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久遠の神話

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第五十五話 刃の使い方その九

「みたいというかそのものかもね」
「それでもいい。俺は構わない」
 実際にこう返すのだった。
「戦いは楽しむものだからな」
「それでか」
「うん、じゃあそっちの美国の軍人さんだね」
「そうです」
「組まないかな」
 スペンサーに軽い口調で言う。
「この戦いはね」
「一時的な同盟ですか」
「うん、それでどうかな」
「そうですね」
 スペンサーは王の提案にまずは一呼吸置いた、そのうえで彼に対して静かな調子でこう言ったのだった。
「悪い条件ではないですね」
「お互い敵は少ない方がいいからね」
「今のところは」
 スペンサーはこの言葉を付け加えた。
「そうですね」
「何か思うところいがあるのかな」
「あるといえばあります」
 スペンサーもこのことを否定しない。
「何しろ貴方とは初対面ですし」
「信用できない」
「はい、そうです」
「まあそれを言えば私もね」
 王自身もこう言う。
「貴方とは初対面でやがては倒す相手だしね」
「だからですね」
「信用は出来ないね」
 実際にこう言うのだった。
「正直なところね」
「お互いにそうですね」
「うん、手を結ぶにしても一時的だよ」
 それに過ぎないというのだ。
「あくまでね」
「そういうことですね。しかし」
「手を結んで悪いことじゃないと思うけれど」
「いえ、少し思いました」
 ここでスペンサーの目が動いた、そのうえでの言葉だった。
「確かに私達は今は共闘します」
「そのうえで目の前にいる彼を倒すんだよ」
 王は加藤を見てスペンサーに答える。
「いいじゃないか」
「その後ですね」
「その後?」
「彼を倒したとします」
 スペンサーも加藤を見ながら王に言う。
「その後です」
「その後二人になって」
「後はどうなるかです」
 こう言ったのである。
「私は貴方よりも遥かに力を使っています」
「連戦になるからね」
「その力を使い果たした私に貴方がどうするかです」
「流石軍人さんだね、わかるんだね」
「そうです、その時はですね」
「私次第だね」
 明るく言う王だった。
「私の力が残っていれば」
「その時にですね」
「倒すことも考えているよ」
 王はここでも明るく言い切った。
「倒せるうちにね」
「隠されないのですね」
「隠してもわかるよね」
「はい」
 スペンサーもはっきりと返す。
「そうしたことは」
「軍人としての読みですか」
「戦術、そして戦略です」
 そこから考えてわかることだった、王は戦い最後の一人まで生き残ることを考えている、それならばだった。 
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