ゲルググSEED DESTINY
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第六十四話 死中に活を求める
「どうやら動き出したようだね」
脚を組みながらデュランダルは連合艦隊が動き出したという情報を受け取りそう呟く。アガメムノン級を中心として展開している敵部隊。その数は決して多いものではない。
「高みの見物と決め込むのも良いが、この先の事を考えれば今が最もタイミングが良いかな?」
席を立ち、総指揮を白服を着ているザフトの指揮官に任せる。
「はあ、それは構いませんが議長は如何されるおつもりで?」
「私も出よう。なに、心配はいらんさ私専用に用意された機体もある」
議長自ら出撃すると聞き、驚きのあまり膠着するがすぐに止めようとする。
「議長、戦場はそんなに甘いものではないですよ!?止めてください!」
「なら護衛を付けるとしよう。クラウが私の格納庫で機体の最終調整をしている筈だ」
結局は権限の強い議長に逆らえる人間などおらず渋々と言った様子ではあるもののその白服のザフト兵は議長自らの出撃を認める事となった。
「まあ、すぐに戦闘が始まるわけではない。まだ暫くはここにいることだろうさ」
そう言って議長は向かってきている連合に対して部隊の用意を進める。
「せめて余興として私を楽しませてくれる程度には粘ってくれよ、ジョゼフ・コープランド――――あまりに詰まらないようならあっさりと潰してしまうことになるのだから」
まるで舞台の演目を楽しむかのような気楽さでデュランダルは連合部隊の到着を待つのだった。
◇
「アルザッヘル基地から敵部隊が来てるって話だけど――――本当か?」
デスティニープラン提唱後、シン達はミネルバに戻り連合の部隊が動いたという情報が入ってきたため確認を取る。
「はい――――大西洋連邦大統領、実質現在の連合軍で最も権力の大きい人物であるジョゼフ・コープランドを中心にアルザッヘルの艦隊戦力がプラントに向かってきているらしいです。ですが戦力自体は大規模ではあるもののこれまでの戦力と比べると大分少ないのではないかと思われます」
「おそらくは連合内での纏まりが悪いのだろうな。元々ロゴスを討つために多くの連合兵が離反している。未だに混乱は続いている状況である上に地球でもユニウスセブン落下の影響からまだ立ち直っていない状況だ。
市民の反発、軍の内部分裂――――それらの要因によって戦力をかき集めきる事が出来なかったとみていい。ジョゼフ大統領が直接艦隊に乗り込んでいるの理由も少しでも兵の数を揃える為だろうさ」
メイリンの報告に対し、レイが近くのキーボードを片手で撃ちこんでデータを調べつつ捕捉する。周りのメンバーは納得するが、シン達はミネルバやラー・カイラムの今後の予定がどうなるのかという事を尋ねる。
「じゃあ俺達はどうするんだ?そのまま連合艦隊に対して攻撃を仕掛けることになるのか?」
「――――それに関しては分からんな。だが、そうなると思っておいた方が良いだろう。今後もこの連合のように議長の平和な世界を創るために行う政策に対して反発する勢力が出てくるはずだ。ごく小規模なものから今回のような大艦隊まで……特に中立圏の国は厄介だろうな。ああいった手合いは自分たちの領域を踏み込まれるのを極端に嫌う」
「まだ戦争、続くんだね――――」
「ルナマリア、不安になるのはわかるけど、この戦いで勝てば実質戦争は終わりだよ。いくら中立国って言ったって連合が斃された後まで抵抗つづける何てことそうそうないさ」
レイの言葉にルナマリアは戦争がまだ続くのかとうんざりした様子を見せ、ショーンがこの戦いで勝てば平和に随分近づくと予想する。事実、連合が崩壊すればザフトに抵抗できる戦力など殆どないであろう。規模だけでいうなら匹敵するものがあってもザフトは連合と真っ向から対等に戦争してきた唯一の組織なのだ。その組織に勝てる勢力などそうそうあるはずもない。
「何にせよ、指示があるまで俺達は待機だな。無論、すぐに出られるよう準備はしておくべきだが」
プラントで待機せずにミネルバの方で待機しておいた方が良いとレイ達は判断してそのままミネルバに滞在しておこうと話し合う。
「でも、一体いつまで戦争が続くんだろうな……いい加減うんざりだよ。皆必死に戦って死にそうになってさ……」
ヴィーノがまだ戦おうとする敵がいる事と戦争が続くことに対して苦々しい表情で言う。
「そうだな、戦場で……デイルみたいに、仲間や家族が死ぬのはもうたくさんだぜ……」
ショーンもかつての戦友が討たれたことを嘆いているのか悲しげな表情で言葉を続ける。シン達は暗い雰囲気に包まれる中、レイは周りのメンバーに対して発言する。
