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久遠の神話

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第五十四話 富の為にその十二

「実際にね」
「いるかも知れないのか」
「ああ、そうかもね」
 こう言うのだった。
「勿論僕も中国の本当の人口は知らないしね」
「だからか」
「まあ我が国の人口についてはどうでもいいよ」
 王の方からその話を終わらせてまた言う。
「とにかく君は君の宗派の仏になるね」
「仏教だからね」
「なら仏に祈るんだね」
 そうしろというのだった。
「極楽浄土で幸せに暮らせる様に」
「宗教は否定しないがな」
 広瀬は無神論ではない、それも言う。
「しかしな」
「それでもだね」
「俺の幸せはこの世界にある」
 今生きているこの世界にだというのだ。
「極楽にはない」
「まあそうでもないと剣士として戦わないね:」
「そういうことだ、それではな」
「話はこれで終わりにしてね」
「闘う」
 広瀬は己の右手に彼の剣を出した、そしてだった。
 王も彼の剣をその右手に出した、その剣はというと。
 両刃で一直線の八十センチ程度の長さの剣だった、柄がありその刀身の幅もそれ程ではない、その剣はというと。
「中国の剣か」
「ごく普通のね」
「青龍刀ではないか」
「あれは好きじゃないんだ、刀とかはね」
「あんたの趣味か」
「包丁を思い浮かべてしまうんだよ」
 包丁は片刃だ、刀からそれを思い浮かべるというのだ。
「包丁は特別なもの、人を切るものじゃないからね」
「食材を切るものだな」
「その刀を使うのは嫌でね」
 戦いに包丁を連想する片刃である刀を使うことはない、王は彼のその好みを広瀬に対して語ったのである。
「それでだよ」
「事情はわかった、それで剣は」
「そういうことでね」
「その色は黄金、力の色はそれか」
 その色も見ての言葉だった。
「金か」
「わかるんだ」
「アメリカ軍の大尉は重力で群青だった」
 スペンサーの剣の色はそれだった。 
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