マッドライバル
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第四章
「巨大飛行船を作ってね」
「池上博士と戦われますか」
「そして勝つわ」
目を燃え上がらせての言葉だ、目の炎は強くなる一方である。
「今度こそね」
「引き分けではなくですね」
「ええ、今度こそはね」
絶対にだというのだ。
「私が勝つわ」
「そうですか、それにしても博士は」
安曇さんは美貌も誇る自分の師匠に対して冷静かつ知的なものごしで尋ねた。
「前から思っていましたが」
「何かしら」
「はい、池上博士とは終生のライバルでしたね」
「そうよ、自他共に認めるね」
まさにそうした関係だというのだ。
「尋常小学校の頃からのね」
「そうでしたね」
「そうよ、それがどうかしたの?」
「ライバルですが憎しみとかはないんですね」
「嫌いなことは嫌いよ、お互いにね」
嫌い合ってはいるというのだ、子供の頃から。
「だから常にいがみ合ってきたのよ、何かにつけてね」
「けれどそれでもですか」
「憎しみはあるかっていうとね」
それは、というのだ。
「そうした感情ではないわね」
「そうなんですね」
「そうよ、それとね」
「それと?」
「私達は勝つことは考えているわ」
このこともお互いにだ、それこそ喉から手が出るまでに望んでいることである。だがそれでもだというのだ。
「けれど卑怯なことはね」
「一切されませんね」
「正々堂々と戦って勝つ」
そうしてこそだというのだ。
「本当に勝つってことだからね」
「だからですね」
「そうよ、卑怯なことはしないわ」
それこそ絶対にだというのだ。
「例え何があろうともね」
「自衛隊や警察が止めに入ってもですね」
「私達の勝負に邪魔立ては無用よ」
倉田は腕を組んだ姿勢で豪語する、その腕の上に豊かな胸が乗っている。その大きさは九十は普通にある。
その大きさの胸も誇ってだ、そして言うのだ。
「そんなものは蹴散らしてね」
「そしてですね」
「ええ、今度こそね」
池上に勝つというのだ、こう自身の海中基地で豪語してだった。
倉田も兵器の開発を進めた、そして某左翼政党のビル上空に置いて。
両者は激突した、池上は大和を彷彿とさせる三連の砲塔を前に三つ、後ろに二つ置き機関砲座やミサイルランチャーを艦橋の左右に置いた空飛ぶ戦艦の艦橋に坂上君と共にいる。
その艦橋においてだ、彼は仁王立ちして言うのだった。
「この戦艦は強いぞ」
「人工知能の性能もいいですしね」
「うむ、それも最新型じゃ」
池上は勝利を確信している笑みで言い切る。
「だからこそな」
「今度こそはですか」
「わしが勝つ」
必ず、だというのだ。
「そうなるわ」
「そうですね、ただ」
「ただ。何じゃ?」
「若し下に落ちたら」
坂上君はその場合にどうなるかを己の師匠に話した。
「下のビルが」
「ああ、あの無能で腐敗した組合政党か」
「はい、洒落になりませんよ」
「何、どうということはない」
このことについてもだ、全く意に介していない池上だった。そして言うことはというと。
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