我が剣は愛する者の為に
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小覇王の母親
村を出た俺と丁原、もとい師匠は馬を引き連れながら荒野を歩いていた。
ちなみに師匠には俺の真名を教えている。
命の恩人でもあり、これからの師匠でもあるのだからと思い、俺は真名を教えた。
師匠もそれに伴い、真名を教えてくれた。
師匠の真名は烈という真名らしい。
俺はすぐに修行でも始まるのかと思ったが、師匠が歩きながら今後について説明してくれた。
「修業の前にお前には世界を見て回ってもらいたいと思っている。」
「世界ですか?」
いきなり話が大きくなったので、俺は動揺を隠せないでいた。
「縁が純粋に力だけを求めるというのなら、今すぐにでも修業を始める。
だがな、私から言わせてもらうと、この世の中が今どうなっているのかを知ってもらいたい。
もし、力を手に入れた時、その力をどう扱うのかを考えてもらう為に。」
師匠の言葉を聞いて、俺は母さんの言っていた言葉を思い出した。
何でも母さんは街に出向いた時に、その街の様子などを教えてくれた。
その町は見た限り普通の町なのだが、路地などには貧困に苦しむ子供の姿など見えたらしい。
今の時代、漢王朝がこの国をしっかりと政治などをして整えていかないといけないのに、それがまるっきりできていないらしい。
さらには、上が腐っているのか税金を取るだけ取り、その上で何もしないという。
それが影響なのか、この町以外でも様々問題が勃発しているらしい。
今はそれほど事が大きくなっていない。
だが、いずれそう遠くない未来に漢王朝の時代に終わりが来ると言っていた。
師匠が言いたいのはそういうのをしっかりと自分の目で見て判断して、そしてこの世界で何をしたいのかを見つけさせるためだろう。
俺が考えていると師匠は声をかけてくる。
「どうだ、縁。
これからどうするかは、お前が決めてくれ。」
「師匠の言う通りします。
まずはこの世界を見て回って、それから修行しても遅くはないと思います。」
俺の言葉を聞くと、師匠は笑みを浮かべる。
師匠は世界を見回るついでに知人に会いに行くということになり、荊州南陽に向かう事になった。
三国志が好きな俺はその地名の名前を聞いてピン、ときた。
もしかして孫策に会いに行くだろうか?
でも、愛紗と余り歳が変わらないので、孫策も小さい筈だ。
となるとその親の孫堅に会いに行くのだろうか?
だが、時代的にも人物的にも師匠と孫堅に接点はないはずだ。
そんな事を言ったら俺の村に師匠が来たこと、俺が関羽の義理ではあるが兄である事。
ここら辺から結構、俺の知っている三国志ではなくなっている、
なので、あまり三国志の知識を持ち出すと混乱しそうなので、そこら辺については考えないでおく。
町などで食料を買いながら、荒野を歩き続ける。
師匠は宿には泊まるのは滅多にない。
それこそ、雨などの天候くらいで泊まる感じだ。
何でも、自然と一体になって寝食をすれば氣が落ち着いて体に良いらしい。
氣というのは人間の体に流れるエネルギーらしい。
この時代では氣を扱う者がいるらしく、師匠もある程度なら操る事ができるらしい。
俺はその話を聞いた時、ドラ○ンボールを一番に想像した。
もしかしたら、氣をマスターしたら空を飛べたりするのか?
