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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第16話 第二次アルフォルト星域会戦


宇宙暦808年/帝国暦499年 7月21日 6時2分。
ロアキアへの援軍として10000隻の兵力で惑星ティオジアを進発したバドエル艦隊は、途中イグディアスとオルデランの艦隊5000隻(各2500隻)を加え、アルフォルト星域に到着した。

アルフォルト星域には既にロアキア軍28000隻と同じティオジア軍のジャラール艦隊11000隻が遊弋しており、バドエル艦隊が加わったことでその総数は54000隻と大所帯である。

銀河帝国軍がアルフォルト星域に侵入してきたのは、バドエル艦隊の到着から4時間後。
6個艦隊73000隻という大軍であった。

ロアキア・ティオジア連合軍の布陣は、左翼にジャラール艦隊11000隻。
右翼にバドエル艦隊15000隻。
中央のオリアス艦隊は20000隻と群を抜いて多く、予備兵力としてメルボド艦隊8000隻が後方に控えている。

対する銀河帝国軍の布陣は、左翼にガーシュイン艦隊15000隻。
右翼にクナップシュタイン艦隊12000隻。
中央にオットー艦隊15000隻とゴシェット艦隊15000隻。
カルナップ艦隊8000隻とマリナ艦隊8000隻は予備兵力として後方で待機。

ジリジリと距離を詰めた両軍は、互いを射程に捉えると砲火の応酬を開始した。


開始早々、連合軍は銀河帝国軍を激しく攻め立てる。
艦艇数で下回る彼らにとって、戦いの主導権はなんとしても取る必要があったのだ。

しかし、そう簡単に行くほど甘くはない。
速攻での攻勢に銀河帝国軍は冷静に対処し、開戦後2時間が経過しても連合軍は依然その手に主導権を握ってはいなかった。

だが、ここで戦局は一気に動く。

バドエル艦隊である。
2時間の攻撃でバドエル艦隊はガーシュイン艦隊に三本の楔を撃ち込むことに成功しており、準備が完了すると先程を上回る勢いで攻勢を仕掛けたのだ。

ガーシュイン艦隊の傷口(楔を撃ち込まれた部分)が大きくなり、そこから一気に崩壊する。
前線の崩壊が早過ぎたためガーシュイン上級大将の指示が追い付かず、結果としてバドエル艦隊の跳梁を許してしまう。

バドエルは見事な艦隊運動と突撃でガーシュイン艦隊を切り崩すと、途中で方向を変え、ゴシェット艦隊に突撃。
予想外のところから襲撃を受けたゴシェット艦隊は大混乱に陥った。

これを見たオリアスは、攻撃をオットー艦隊のみに絞る。

「今が好機だ、予備も投入して一気に突き崩せ!」

元より、オリアス艦隊の方がオットー艦隊よりも兵力は上である。
そこに予備兵力8000隻が加われば、オットー艦隊だけで止められるものではなかった。

ジャラール艦隊も一部の部隊をクナップシュタイン艦隊の側面に展開させることに成功し、戦いを優位に進めつつあった。

・・・・・

戦況がまたも変化したのは、13時27分のことである。

「ふふ、残念ながらそうはいかないのよね」

連合軍が総攻撃をかけている間にマリナは艦隊を大きく迂回させ、連合軍の背後に回り込んでいた。
また、混乱を収拾したガーシュイン艦隊がバドエル艦隊への攻撃を再開し、カルナップ艦隊もクナップシュタイン艦隊への増援に駆けつける。

「突撃だ! このまま敵を殲滅しろ!」

カルナップ大将の怒号の下、カルナップ艦隊はジャラール艦隊に突撃を開始する。

「カルナップ提督か、ありがたい。今の内に退いて態勢を立て直すんだ」

元々、ジャラール艦隊とクナップシュタイン艦隊は数において互角である。
そこにカルナップ艦隊8000が加わった今、ジャラール艦隊は兵力において大幅に劣勢となった。

オリアス艦隊は優勢とはいえ背後を取られた状態であるし、バドエル艦隊も2倍の敵と戦っているため、いつまでも優勢ではいられない。
時が経つにつれ銀河帝国軍が態勢を立て直せば、戦況は一瞬で逆転するだろう。
ここにきて、兵力差という銀河帝国軍の数的優位が効果を表し出していた。

