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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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Tain Bo Cuailnge ⑤ & 大祓 ④

「にしても・・・皆違うのにどれも鬼だって分かるんだから、不思議だよね~。」

ヤシロは百詩編で雹を降らせ、火の玉を操りながら鬼の観察をしていた。

「それに、一部は特殊な業も使うみたいだし。こっちも新しいの使わないと、かな。」

ヤシロの見る先では、火を食らう鬼や、雹では一切の傷がつかない鬼などがいる。
そして、火を食った鬼はそのまま火を吐いてきたので、ヤシロは新しい詩を唱える。

「 Le boute feu par son feu attrape', (放火犯がおのれの火の罠にはまる)
Du feu du ciel a` Calcas & Gominge:(天の劫火がカルカソンヌとコマンジュへ)
Foix, Aux, Mazere, haut vieillart eschappe',(フォア オー マゼール 老いたる重要人物が逃走)
Par ceux de Hasse des Saxons & Turinge.(ヘッセン チューリンゲン 一部のサクソン人に助けられ)」

ヤシロが唱え終わると同時に、鬼の吐いた火が進行方向を変え、鬼を燃やしていく。
それだけでは終わらず、天からも炎が鬼を襲い、火を使う鬼は殲滅された。

「よし。やっぱり百詩編はまだ使える。だったら、」

ヤシロはまだ残っている鬼と、追加された鬼を見て、別の詩を唱える。

「 Au moys troisiesme se levant le Soleil,(第三番目の月に日昇るとき、)
Sanglier, Liepard, au champ Mars pour combattre:(猪と豹、干戈交えんと戦場にあり。)
Liepard lasse, au ciel extend son oeil,(倦んだ豹は天に目をあげて、)
Un Aigle autour du Soleil voit s'esbatre.(見えるは、太陽の周りを飛び回る一羽の鷲。)」

その詩は唱えている間に効果を現していった。
まず、猪と豹が現れ、鬼を蹂躙していく。
次にもう一匹豹が現れ、天にほえる。
最後に、豹の声に呼ばれ、一羽の鷲が姿を現し、鬼を食い殺していく。

「やっぱり、これによる召喚なら、しっかりと機能するし、実力も十分にある。上出来上出来!」

ヤシロはご機嫌でそれらを操り、鬼を退治していくが、そのせいで背後に鬼が迫っていることに気づけず、

「きゃあ!」

背中に一撃を喰らってしまう。

「ゲホッゲホッ・・・いーたーいー!」

ヤシロはそんなことを言いながらもしっかりと自分を襲った鬼を倒す。
具体的には豹の集中砲火で。

「うう・・・あれ使おう。
  Corduba encor recouvrera son siegge(コルドバはもう一度その座を回復するだろう)
....................................................(....................................................)
....................................................(....................................................)
....................................................(....................................................)」

ヤシロが唱え終わると、背中の傷は完全に治る。
手を抜いているように見えるかもしれないが、これも立派な百詩編の一つである。

「あ~痛かった・・・もう怒った。絶対に怒った。

  Second & tiers qui font prime musique(第二と第三が一級品の音楽をつくり)
Sera par Roy en honneur sublimee, (国王により過分の名誉を賜るだろう)
Par grance & maigre presque demy eticque(肥りかつ痩せることにより なかば衰弱さえしながら)
Raport de Venus faux rendra deprimee.( 金星(ヴィーナス)の詐りの報告のために貶められる)


  Tasche de meurdre, enormes adulteres,( 殺人 不義密通で汚れ)
Grand ennemy de tout le genre humain: (全人類の不倶戴天の敵)
Que sera pire qu'ayeuls, oncles ne peres,( そいつは祖先の誰よりも凶悪 父親たち 叔父たちよりも)
Enfer, feu, eaux, sanguin & inhumain. (鉄 火 水 血なまぐさい人非人)


Mort conspiree viendra en plain effect, (企みによる死が申し分ない効果を生むだろう)
Charge donnee & voyage de mort:( 罪名が宣告され 死の旅立ち)
Esleu, cree receu par siens deffait. (選ばれ 創られ 受け入れられたのち臣下に打ち倒される)
Sang d'innocent deuant soy par remort. (悔恨 彼の面前に無実の血)」

ヤシロが怒り任せに唱えた詩により、音楽で鬼が狂い、殺人鬼に殺され、仲間同士で殺し合い、裁判官によって死刑にされていく。

「さて、これぐらいで勘弁しますか。」

ヤシロはそこで詩を読むのを止め、今まで出したものの制御に取り掛かった。



             =====================



「これでは、ヤシロのところへたどり着くのも一苦労だな。」

スレイブは、一輝と離れてからヤシロのもとに向かっていたのだが、鬼はかなり大量に召喚されており、斬り捨てながら向かうとなかなかたどり着かない。

「だが、やるしかあるまい!」

スレイブは両手を手刀の形にし、鬼を切り倒していく。
何か、おかしな動きをしているものから斬っているので、火を噴いたりはしていない。

「さて、この程度なら!」

そのまま、武器を構えないものは普通に斬り捨て、武器を構えたものは武器ごと斬り捨てる。
スレイブの剣としての格が高すぎるため、打ち合うことすら出来ないのだ。

走りながら斬り続け、馬に乗った一つ目の鬼を発見すると、

「邪魔だ!」

スレイブは馬ごと斬り捨てにかかる。
だが、そう上手くいくものではない。
馬は後ろ足で手刀をけり、無傷のまま方向転換をする。

「今ので傷一つおわないとは・・・それにこの馬、首から上がないな。となると・・・夜行さん、だろうな。」

スレイブは後ろ足をよけ続けながら、攻撃をしようとするが後ろ足が邪魔すぎた。
夜行さんの乗る首なし馬の特徴は、後ろに立った物を蹴り殺す、というもの。
うかつに攻撃を喰らえば、その性質により死んでしまう可能性があるため、細心の注意を放っているのだ。

「だが、後ろ足じゃなければ!」

スレイブは夜行さんの頭上を跳び、相手二体の正面にたつ。
そして、相手が反応してくる前に手刀を叩き込み、終わらせる。

「鬼の属性を持ってさえいれば、何でも出てくるのか。かなり厄介だな。」

スレイブはそういいながら、次に来た鬼に対して、

「変則版、一角獣!」

思いっきり突きを放ち、大量の鬼を串刺しにする。
そこからは、一輝の肩を真似た攻撃を繰り返していき、どうにかヤシロのもとにたどり着くが、

「・・・なんだ、この状態は。」

百詩編によってボロボロになった森を見る。
それは、既に森とは呼べなくなる位に破壊されている。

「こっちにはこれほどの敵が・・・?それとも・・・」

スレイブは二つの可能性を考え、後者だと推測する。

「まあ、鬼さえ退治すれば・・・!」
「スレイブちゃん、後ろ!」

スレイブは反射的にその声を信じ、後ろにいたやつを殴り飛ばした。

「助かった、ヤシロ。」
「どういたしまして。それより、スレイブちゃんがこっちにいていいの?お兄さんの武器は?」
「ああ。それなら問題ない。一輝様は今、獅子王に量産型を何本も使い、妹、湖札と戦っている。私がいても邪魔になってしまう。」
「そっか。なら、一緒に鬼退治しない?」
「それについては構わないが・・・どうやってここをボロボロにしたのだ?」
「百詩編を使いまくった!」

ヤシロが笑顔で言ってくるので、スレイブは何も言えなくなり、

「・・・わかった。とりあえず私たちは私たちのやることをやろう。」
「うん!」

そのまま二人は構え、新たに現れる鬼を退治していった。
 
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