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久遠の神話

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第五十五話 刃の使い方その十二

「その計画が変わりました」
「アクシデントは世の中に付きものだね」
「ではまた」
 王との戦いは別の機会にすることにして去ろうとするスペンサーだった。こうして場所に残るのは王と加藤だけになる筈だった。
 だがここで三人の前にスフィンクスが現れた、智恵の怪物は三人の間に立ちそこで彼等に対してこう告げたのだった。
「待つのです」
「ああ、あんたか」
 加藤はスフィンクスを見て鋭い目を向けた。
「あんたは戦わない怪物だったな」
「如何にも」
「なら用はない」
 ただひたすら戦いたい加藤にとってはだった。
「帰るんだな」
「ここに来た理由は聞かないというのですね」
「あっても俺には関係のないことだ」
 戦わない、それだけでそうなることだった。
「なら聞くに値しない」
「率直な言葉ね。けれどこちらもそういう訳にはいかないのよ」
「どうしても居座るのなら俺は帰るが」
「戦えるとしたら帰るかしら」
 まるで加藤のことを全て分かっているかの様に返すスフィンクスだった。
「その場合は」
「戦えるのか」
「ここにまた怪物が出るわ」
「では残ろうか」
 加藤はすぐにそちらに考えをやった。
「戦えるのならな」
「貴方達もかしら」
 スフィンクスはスペンサーと王にも問うた。
「戦うことになるけれど残るのかしら」
「怪物を倒したらそれだけ黄金も入るからね」
 王はこのことから考えて言う。
「それじゃあね」
「戦うというのね」
「ハイリスクハイリターンの収入だね」
 ここでも割り切っている王だった。
「それなら乗るよ」
「そうですか」
「さて、黄金が多くあればいいね」
「わかりました。では」
「私も残ります」 
 王とスペンサーは同時に言った。
「その怪物を倒すよ」
「そうさせてもらいます」
「軍人さんはお金には興味がないよね」
「それ程は」
 スペンサーは実際にそうだと王に返す。
「給与の分だけで十分です」
「軍人さんの給料は大したことがないと思うけれど」
 それが例え将校であってもだ。
「違うかな、それは」
「その通りですが各種の手当がつきますので」
「収入はそれなりにあるんだね」
「はい、結構」
 実際に多いというのだ。
「他の公務員に比べては」
「命を賭ける仕事だからそれも当然かな」
「合衆国は軍人の権利の保護には熱心です」
 給与や待遇、福利厚生だけではない。退職してからの職の斡旋についても万全のフォローがあるのだ。
「非常に」
「見入りのいい仕事みたいだね、アメリカでは」
「貴国、中国でもそうだと思いますが」
「あっ、政治的な話になるからね」
 王の口調がここで変わった。
「それはしないよ」
「それが返答と思っていいでしょうか」
「それは私にはどうしようも出来ないからね。とはいって言わないよ」
 処せ術としての言葉だった。 
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