問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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再会
「えっと・・・湖札か?」
「うん、湖札だよ。今は、天野湖札、だけど。」
一輝は、目の前にいるのが間違いなく自分の妹だと確信すると、
「湖札ー!」
「わ、ちょ、兄さん!?」
抱きついた。感動のあまり、抱きついた。
「うわー、やべえ。予想以上に嬉しい!自分の家族に久しぶりに会うって、予想以上に嬉しい!」
「嬉しいけど、それは嬉しいんだけど!周りの目が痛いことになってるから!一回離して!」
「断る!」
「断らないで!」
一輝は仕方なく、湖札から離れる。
「にしても、まさか生き別れ(?)の家族に異世界で会うことになるとは・・・」
「まあ、普通じゃないよね。」
「ところで、湖札はもう父さん達のことは・・・?」
「うん、何か急に陰陽師課の人から電話があって、説明された。」
「そっか。じゃあ聞いとくけど、俺奥義習得したんだ。」
「へえ、兄さんもしたんだ?」
「ああ。何か、全部くれた。湖札は?」
「二、三個。こっちの中にいるぬらりひょん、ケチなのかな・・・」
「全部の檻の中に、平行して存在するだけだし、そこまで変わらないだろ。で、本題だけど、」
「どうぞ。」
「苗字、どうする?鬼道に戻す?」
「う~ん・・・今更こっちの知り合いに苗字が変わったって説明するのは・・・」
「面倒だよな。」
「うん。だから、この世界にいる間は、天野で行く。」
「じゃあ、俺も寺西で行くか。」
そこで一度話を切り、
「さて、湖札は何か参加するゲームある?」
「ううん、ないよ。」
「なら、久しぶりに会ったんだし、一緒に回らないか?」
「うん、行こう!」
二人は手をつないで、歩き出す。
普通の兄妹ならこうはしないだろうが、久しぶりに会ったことと先ほど抱きついたり抱きつかれたりしたことで感覚は麻痺している。
お互いにブラコン、シスコンのケがあることも、原因の一端なのだが・・・
「で、海外ではどうだったんだ?」
「いろんな人や魔物に会えたよ。仲良くなれたこともあれば・・・ちょっと戦うことにも・・・なりました。」
「まあ、陰陽師と魔物ならありそうだけど、人ともか?」
「うん、盗賊団に襲撃されたりして。」
「で、そいつらはどうしたんだ?」
「戦ってる途中で魔物に襲われて、助けてあげたらどっかに行っちゃった。」
湖札は、陰陽師としての実力が一輝と大差ない。
ほとんどの魔物は退治できる。
「まあ、恩を感じたのもあるだろうが、予想以上に強いって分かったんだろ。」
「たぶん、そう。そんな感じでいろんなところを転々として、魔物について学んで、それから日本に帰ったんだ。」
「それっていつの話だ?」
「○○年の、一月八日。」
「俺がこっちに来たのと同じ日だな・・・」
「で、ためしに神社に行ったら、箱庭に召喚されたんだ。今日で△□日目かな?」
「何でそこまで被るんだよ。奇跡か?」
「奇跡、だね。で、今は拾ってくれたコミュニティで働いてる。私は、誰かが召喚した、とかじゃなく、気がついたらこっちに来ちゃってた、だから。行く場所もなくて。」
「だったら、その人たちには感謝だな。俺は召喚したコミュニティのノーネームにいる。毎日賑やかで楽しいよ。」
一輝は途中で店により、アイスを二人分買って来る。
「はい、アイス。」
「ありがとう。」
極寒の地でも、熱風が吹くくらいには暑いので、アイスは美味しいだろう。
「兄さんは、こっちの世界でどう過ごしてきたの?」
「あったことと言えば・・・来てすぐに二人助けてメイドにしたり、五桁のコミュニティに喧嘩を売ったり、この辺りで魔王のコミュニティと戦ったり、南側の箱庭の外でたった三人で魔王に挑んで、そこでメイドが二人増えて、その後すぐに魔王のゲームをしたり・・・かな?」
「いや、なにやってるの。と言うより、よく生きてるね。」
湖札の反応は当然のものだろう。
「まあ、意外とどうにかなるっぽいぞ。」
「まあ、兄さんらしいけど・・・それだと、今兄さんのコミュニティにはメイドが四人、いることになるの?」
「いや、話に出てきた四人は、俺個人のメイドになる、かな。
コミュニティとしては二人。あと、十六夜ってやつに一人、いる。」
「・・・。ゲームの結果なの?」
「三人は。一人、隷属とは少し違うやつがいるんだけど。」
湖札が一輝を呆れきった目で見る。
「まあいいや。脅して、じゃないんだよね?」
「それはないよ。で、今は四人とも休暇中。」
「そっか。あ!あれやらない?」
湖札が指差すのは、射的のような店だ。
使えるのは、様々な銃から弓、ボウガン、スリングショットなどの道具から、手で投げるという原始的なものまである。
「どんなルールなんだ?」
「分からない!けど、面白そうじゃない?」
流石は兄妹、こういうところは似ている。
「まあ、面白そうだな!」
二人は、その露店に向かう。
「すいませーん!ルールを教えて欲しいんですけど!」
「ん、ああ。二人一組で、こっちの用意する選手と戦ってもらう。武器はこの中から選び、他の攻撃は禁止。で、こんなのを」
といいながら、店主は小さな皿のようなものを取り出す。
「三つ体に付けてもらって、これが全部割れたら失格。先に相手を全員失格にしたほうの勝ちだ。」
「だって。どうする?」
「楽しそうだし、兄さんと私の二人で出よう?」
「OK。じゃあ、やらせてください。」
「わかりました。まずは、使用する武器を選んでください。」
二人は並べてある武器の前に立ち、選んでいく。
「私はこれ、かな。」
湖札は、弓を選んだ。
「弓かー。」
「まあ、この中だと一番使い慣れてるし。兄さんは?」
「俺はこれかな。」
一輝は、普通の拳銃を取る。
「これなら連射も出来るし、一番使い慣れてるから。」
「陰陽師らしくない武器を、一体どこで練習したの?」
「はっはっは。警察を脅してみた。」
「なにやってるの。」
一輝は、割といろんなことをしている。
「では、こちらからゲーム盤に転送されますので。」
二人は案内された場所に立つ。
「最後に、難易度はどうしますか?」
その質問に、二人は何の打ち合わせもなく、
「「最高難度で!」」
そう、選択した。
「では、行ってらっしゃいませ!」
二人は光に包まれ、ゲーム盤に転送された。
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