無論、連合軍とてそのようなことは分かっている。
バドエル艦隊の旗艦ザッフィーロでもそれに関する会話が行われていた。

「閣下、このまま悪戯に時間を消費すれば我々は窮地に陥りますぞ」

「右翼の防備を固めながらゴシェット艦隊への攻撃を続行しろ。あと少しで敵は崩れる」

バドエルは、ガーシュイン艦隊からの攻撃をユリアヌス分艦隊に防がせながらひたすらにゴシェット艦隊を攻撃し、崩れるのを待った。

そして、遂にその時は来た。

「ゴシェット艦隊、崩れました!」

「オリアス艦隊もオットー艦隊を崩した模様、敵中央は全面崩壊です!」

「よし、ここは突破だ。全艦突入!」

オリアス、バドエル艦隊は銀河帝国軍の中央へと突入する。

マリナ艦隊が追い縋ってきたものの味方との同士討ちを恐れて無理な攻撃は出来ず、結果としてオリアス、バドエル艦隊は中央突破に成功した。

一方、中央突破を許してしまった銀河帝国軍は窮地に陥っていた。

「敵に中央を突破されました!」

「敵艦隊、後方で左右に展開」

「くっ…………。全艦180°回頭、反転して敵の攻撃に備えろ!」

「で、ですが敵前回頭は」

「我々が前進して逃れれば、敵は孤立したクナップシュタイン、カルナップ艦隊を袋叩きにするだろう。ここは堪えるしかないのだ!!」

それは苦渋の決断であった。
何も好んで敵前回頭(それも180°の)などしたいわけではない。
彼らには(クナップシュタイン、カルナップ両艦隊の)見殺しか敵前回頭による大損害かの2択しか選択肢は無かったのである。

「チャンスだ! 戦闘艇を出して一気にたたみかけろ!」

銀河帝国軍の180°回頭を見たバドエルは即座にそう叫ぶ。

「(これで決着をつけれればいいが……まず無理だろうな)」

バドエルの予想通り、オットー、ゴシェット、ガーシュインの3個艦隊は少なくない損害を出しながらも全軍の反転に成功。
兵力が元々多かったのと、オリアス、バドエル艦隊も万全の態勢で無かった(左右に展開するため回頭中の部隊が多々あった)のが幸いした。

だが……

「頭を完全に抑えられました!」

オリアス、バドエルは銀河帝国軍の先頭に砲火を集中させ、銀河帝国軍の頭を完全に抑えた。

「反撃だ、撃ち返せ!」

「このままで終われるものか!!」

銀河帝国軍も負けじと反撃する。

この段階で両者の兵力は拮抗していたが、銀河帝国軍は先の反転中に中級指揮官が何名も戦死していたため、指揮系統において連合軍よりも脆弱であった。

そして、その点を突かぬオリアスとバドエルではない。
指揮系統の脆弱なところをピンポイントで砲撃し、傷口の穴を徐々に広めていく。

このまま連合軍が押し切るか……と誰もが思った、その時。

「天頂方向より敵艦隊急襲!」

「何!?」

それはジャラール艦隊と交戦中である筈のクナップシュタイン艦隊であった。

なぜクナップシュタイン艦隊がこの場にいるのかという疑問については、連合軍の中央突破後、マリナ艦隊はそのまま本隊に合流せずジャラール艦隊の後背を突いたことに端を発している。
これによってジャラール艦隊はカルナップ、マリナ両艦隊を相手取ることになり、態勢の立て直しを終えたクナップシュタインはその場を両艦隊に任せて本隊の救援に向かったのであった。

