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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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短編 一輝とお姫様 ⑤

次の日の朝、一輝が目を覚ますと一輝の横にマヤはいなかった。
そのことに一輝が首をかしげながら部屋を出ると、マヤは朝食を作っていた。

「ふああ・・・・おはよう、マヤ。」
「あ、おはよう、一輝。なかなか起きてこないから勝手に朝食を作ってるけど、冷蔵庫の中身は使ってもよかった?」
「ああ。ありがとう。」

一輝はマヤにそう返すと、新聞を取りにいき、ついでに事務所のほうで何かしらの依頼がないかを調べる。
依頼が入っていないことを確認し、元の部屋に戻るともう既に朝食は並んでいた。

「あ、帰ってきた。口に合うかは分からないけど。」
「そんな贅沢は言わないよ。飲み物は何がいい?」
「じゃあ・・・あったらでいいけど、紅茶をお願いしても?」
「紅茶紅茶と・・・あった。」

一輝はマヤの紅茶と自分のお茶をくみ、席に着く。

「では、」

「「いただきます。」」

二人はそのまま今日の予定を話しながら食事を終えた。

「ご馳走様でした。美味しかったよ。」
「ありがとう。じゃあ私は着替えてくるね。」

一輝は食器の片付けに入り、マヤは着替えに行く。


――――三十分後――――


「準備できました。」
「よし、じゃあ行くか。」

一輝が準備を、マヤが変装を終えると二人はそのまま部屋を出て、出かけた。
変装といっても、髪形を変え、カラーコンタクトを入れただけだが。

「じゃあ、まずはその辺の本屋から回る?」
「うん!」

マヤはそういったところに行ったことがないので、十分に楽しめるだろうと言う考えから、まずは近場から回り、一回食事を挟んでから東京にでも行こう、となった。

そのまま、近場の本屋、CD、DVDショップを回り、昼食を取ることになった。
え、描写?この光景とか読んでても面白そうじゃないし、書きづらすぎますよ?
スイマセン、いい訳です。そんなの自分には書けません。

「さて、何を食べたい?」
「食べたいもの・・・せっかくだから、何か日本らしいものがいい、かな。」
「日本らしいもの・・・急に言われて思いつくのは、寿司かお好み焼き、もんじゃ焼き?」
「そうですね・・・回るお寿司屋さんとか、結構あこがれてたりする。」
「これまた庶民的なところになったな。」

一輝はGPSでこの辺りにある回転寿司を探し、一番近いところまでの地図を覚えると、

「じゃあ、行こうか。少し歩くけど。」
「うん!」

二人は歩いてその店に向かう。
まあ、言うまでもないことだがマヤは周りの視線を集めに集めている。

そんな中歩くこと数分、目的地に着いた。

「ここが、回転寿司?」
「ああ。繁盛してるなー。」
「席・・・空いてるかな?」
「それは大丈夫。手は打ってある。」

マヤが首を傾げるが、一輝は気にせず歩いていく。
そして、店に入ると、そこには一輝と瓜二つの人が立っていた。

「え、え!?一輝が二人!!?」
「落ち着け、マヤ。お疲れ様、解。」

一輝がマヤを落ち着かせながら目の前にいる自分にそっくりな人に手を向けそう言うと、それは一枚の紙になる。

「あれ・・・?紙になった?」
「ああ。こんなときにも便利な式神だよ。席はどこ?」

一輝は驚いているマヤにそう説明し、店員に尋ねる。

「・・・あ、すいません。こちらです。」

店員も固まっていたが、すぐに一輝たちの案内を始める。
そして、席に着くと店員はどうしたらいいのか悩んでいたが、

「すいませんが・・・ライセンスを見せてもらってもいいですか?」

そうたずねてきた。
基本的に、私生活での式神の使用は、一部の陰陽師やその卵を除いて禁止されている。
それゆえに、高校生の一輝が使ったことに疑問を抱き、店員は確認しようとしているのだ。

「ああ、そうか。はい、ライセンス。」

一輝はそのことに気づき、ポケットから取り出したライセンスを店員に渡す。
店員はそのライセンスを見ると、表情に驚愕を表し、一輝にライセンスを返すとそのまま去っていった。

「何だったの、今の?」
「一部の人を除いて、なんでもないときに式神を使うのは禁止されてるからな。そのための確認だろ。ライセンスを見ればそれくらいは分かるし。」

私生活での式神の使用を許可されている陰陽師のライセンスには、式神使用許可と書かれているか、もっと分かりやすい特徴がある。

「さ、そんなことは置いといて、食べたいものをレーンから取って、それを食べる。今はそうしよう。」
「う~ん・・・うん、そうだね。美味しそうな物が多いし、早く食べよう!」

