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マッドライバル

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第八章

「あそこじゃ」
「鳥取ですか」
「梨のな」
 鳥取といえば梨だ、それでだというのである。
「それを食しながら戦うとしよう」
「秋ですしね、そろそろ」
 海といっても泳ぐ季節ではなくなっている、海には水着の美女ではなく海月が漂う状況になっては色気も何もない。
「そういうことですね」
「うむ、ではどの恐竜を復活させるかな」
「それはここからですね」
 こうした話をしながら戦艦で退く二人だった、そして。
 飛行船の倉田もだ、こう安曇さんに言うのだった。二人の撤退も悠然としている。
「次は海で戦うわ」
「向こうもそうしてきますか」
「私はね、あいつの心がわかってね」
 そしてだというのだ。
「向こうも私のことがわかるのよ」
「だから博士が海と仰ればですね」
「向こうもそれで来るわ」
 間違いなくだ、そうなるというのだ。
「そして今度開発するのはね」
「何になりますか?」
「生物兵器よ」
 ここまで以心伝心でわかる、まさにツーカーの関係である。
「それも恐竜でいくわね」
「恐竜ですか」
「ロマンよ」
 恐竜自体がロマンというのだ、子供達が巨大な太古の動物達に憧れを抱くのはそのせいであろうか。
「それをね」
「次の戦いで復活させてですか」
「ええ、勝つわ」
 今度こそだと、倉田は飛行船の中で仁王立ちしたまま言う。
「絶対にね」
「では次こと勝つ為に」
「早速準備に入るわよ」
「わかりました」
 こう話してそのうえでだった、二人も悠然と退いた。やはり左翼政党のスタッフの嘆きなぞ全く耳に入っていない。
 そして秋の鳥取の海でだ、池上と倉田は激突したのだった。鳥取の砂丘の海において。
 二匹の巨大な恐竜が対峙していた、砂丘において池上が坂上君を従え安曇さんを後ろに控えさせている倉田に豪語していた。
「わしのモササウルスに勝てるか」
「あら、私のティロサウウルスは無敵よ」
 二人共腕を組み双方を自信に満ちた笑みで見据えながら話す。
「勝てはしないわ」
「ふん、モササウルスは海の王者だったのじゃぞ」
「それはティロサウルスへの言葉ね」
 見れば海には十五メートル位の鰐に似た恐竜達がいる、どちらもその四本の足は鰭になっている。外見はよく似ている。
 その彼等をだ、二人はそれぞれ誇って言うのだ。
「では今から竹島まで周回させてじゃ」
「どちらがより速いか勝負よ」
 今回は戦闘ではなくレースで争うのだった、そして早速鳥取の砂丘の海から竹島まで走らせる。だがその竹島周辺において。
 二匹の恐竜達はたまたまその辺りで漁をしていた某国の不法漁民達を襲いだした、小舟を体当たりで転覆させて落ちた彼等を餌食にしだしたのだ。
 レースよりもまず食事だった、恐竜達は忽ち彼等を食らっていく。
 池上も倉田もレースの状況は砂丘から梨を喰らいつつノートパソコンのモニターで確認している、坂上君もそれを見て池上に問うた。
「あの、食事はじめましたけれど」
「そうじゃな」
 梨を食いつつ平然と答える池上だった、ノートパソコンは出して来たテーブルの上に置き椅子に座って坂上君が剥いて切ってくれた梨を美味そうに食いながら。 
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