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第二章

「そうだな」
「ああ、リュキアの方を荒らし回っているらしい」
「この村にも来るかも知れない」
「そうなれば大変だからな」
「今のうちに武器を作っておきたいんだ」
「あんた達の適う相手じゃない」
 だが、だった。男は彼等に冷たい声でこう告げた。
「キマイラはあまりに強い、だからな」
「俺達じゃどうにもならないっていうのか」
「そう言うのか」
「そうだ、逃げろ」
 この村からというのだ。
「いいな、すぐにだ」
「馬鹿言え、ここは俺達の村だぞ」
「ここに先祖代々住んでいるんだぞ」
「それでこの村から離れられるか」
「そんな筈ないだろ」
 こう強い声で言うのだった。
「だから戦う」
「絶対にこの村を守る」
「武器があって全員でかかればどうにかなるだろ」
 これが彼等の考えだった、それで何としてもだというのだ。
 それでだ、彼等は鍛冶屋に武器を作ってもらう様必死に頼むのだ。鍛冶屋はキマイラと戦うことは止めた。
 だが、だ。彼等の頼みにはこう答えた。
「作ろう」
「ああ、頼むな」
「そうしてくれるか」
「私は鍛冶屋だ、鍛冶はする」
 そして武器や防具は作るというのだ。
「あんた達の為にな、しかし」
「しかしか」
「キマイラには勝てないっていうんだな」
「尋常な相手じゃない」
 まるでキマイラのことをよく知っているかの様な言葉だった。
「全滅するがいいのか」
「いいも何も村を守る為だ」
「そうしないと駄目だからな」
「俺達は戦うからな」
「絶対にな」
「そこまで言うのならな」
 それならとだ、確かな声で応えた鍛冶屋だった。
 彼は剣や槍、鎧を次々と作って村人達に与えた。その間にもキマイラは暴れ回り多くの死者が出ていた。焼き尽くされた村も多かった。
 男もこのことは聞いていた、だがだった。
 彼はただ武器や防具を作るだけだった、彼はその中で一人呟いた。
「私にはもう戦う資格がない」
 こう言ってなのだった、彼はただそうするだけだった。
 キマイラは遂に男がいる村に迫って来た、それを受けてだった。
 村人達は意を決した顔でだ、こう言って血気をあげた。
「よし、行くか」
「ああ、絶対に倒すぞ」
「俺達の村を守る為にな」
「何があろうともな」
 こう言って戦いに向かおうとする、彼等は命にかええても村を守るつもりだった。
 しかし男はその彼等にまだ言うのだった。
「勝てないぞ、皆殺しになるぞ」
「そうなっても構うか」
「この村を守る為だからな」
「化物に村を滅ぼされてたまるか」
「俺達だって必死なんだよ」
 これが彼等の返答だった、そして。 
 彼等は出て行った、男はただ見送るだけだった。
 自分の家に足を引き摺って戻りそこで剣や鎧を打っていた、だがそこに。
 一人の巻いた金髪で青い瞳の青年が来た、彼は涼しげな微笑みを浮かべてそのうえで彼にこう言って来た。
「久し振りだね」
「貴方は」
 男は顔を上げて彼を見て声をあげた。
「どうしてここに」
「君の本心を知っているからね」
 だからだというのだ。 
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