二人はそのまま食べ始めた。
マヤが普通に食べているところを見て、一輝は疑問に思い聞いたが、アニメでこういったシーンはあったんだとか。

「ところで・・・気のせいだったらいいんだけど、」
「どうした?」
「なんだか・・・視線が集まってるような・・・」
「今更かよ。本屋とか回ってるときからずっとだぞ。」
「うそ!?」
「ほんと。ま、仕方ないだろ。マヤみたいに染めたわけじゃない金髪で、可愛い子がいれば、自然と視線は集まる。」
「か、可愛い!?」

マヤがそのワードに反応するが、一輝は気にした様子ではない。

「ちょ、一輝!?今、かわ、かわ、可愛いって・・・」
「最後のほう、声が小さくて聞き取れなかったんだけど?」
「えと、その、あう・・・」

マヤが俯いて黙ってしまったので、一輝は気にせず食事を再開することにした。



             ================



数分後、マヤが落ち着きを取り戻してから食事を終え、一輝の操る水に乗って東京に向かった。

「まったく・・・まさか一輝がなんの躊躇いもなくあんなことを言う人だとは・・・」
「さっきから何度も言ってるが・・・一体何のことだ?」
「なんでもありません!自分で考えなさい!」
「んな滅茶苦茶な・・・」

まあ、これは一輝が悪い。

「ふう・・・よし!切り替えて遊ぼう!」
「・・・まあ、マヤがいいならそれでいいか。」

二人はその案件を無理矢理に片付け、楽しむことにした。

「さて、どこから回りたい?」
「じゃあ・・・まずはあそこからで。」

マヤが指すのは、遊園地。

「アニメ関係はもう回ったから、次は遊びたいな、と。」
「いいけど、他のところを回れないと思うぞ?」
「それでもいいの!」
「なら、何も問題はないよ。行きますか。」

二人は、マヤが指差した遊園地に行き、そのまま入場する。

「で、どれに乗る?」
「一輝は乗りたいのないの?さっきから聞いてばっかりだけど。」
「なら・・・最初にジェットコースターに乗る?」

一輝が指すのは、この遊園地でも人気の高いアトラクションである、ジェットコースターで、妖怪ですら気絶した代物である。
それは、見た目にも分かりやすく、恐怖体験できることが分かる。

「・・・あれ、脱線しないの?一部一部道がないんだけど・・・」
「大丈夫、雪女か何かが道を作るみたいだし。」
「なんでそれが分かるの?」
「妖気を感じたのと、今目の前で起こってるし。」

マヤも言われて目を凝らし、透明な道を視認する。

「よくあんなのが見えたね・・・」
「眼は結構いいからな。まあ、勘の部分も多いけど。」

そんなことを話している間に氷の道は消えた。

「で、どうする?あれを最初は結構きついと思うけど。」
「ううん、乗る。頑張る。」
「そんなことを頑張られても・・・」

マヤは若干震えているが、それでも乗る気なようで、ジェットコースターのほうに向かっている。

そして、乗る直前、さすがに心配になって最後に聞く。

「今ならまだ、降りれるけど?」
「ううん、ここまできたんだから、乗る。」

が、意思を変えるつもりは無い様なので、一輝は気にしないことにした。

その後、マヤはずっと、悲鳴を上げていた。

「大丈夫か~?」
「・・・無理・・・ぜんぜん、大丈夫じゃない・・・」
「・・・やっぱり止めとけばよかったか。」

マヤは一輝に背負われていた。
とても歩くことが出来る状態ではなかったため、一輝が無理矢理に取った手段だ。

「さて、今水出すから、少し横になってろ。」
「はい・・・」

一輝はマヤをベンチに下ろし、そのまま横になるように言う。

「あんなに怖いなんて・・・」
「まあ、普通は空中浮遊とかしないからな。目の前に道が出来たり、後ろの道が消えたりも。」
「うん・・・ていうか、何で一輝は、なんともないの?」
「まあ・・・陰陽師関係の仕事で・・・何にもなしでスカイダイビングも、やったことがあるからな・・・」
「・・・大変な仕事なんだね。」

マヤはそのまま休み、数分後に復活した。

「よし、復活!次はどこに行く?」
「念のため、絶叫系は禁止な。まだ万全じゃないかもしれないし。」
「うん。でも・・・それだと行ける所って限られてくるよね?」
「ま、パンフレットでも見て考えろ。」

一輝がパンフレットを渡すと、マヤはすぐに行きたいところを見つけたようだ。

「これなんてどう?お化け屋敷!」
「・・・いいんじゃないか?」
「ふっふっふ。一輝に対して絶叫系が意味ないなら、こっちはどうなのかな?今度は一輝が悲鳴を上げる番だよ?」
「あ、いや、マヤ重要なことを」
「さ、レッツゴー!」

一輝が何か言おうとするも、マヤは進んでいってしまう。

「・・・俺、陰陽師の卵なんだけどな。」

一輝はそうつぶやき、マヤのあとを追った。

まあ、結果は予想が付くだろう。
ジェットコースターに本物の妖怪がいるのだから、もちろんお化け屋敷にもいて、マヤは盛大に怖がり、一輝はノーリアクション。
マヤは途中から歩くことも出来なくなり、一輝の腕に抱きついて目を瞑り、出口まで誘導されることになった。