「ならば終わらせるんだ。この戦争を……俺たちの手で!」
戦争は未だに終息の様子を見せず、彼らの戦いは続くことになるのだろう。それでも確実な平和が訪れるのを願い、その為に彼らは戦い続ける。
◇
『あと三分でスニップ隊の攻撃予定時間です――――』
ガーティ・ルーのオペレーターが、MSに搭乗し待機しているネオ達に報告する。一分後にネロブリッツを駆るダナ達の攻撃が成功すれば作戦は開始となる。既に出撃しているスローターダガーやダークダガーも二機編成で移動中だ。
「よし、これが最後の確認だ。以後はまともに連携を取るための通信はないと思っておけよアウル、エミリオ――――俺達は予定されているこのラインまでは編成して移動する予定だ。だが、実際に敵の出方によって位置は変化する。あまりデータは当てにするなよ」
『りょーかい、でもライン超えたら勝手にさせてもらうからな』
『任務了解――――敵部隊の反応によって連携を継続するか単独行動かは独自に判断する』
ネオ達の乗る三機の機体がこの作戦での最大のかなめとも言えた。運動性、機動性がバランスよく高められたネオの乗るスペキュラムパックのライゴウ、射撃武装が多く多数のスラスターで無理矢理高出力を得ているアウルのG‐V、変形機構によって複数の形態に変形出来るエミリオのロッソイージス。
三機の内たった一機でもコロニーレーザーに辿り着けばこの戦いはネオ達の勝利となるだろう。それぞれの機体にコロニーレーザーに関するデータが入れられており、辿り着きさえすれば制御を奪う事が可能な筈だ。しかし、たった三機での突破――――ネオの予想では仮に突破できたとしても一機、いやそもそも突破すること自体限りなく不可能だと感じていた。
「だけど、まあ出来るって言った本人がそう弱気になっちゃあいけないよな……」
『予定時刻まであと十秒。カウントを取ります――――9、8、7……』
ガーティ・ルーの先制攻撃による奇襲を仕掛けるために総ての砲門のゴットフリートが構えられる。類似艦であるアークエンジェル級のようにローエングリンといった戦略級の兵装が無いガーティ・ルーの唯一にして最大の攻撃が放てるチャンスだ。
発射されれば熱源が捉えられることになるがその瞬間に敵陣後方でのダナ隊が同時攻撃を仕掛け、混乱を起こす。だからこそ、タイミングがずれてしまえば熱源を探知され落とされることになる。それを避けるためにダナ達は先行したのだ。失敗だけはするなよと不安になりながら願い続ける。
『3、2、1――――』
『全砲門開け!MS隊突破の為に、敵陣に穴を空けるんだ!!』
そして開戦の号砲が放たれる。射程ギリギリに収めていた敵のローラシア級やナスカ級を貫き、敵艦隊を数隻沈黙させた。すぐに敵艦隊は対応しようとするがダナ達が上手くやったのだろう。戦況は混乱していた。
「全機出るぞ!!」
攻撃を放ってすぐに出撃するネオ達。それとほぼ同時に広く展開していたステルスカラーのダークダガーやスローターダガーの部隊は攻撃を開始する。初撃の奇襲としては完全に成功といえた。後は周りの部隊がどの程度時間を稼げるか。そして自分たちの内、誰か一人でもコロニーレーザーに辿り着くことが出来るかだ。
「中央から第一目標地点まで最短で駆け抜けるぞ!遅れずについて来いよ!!」
ライゴウが先頭で加速して一気に突き進む。圧倒的ともいえる加速によって突如現れた三機にザフトのMS隊は驚愕し、その隙を逃すことなくネオはビームライフルで進路上にいた、或いは移動する上で攻撃をしてくるであろう敵を撃ち抜く。
『邪魔なんだよォ!』
アウルのG‐Vもビームサーベルをカノンとして使い戦線を切り抜けていった。
『連合の敵MSか!?突破させるな!奴らの狙いはコロニーレーザーだ!』
指揮官機と思われるゲルググJG型が指揮を執りながらビームマシンガンで狙いを付ける。しかし、三機の機動力について行くことが出来ない。周りのMSは狙いを定めることもままならず落とされていった。
『行かせん!』
「邪魔をするなッ!!」
だが、流石に指揮官機である上に同様のコンセプトとして機動力に特化して造られたゲルググJG型は三機の機動力を前にしても対等に渡り合う。ビームマシンガンでルートを阻害し、徐々に三機の行く手を塞いでいく。
阻害されていくルートを予測し、ブレイズウィザードを装備したザクやグフは先回りしてルート上に展開していた。このままでは囲まれることになると三人は思うが、エミリオがそこでMSへと一度変形しスキュラを構える。
『こいつ、MSか!?』
『コーディネーターは全員死ね!』
