問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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覚悟
「この揺れ・・・地震!?」
「え、うそ。これって・・・!」
二人はその揺れに堪えることが出来ず、地に膝をついて耐える。
二人の視界に入る鬼は全て倒れ、下にいるものから消滅していく。
「湖札!今の言い方は、このことを知ってるのか!?」
「知ってはいるけど・・・説明してる暇はないよ!早く“煌焰の都”を離れないと、皆殺しになる!」
湖札はそういいながら、体内から出てきた妖刀を引き抜き、一度鞘に収めて再び抜く。
すると、“契約書類”から『主催者から“主催者権限”が失われました。これにてギフトゲーム、“大祓”を終了します。』というアナウンスが流れるが、一輝はそれどころではない。
「それでも説明してくれ!この地震、ウロボロスが原因なのか!?」
「ああもう!そうだけど、こんなに早くにやる予定じゃなかったの!」
「地震を起こすことがか!?」
「違う!これは、地下に封印されてる魔王が復活する余波なの!!」
一輝は湖札の言葉に絶句し、固まった。
「たぶん、復活した魔王が狙うのはサラマンドラの宮殿だろうから、そこには絶対に近づかないでね!!!」
湖札はそう言い残し、妖怪に乗ってその場を去っていく。
一輝はそこで冷静になって動き出し、Dフォンで四人を召喚する。
「四人とも、緊急事態だ。それも、今までに無いレベルで。」
「言われなくても分かるわよ!何が起こってるの!?」
一周回って冷静になった一輝とは違い、音央たち四人は慌てている。
「まず、これは魔王が復活する余波だそうだ。」
「これが余波、ですか・・・?」
「ああ。で、そいつはサラマンドラの宮殿を最初に狙うそうだから、お前らはそこの林をぬけたところまで逃げろ。ヤシロちゃんが三人を連れて行ってくれ。四人のなかじゃ、一番強い。」
「・・・その言い方だと、お兄さんはどこかに行くのかな?」
「ああ。一回宮殿に戻って、黒ウサギ、その他もろもろを連れ出す。」
一輝がそう言うと、四人は息をのんだ。
「もう時間がないな。急がないと・・・」
「待ってください、危険すぎます!せめて私を、」
「だめだ。戦うつもりはないから、連れて行くのは危険すぎる。」
一輝はきっぱりと言って、拒絶する。
「じゃあ、早く逃げろ。後で必ず合流する。」
「・・・ですがっ」
「分かった。また後でね、お兄さん。」
スレイブはなお食い下がるが、ヤシロがそれを遮る。
「ヤシロ!なぜ、」
「お兄さんの邪魔になるからだよ。戦闘目的ならスレイブちゃんは行くべきだけど、そうじゃないなら、ね。理解は出来るでしょ?」
「・・・・・・分かりました。御武運を。」
スレイブはどうにか納得し、大人しくなった。
「悪いな。二人もそれでいいか?」
「いやだけど、邪魔になるのは間違いないわ。」
「ですから、必ず黒ウサギさんを連れて合流するのなら、構いません。」
「OK。約束するよ。」
一輝はそう言いうと水に乗り、
「じゃあ、行ってきます。」
そう言ってサラマンドラの宮殿に飛んでいった。
「じゃあ、私たちも行くよ。念のため、あんまり離れないでね。」
「「「了解。」」」
スレイブはまだ付いて行きたそうにしていたが、ヤシロの言うことに従い、走っていった。
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一輝は全速力で、今までに出したスピードのさらに上を行くスピードで宮殿に向かったが、それでも遅かった。
一輝が付いた時点で既に、黒ウサギをかばい、十六夜は貫かれていた。
「うそ・・・だろ・・・」
一輝は目の前の光景を受け入れられずにいたが、
「十六夜!まさか、死んじゃいねえよな!?」
「一輝か・・・本音は一緒に戦って欲しいんだが・・・」
十六夜はそう言いながら、脇腹で自分を貫いている爪を抱きとめ、
「黒、ウサギを・・・・連れて逃げろ!!!」
「く・・・了解。」
「ああ、皆を頼んだ。この龍は・・・俺が足止めする・・・!!!」
十六夜に加勢しようとする意思を抑え、一輝は陰陽師モードになり、是害坊を憑依させると、黒ウサギを抱き上げ、上空に逃げる。
一輝は涙を流しながら、伝説級を除いた空を飛べる妖怪、魔物を顕現させ、この場では無力な人たちを逃がすよう命令する。
「だ………駄、ぁ、………駄目………!!!」
黒ウサギは一輝の腕の中から落ちそうなほど身を乗り出し、十六夜の背に手を伸ばす。
十六夜は、それに気づいたが、
「――――ごめん。旗を取り戻す約束は・・・果たせそうにない。」
無理矢理に笑みを作り、まっすぐな言葉で謝罪をした。
黒ウサギは言葉にならない叫びを上げ、身を乗り出そうとするが、一輝が腕に力をこめ、制する。
十六夜の言葉を聞いた時点で、覚悟を受け取った時点で、一輝は黒ウサギを逃がすと決めたのだ。
一輝は十六夜に背を向け、その場から一目散にさった。
後書き
ここで終わっといてなんですが、当分の間は・・・一輝の箱庭にくる前の話、特装版の話、乙の話のような短編をやっていきます。
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