「もう出口に着いたぞ~。目を開けろー。」
「・・・怖かった。」

マヤはそう言いながら、その場に崩れ落ちる。

「いや、立てって。すぐそこにベンチあるから、座るならそこにしなさい。」
「無理。腰がぬけた・・・」
「・・・文句は一切受け付けません。」

一輝はそういってからマヤをお姫様抱っこの要領で持ち上げ、ベンチまで運ぶ。

「・・・・・・ありがとう。」
「どういたしまして。何か欲しいものある?」

マヤは何か仕返しを思いついたような表情になると、一輝に提案する。

「じゃあ、膝枕してくれるかな?枕が欲しいんだけど・・・」
「了解。少し頭上げるぞ。」
「え?」

一輝が何の反応もなくさらっとやったので、マヤは自損技に失敗し、余計なダメージを受けた。

「・・・なんで当たり前のようにやっちゃうかな・・・」
「なんか言ったか?」
「なんでもない。それと、何か冷たいものが欲しいな。」
「膝枕はもういいのか?」
「予想以上に恥ずかしかったからね。」
「じゃあ、普通に座ってて。そこで買ってくるから。」

一輝はマヤの体を起こすと、すぐそこにある売店に行く。

「ふう・・・一輝を負かすのは諦めよう。」

マヤは現状から一輝に絶叫を上げさせたりするのは無理だと判断し、普通に楽しむことにした。

「ねえそこの娘?一人?」
「俺達と一緒に遊ばない?」

そのままマヤが一輝を待っていると、数人の男がマヤに声をかけてくる。
いわゆるナンパである。

「いえ、一緒に来ている人がいるので結構です。」
「そんなこと言わずにさ。何なら、その娘も一緒に。」

マヤは無感情無表情で対処するが、ナンパどもは気にせず、さらに誘ってくる。

「ねえ、一緒にお茶するだけでもいいからさ。」
「どう?一緒に」
「おーい、マヤ~。ソフトクリーム買ってきたけどチョコとバニラどっち食べる?」

そして、そんな状況を無視して一輝はマヤの前まで行き、ソフトクリームを選ばせる。

「じゃあ、バニラで。」
「はい、どうぞ。」
「おい、邪魔するんじゃねえよ。」

が、ナンパ野郎どもがそれをよしとするわけがなかった。

「ん?何か用?」
「こっちが話してるところに割り込んできといて何言ってやがんだ。」
「あんたらがはけるのを待ってたらソフトクリームが溶けるだろ。そんなことも分からないのか?」
「ちょっと面かせやこら。」

一輝が挑発を繰り返すと、ついにナンパ野郎どもがキレた。

「はいはい。マヤ、一分以内には戻ってくるから、ちょっと持っててもらってもいい?」
「うん、行ってらっしゃい。」

一輝はマヤに自分のソフトクリームを渡し、ナンパ野郎どもについていき、

ズドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!

落雷を落として帰ってきた。

「ただいま。」
「お帰りなさい。はい、ソフトクリーム。」
「ありがとう。いや~一仕事した後のアイスは美味しい!」
「ところで、あいつらはどうなったの?」
「まあ、命は大丈夫じゃないか?式神たちに病院まで運ばせたし。」
「一輝は大丈夫なの?」
「事実を隠蔽したから大丈夫。」

さらりととんでもないことを言ってのける一輝である。

「さて、そろそろ時間だし、最後にあれに乗らない?」

マヤはソフトクリームを食べきると、観覧車を指差す。

「まあ、最後に乗るのとしては定番だな。」
「でしょ?さ、行こ!」

――――観覧車の中――――

「いい眺め~。」
「結構高くまで上るからな。」

二人は景色を眺めながら、そんなふうに話をしていた。
そして、一輝はどうかと思いつつも、別の話を切り出す。

「ねえ一輝、例の話なんだけど、」
「その前に、マヤ。これを視てくれ。」
「ん?なにこれ。」

一輝が渡した携帯をマヤが受け取り、画面を見る。
それは、マヤと入れ替わった妖怪が、インタビューに答えている姿だった。

「これ・・・」
「念のために、な。その状況を見てマヤがどう思うのか。それも含めて、返事をしてくれ。」

一輝は、しっかりと判断して欲しいのだ。
一人の人間の人生を丸ごと変える話だ。

「・・・ねえ、一輝。私って頑固で負けず嫌いなんだ。」
「ああ、知ってる。」
「だから、こんな状況を見たら思いつくことは一つしかないんだよね。」
「そっか。なら、俺はそれを手伝おう。」
「ありがとう。じゃあ、私からの依頼、聞いてくれる?」
「もちろん。俺は成功率百パーセントを誇る。必ず成功させるよ。」

一輝がそう宣言すると、

「私は、元の自分の立場に戻って、さらに素の自分も出す。そのために、あの妖怪を退治して。」

マヤもその依頼を口にした。
 
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