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ダリア

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第四章

「ところで」
「ところで?」
「賭けをしたいけれど」
 思わせぶりな笑みでだ、マルカーノに言って来たのである。
「いいかしら」
「賭けとは」
「ええ、若しこのダリアが三ヶ月先も香っていたなら」
「ダリアの香りは残りますよ」
 マルカーノは花屋だ、それだけに店に置いてある花のことはそれこそ己の手足の様に知っている。それでこう答えたのである。
「かなり長く」
「あら、知ってるのね」
「花屋ですから」
 まさにそれによってだというのだ。
「ダリアのことも」
「そうなのね、じゃあ三ヶ月後にね」
「三ヶ月後ですか」
「貴方を招待したいわ、そちらの若い人もね」
 ヒメネスも見てだ、そのうえでの言葉だった。
「そうしたいけれど」
「僕もですか」
「そう、二人共ね」
「それはどうしてですか?」
「その時に話すわ」
 三ヶ月後にだというのだ。
「それでいいわね」
「わかりました、それでは」
「またね」
 三ヶ月後だ、そう話してだった。
 美女はこの日もダリアを買って帰った、ヒメネスはこの日もその背ドレスが大きく開いて見えているその素肌を見ながらマルカーノに言うのだった。
「一体何があるんでしょうね」
「わからないな」
 腕を組んで首を傾げさせてだ、マルカーノはヒメネスに応えた。
「僕への告白ならいいけれど」
「そんなハッピーエンドありますかね」
「探せばあるだろうけれどね」
 しかしだとだ、マルカーノは普通の現実から話した。
「実際はね」
「それ程はですね」
「ないものだよ」
 そんな恋愛小説の様なことはというのだ。
「実際の恋愛はロマンスよりもシビアだよ」
「何か厳しい言葉ですね」
「失恋をするとね」
 そこから学ぶというのだ。
「そういうものだからね」
「そういうものですか」
「そうだよ、けれど三ヶ月後か」
 マルカーノもこの三ヶ月後という美女が言った言葉から言った。
「何があるかはね」
「楽しみにしておきますか」
「お店をやりながらね」
 つまり働きながらだというのだ。
「そうしようか」
「そうですね、今あれこれ考えても仕方ないですし」
「サッカーの試合を観てワインを楽しんで」
 この二つでだというのだ。
「そうしようか」
「はい、じゃあ」
 ヒメネスも応えてだ、二人はその三ヶ月後を待つことにした。三ヶ月の間美女は数日に一度の割合で店に来てダリアを買っていった、そして。
 二人は店で働き続けた、不況だが店は何とか普通にやっていた。そしてその三ヶ月になったその時にだった。
 美女は店に来てだ、マルカーノとヒメネスに微笑んでこう言ったのだった。
「じゃあ案内するわね」
「はい、それでそこは一体」
「何処ですか?」
「この街ではなくてね」
 では何処なのか、美女は二人に語った。
 ドレスの懐から地図を出してだ、そして言うのだった。見れば地図のある場所に赤いバツで印が点けられている。
 その印を見せてだ、こう言うのだ。 
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