連射して放たれるスキュラ。前方に待ち構えていたザクやグフは次々とその餌食にあい撃ち落とされる。ロッソイージスはそのままジェットストライカーのような飛行形態へと変形し、移動を続ける。MAの巡航形態では小回りが利かず、囲まれそうになっている今の状態では致命的だと判断したからだ。
「よし、よくやったエミリオ!そのまま突っ切るぞ!」
なおも追いすがろうとしたゲルググJG型の指揮官に対して、盾で隠しながらアーマーシュナイダーを抜き出し、ビームライフルで敵に向けて撃ったのちに、ネオはその回避したルートを予測してアーマーシュナイダーを投げつける。
『なッ!この乱戦でこうも正確に当てるだと!?』
投げたアーマーシュナイダーはゲルググJG型の頭部にあるメインカメラに命中し、その衝撃から吹き飛ばされ体勢を崩す。そして、その隙を逃すことなくアウルのG‐Vに装備されたインコムのビームがコックピットを貫いた。
◇
「敵部隊の襲撃だと!?アルザッヘルの連合部隊か!」
「い、いえそれが敵部隊はごく少数の部隊らしく……敵の位置も規模も正確な情報が得られないままでして……」
ジュール隊の旗艦であるナスカ級のボルテールにてイザーク達は現在の状況を確認していた。そんな中、突如敵の攻撃を受け、一体何事だとこの場の指揮官であるイザークはオペレーターに尋ねる。しかし、オペレーターの返答は要領を得ない内容であり、イザーク達は疑問を口にする。
「少数なうえに詳細が分からないだと……一体どういうことだ?」
「少数っていう事は敵の本隊は遅れてきているって事か。だとしたら今の襲撃部隊は威力偵察とか特攻ってやつ?」
イザークが頭を悩ませる中、ディアッカは敵がどう動いているのかを確かめようとする。もし仮にこの襲撃が何かしらの策だとすれば連合の本隊は動いているのかを知る必要がある。そう思い尋ねたのだが返ってきた答えは些か拍子抜けするような答えだった。
「いえ、それが敵本隊はこちらに向かってきておらず……直接プラント方面へと向かっていまして……」
「なら俺達をここに釘付けにしようって事か――――それにしちゃあ数が少なすぎねえか?」
ディアッカ達が何のために襲撃してきたのかというのを話し合う中、イザークは敵部隊が何の目的でどのように攻撃を仕掛けてきたのかを考える。不意の奇襲、少数の機体、位置把握の不可、敵本隊との別行動――――それらの要因から考えられる状況を推測し、どんな目的でどういった方法での奇襲なのかを悟る。
「ミラージュコロイドか!各員ただちにセンサー系統の警戒を強めろ!敵部隊はステルス機、或いはミラージュコロイド搭載機の筈だ!そして敵の狙いはこのコロニーレーザーの確保と見て間違いない!!」
そう叫んだ直後、周りの兵士は受けた命令から部隊を動かすよう指示する。イザーク自身も敵部隊の突破をさせないために自身のMSに向かっていった。
「ディアッカ、行くぞ!敵を直接倒す。戦線を突破させるわけにはいかんぞ!」
「おい、イザーク。待てよ!どういうことだよ、狙いがこのコロニーレーザーだって?」
ディアッカはイザークが何故コロニーレーザーを連合が狙うと予測した理由ついて尋ねる。
「簡単なことだ。敵部隊は突然の奇襲を仕掛けてきた。これまでゲリラ戦を仕掛けていた抵抗戦力も同様だったが規模が違う。投降せずにゲリラ的に攻撃を仕掛けてきた奴等にはMSが殆どないごく少数の散発的なものだ。探しきれないのも当然だ。しかし一方でこちらはMSが多く、その上外部からの攻撃――――となれば見つからずに内部に切り込むにはステルス系列が必須になる」
「ああ、なるほど。つまり、外部からの部隊による攻撃ってことは、外部から来るそれ相応の目的があるってわけだな」
ディアッカも合点がいったらしい。外部から攻撃を仕掛けてくるという事はそれなりに理由があるという事。それが足止めという可能性もあるがミラージュコロイドを使って態々内部まで切り込んできたという事は確実に何らかの達成目標がある。そしてそれはコロニーレーザーである可能性がかなり高い。
「何にせよ、これ以上被害を増やすわけにはいかん。早急に終わらせるぞ」
「はいはい、分かりましたよ」
そして彼らも戦場に出る。ジュール隊とファントムペインの戦いが始まる。
後書き
一番最初の戦闘はやはりファントムペイン。それに対応するのはジュール隊のようです。ある意味珍しいカード?結果がどうなるのかは次話以降となりますね。
皆がゲルググの影が薄いっていうから作者もソウダネって思って出したよ!やったぜフラン!
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