その夜、たき火を挟んで向こうにいる師匠に、結構真剣な表情で聞いた。
「師匠。」
「何だ?」
きのこなどを木の棒でくし刺したのをたき火であぶっている。
そのきのこが焼けているのか確認しながら、俺の話を聞いてくれている。
「氣を扱える事ができたら、空を飛べますか?」
その言葉を聞いて師匠の手がピタリ、と止まる。
そして、ゆっくりと俺の顔を見つめる。
あっ、この顔。
絶対に俺を馬鹿にしている。
何を言っているんだ、こいつは?、と言った感じの視線を向けつつ師匠は言った。
「寝言は寝てから言え。
そんなのが出来る訳ないだろうが、阿呆。」
心底呆れたような表情を浮かべて、そう言った。
(ですよねー。)
俺は心の中でそう思いながら、焼けたきのこを食べだした。
食事を終えた後、師匠は2メートルくらいの木の棒を持って立ち上がる。
「さて、少しの間だけでも修業をするぞ。
まずは、縁の実力がどれほどのモノか見せてもらう。」
「はい、師匠。」
月明かりが照らす中、俺は木刀を持ち、いつも通りの構えをとる。
剣道で基本的な構え、正眼の構えだ。
師匠は今までこの構えをとる人物は出会った事ないのか、俺の構えを見て若干眉をひそめる。
「行きます。」
俺は一声かけ、師匠に接近して面を打つ。
真っ直ぐ振り下ろさせる一撃を師匠は簡単に受け止める。
俺は次の攻撃に移ろうと思った時だった。
次の瞬間には俺の手に木刀がなかった。
「え?」
と、呟いた瞬間俺の額に師匠の鋭い突きを喰らい、後ろに倒れながら意識を失った。
「う・・・・ううう。」
俺はゆっくりと目を開ける。
途端に額に鋭い痛みを感じた。
額を押えつつ、上半身だけ起き上がる。
目の前では師匠が座禅を組んでいた。
俺が起き上がると同時に、師匠も目を開ける。
まだ、夜の所を見るとそう時間は経っていないかもしれない。
「起きたか。」
「はい、何がどうなって。」
「お前が私に斬りかかってそれを受け止めた瞬間に、木刀を弾き飛ばしたんだ。
その後は分かるな。」
俺は無言で頷く。
てか、分かっていたけど師匠は強い。
突きは速すぎて何が何だか状態。
木刀を弾いたのだって気がつかなかった。
師匠は自分の傍にある、木刀を拾い俺に投げ渡す。
「あの母親に鍛えて貰っていたみたいだが、まだまだだな。」
「母さん、人にものを教えるの苦手だったので。」
「確かに、基礎的なものは出来ているみたいだが、それ以外が全くだな。
まぁ、逆に何も知らない方が呑み込みも早くなる。
毎晩、最初の方は私と打ち合う。
世界を見終わった時には、賊一人程度なら戦えるくらいになっているだろう。
本格的な修行はそれからだ。」
「分かりました。」
「それと、もう寝なさい。
やり過ぎは体によくないからな。」
俺は師匠の言葉に従い、布団に寝転がり、挨拶をして睡眠をとった。
それから数週間。
様々な町や人などを見て回りながら、ようやく荊州南陽に到着した。
街は活気で満ちており、子供も元気に遊んでいた。
「さすがは堅だな。
しっかりと街の事を考えている。」
馬を預け、戟と必要な物だけを持ち、街を歩く。
俺は愛用の木刀だけ。
師匠は珍しい物があるかどうか、店を見回りながら城を目指していく。
「そう言えば、師匠と孫堅の関係ってなんですか?」
前々から気になっていたので聞いてみた。
「私と堅は戦場で何度か手合わせをしてな。
その時、互いを好敵手を認め合った仲だ。
戦いが終わり、私情で会っては話をしたり修行したりしたものだ。」
師匠は懐かしいそうな表情を浮かべる。
おそらく、孫堅は師匠にとって大事な友達なのだろう。
「堅は女のくせに女らしさが全くなくてな。
森に出かけた時はちょっと眼を放したら、熊と戦っていた。
あれは正直焦った記憶がある。」
「熊って、マジですか。」
あれ。
今、師匠何か重要な事を言わなかったか?
「ねぇ、師匠。
孫堅って女性?」
「ああ、そうだが。
何かおかしなことを言ったか?」
俺はそれを聞いてただ、唖然としてしまった。
うっそ、あの孫堅ってこの世界だと女性なの。
確かに関羽、もとい愛紗は女性だったよ。
可愛らしい女の子だったよ。
でも、孫堅が女性ってのは驚いた。
てことは、他の武将も女性になっている可能性あるよね、これ。
何か、嬉しいような、何というか、複雑な気分だよ。
偉大な武将ともしかしたら、戦場で共に戦うかもしれないと思ったのに、それが女の子だなんて。
何か、ちょっと残念だ。
正し、愛紗は例外だ。
何故例外かって?
俺の妹で可愛いから。
そんなくだらない事を考えつつ、城が目と鼻の先まで近づいていた。
師匠は近くの門番に話しかける。
「失礼。」
「何様だ。」
「孫堅殿に会いに来たのだが。」
「話は通してあるのか?」
「いや、突然の来訪だ。
孫堅殿に伝えてくれ。
丁原がやってきたと。」
「少し待っていろ。」
門番は師匠の話を聞いて少しだけ疑ったような顔をしたが、城の中に入って行く。
少ししてから、帰ってきて言う。
「孫堅様がお通しせよとのことだ。」
その言葉を聞いて、師匠は城の中に入って行く。
さて、英雄・孫策と孫権の父親・・じゃなかった。
母親の孫堅との対面か。
後書き
もう、完全に別作品になっている(笑)
丁原のイメージはテイルズオブジアビスのヴァンをイメージしていただくと、分かりやすいと思います。
もしかしたら、この調子でストーリーを大幅改造してしまうかもしれません。
にじファンではストーリー変えるつもりなかったのに、どうしてこうなった。
誤字脱字、意見や感想などを募集しています。
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