぐにだった、背の高い美人が来た。
 少し茶色がかった髪を首の付け根の高さで切り揃えている、澄んだアーモンド型の少し吊り目になった瞳に細い綺麗なカーブを描いた眉、薄く横に大きいピンクの唇である、鼻は見事な高さで細面によく合っている。顎は少し出ているが整った顔立ちには何の遜色もない。
 白く綺麗な肌を持ち一七〇の長身である、スタイルは脚も長く全体的にモデルを思わせるまでである。
 その彼女を見てだ、まずは愛実が言った。
「ええと、この方って」
「そうよね」
 聖花も応える、二人共驚いた顔になっている。
「モデルさんかしら」
「凄いスタイルよね」
「何ていうかね」
「こんな綺麗な人だなんて」
「ほら、びっくりしたでしょ」
 茉莉也は二人にどうだという顔で問うた。
「この人がその魔女の人なのよ」
「ううん、まさかこんな美人なんて」
「想像してなかったです」
「そんな、褒められると困ります」
 硬質で綺麗な声がしてきた、その美人からの声である。
「私別に。青木さんもそんなこと言わないで頂けますか?」
「えっ、青木さん?」
「先輩のこと?」
「はい、私はいつも青木さんってお呼びしています」
 こう丁寧に言う美人だった。
「はじめまして」
「あっ、はい」
「宜しく御願いします」
 三人はお互いに頭を深々と下げた、美人はその上で自分の名を名乗った。その名前はというと。
「小林七生子といいます」
「ええと、小林先輩ですか」
「そうです、八条大学の芸術学部声楽科に在籍させてもらっていまして」
 そうしてだというのだ。
「声域はソプラノです」
「ソプラノって確か」
 愛実はこの単語を聞いてこう言った。
「女の人の声で一番高い」
「はい、そうです。リリコからドラマティコまで出せます」
「リリコ?ドラマティコ?」
「あっ、ソプラノっていっても声域に幅があるの」
 七生子の言葉に首を傾げる愛実だったがここでも聖花が話す。
「リリコは高くてドラマティコは低いの」
「そうなの」
「声域って細かいのよ」
「ううん、そうなのね」
「そう、それにしてもリリコからドラマティコまで出せるなんて」
 聖花は七生子を驚いた顔で見ながら話した。
「凄い人ね」
「そうなの」
「先輩は声楽科のホープなのよ」
 茉莉也が笑顔で話す。 
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