「レオーネ・バドエルゥゥゥゥゥゥ!!」

劣勢な味方を救い、また亡きグリルパルツァーの仇を討たんとクナップシュタインはバドエル艦隊に突撃する。

「こいつはヤバイな……」

「ユリアヌス隊を回しますか?」

「ああ、そうしてくれ。ラミンの分艦隊だけじゃあれを防ぐのは厳しいだろうからな」

「しかし、それでも一時凌ぎにしかならないでしょう。敵の数が多すぎます」

「分かっている、カルツ隊に例の作戦を実行するよう伝えてくれ」

「例の作戦というと……アルファーニ宰相閣下が考えられた作戦のことですか?」

「そうだ、この状況を打開するにはそれしかねえ」

バドエルの命令から15分後。
突如、銀河帝国軍の背後に10000隻規模の艦隊反応が現れる。

「後方に敵艦隊反応!!」

銀河帝国軍の艦隊司令官たちは、それが欺瞞であると即座に見抜いた。
だが、全軍に与えた動揺は大きかった。

その隙を、バドエルたちは逃さない。

「よし、敵は動揺しているぞ。全軍、敵を総攻撃だ!」

連合軍は総攻撃を掛ける。

「巡航艦ハートブルム轟沈」

「戦艦モンステント、出力70%に低下」

「戦艦ヤートグルフ撃沈、ハルミット提督戦死」

オットー艦隊の旗艦パンター・ティーゲルの艦橋には、味方の損害が引っ切り無しに入ってくる。

「ガーシュイン艦隊旗艦、ノーチラスが大破しました!」

この報に艦橋の全員が凍りつく。
もしガーシュイン上級大将が戦死していれば、ガーシュイン艦隊の崩壊は避けられず連鎖的に全軍が壊滅してしまう。

「戦艦トロイツェルより入電。ノーチラス航行不能のため、旗艦を戦艦トロイツェルに変更。移乗したガーシュイン上級大将が引き続き指揮を執られるとのことです」

「そうか、最悪は免れたな」

不幸中の幸いで、ガーシュイン上級大将の無事が確認された。
これで、劣勢ながらもガーシュイン艦隊はまだ統一した艦隊行動を行える。

しかしホッとしたのも束の間、またもや凶報が舞い込んでくる。

「戦艦マッケンゼン被弾!」

今度はゴシェット艦隊旗艦のマッケンゼンである。

「ゴシェット上級大将の安否は?」

「重傷を負われた模様。現在、副司令官のマイホーファー大将が指揮を執っています」

「ゴシェットが重傷か……これは耐え切れんかもしれんな」

現在、銀河帝国軍は窮地にあった。
味方の艦艇は次々と破壊され、艦隊司令官の重傷と艦隊旗艦の撃沈により士気は地に落ちている。

それに中級指揮官もかなりの数が戦死した。
これでは反撃など夢のまた夢だ。

「ん? これは……味方だ、味方の援軍です!」

18時49分。
ジャラール艦隊を追い払ったマリナ、カルナップの両艦隊が援軍に駆けつけた。

「撤退の好機だ。敵陣を強行突破し、そのままロアキアへ撤退する!」

銀河帝国軍は力を振り絞って最後の攻勢に出る。

「敵軍、大攻勢に出てきます」

「無理に食い止めようとするな。適度に道を空けて逃がしてやれ」

「よろしいのですか?」

「ああ、立ち塞がってもどうせ撃ち破られるだろうからな。損害は少ない方がいい」


こうして、第二次アルフォルト星域会戦は終了した。

ロアキア・ティオジア連合軍の損失艦艇22000隻。
銀河帝国軍の損失艦艇32000隻。

双方合わせて54000隻もの艦が失われるという大激戦であった。





==今日のアドルフ==

「怖い夢を見たんだ……いつの間にか触手になってて、仕方無いから目の前にいる女でも犯そうと思ったら、いきなり猛烈な炎で燃やされる夢だった」

「陛下、その夢は女性に対するセクハラです。ですので、今後そのような夢を見ることは禁止します」

「えっ!? いや、夢だぞ。自分の意思でどうこうできるもんじゃ無いんだぞ!」

「禁止です」

「だがっ!」

「禁止です」

「…………」

銀河帝国皇帝アドルフ・ゴールデンバウム。
もはや夢すら自由に見れなくなっていた。
 
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