マッドライバル
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第十章
それでだ、池上と倉田はこう言うのだった。
「次じゃな」
「次ね」
二人同時に出した言葉だった。
「次の戦いに向かおう」
「そうするわよ」
「さて、ではな」
「次は勝つわよ」
二人はお互いを見つつ不敵な笑みを浮かべ合う、そして梨を食べ終えてテーブルと椅子、ノートパソコンを収めて。
恐竜達を自分達の研究所まで洗脳で帰らせてからだ、それぞれの助手に告げた。
「では帰るぞ、東京まで」
「いいわね」
本当に何でもない言葉だ。
「それでよいな」
「帰ったらすぐに次の勝負に向けて研究開発をはじめるわよ」
「ううん、死人出てますけれど」
「不法漁民でも」
「それでもですか」
「いいんですね」
「うむ、よい」
こう話してそしてだった、そのうえで。
双方即座に撤収した、実際に東京に帰るとまた勝負の為に研究と開発をはじめた。先の勝負を振り返ることはなかった。
だがだ、それぞれの助手達はというと。
坂上君と安曇さんはそれぞれ顔を見合わせてだ、喫茶店で紅茶を飲み合いながら話すのだった。
「何かね」
「うん、そうだね」
「うちの博士もね」
「こちらの博士も」
二人共困った顔で話す。
「無茶苦茶だから」
「何をするかわからないわよね」
「しかもさ、相手のことを大嫌いって言っててもね」
「お互いのことは誰よりもわかっておられるのよね」
「以心伝心っていうかね」
「ツーカーでね」
嫌い合いながらもだ、それでもだというのだ。
「お互いに認め合ってね」
「仲が悪いとは言ってもね」
「ライバル同士だよね」
「それも絆のある」
「複雑な関係だよ、幼馴染みでもあるし」
「ずっと続いているもので」
それこそ何十年、昭和初期からだ。本当に強い絆である。
その絆からだ、彼等は話すのだった。
「迷惑千万な人達だけれど」
「トラブルどころか災害も起こすし」
「それでも。正々堂々としているから」
「いいのかしら」
首を傾げさせつつも納得する二人だった、そうして。
二人にしてもだ、お互いに。
「じゃあ僕達はそれぞれの博士とね」
「一緒にやっていきましょう」
「うん、正々堂々とね」
「仲がいいのか悪くないのかわからないけれど」
二人も何だかんだで話す、そして。
お互いに紅茶を飲む、そうして笑みを浮かべ合ってこれからのことを誓うのだった、二人も。
マッドライバル 完
2013・8・2
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