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第一章

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 宮部由紀はその話を聞いた瞬間まずは己の耳を疑った。
 それでだ、目の前にいる彼、若林達也にこう返した。
 達也は強い眼差しを持っている青年だ、奥二重の目は少しつり上がり菱形である。眉は普通の濃さで目と一緒にやや斜め上に向かっている。
 口元はしっかりとしていて鼻の形もいい、白い顔は細く髪は女性で言うショートヘアでやや茶色にしている。一七五程の身体は均整が取れている。
 その彼にだ、由紀はこう問い返したのだ。
「あの、今なんて」
「うん、だから今度の日曜にね」
 達也は驚いている由紀にまた言った。
「デートに行こうよ」
「デートって」
「俺達付き合って結構経つけれどね」
 それでもだとだ、彼は喫茶店で向かいの席に座る由紀に言う。前にはそれぞれコーヒーカップが置かれている。
「そういうのまだじゃない」
「だからなの」
「こうして二人でいつもいるのもいいけれど」
「デートもなのね」
「そう、それをしようよ」
 こう由紀に言うのだ。
「そうしようね」
「そうなの」
 由紀はそのおっとりとした感じの顔を驚かせたまま応える。大きな一重の目は睫毛が長く黒い眉は感じの位置を書いた様にそれぞれある。額はかなり隠れている。
 黒髪を綺麗に伸ばしていて大きな耳がその間から見える、ふっくらとした頬にピンク色の大きな唇がある、鼻は結構大きい。
 一六三位の背ですらりとしたスタイルだ、ピンクの上着とミニスカートに白いハイソックスという出で立ちである。
 その由紀がだ、こう達也に言うのだ。
「デートね」
「うん、由紀ちゃんはどうかな」
「いや、断る筈ないから」
 これが由紀の返事だ。
「それは」
「そう、じゃあいいよね」
「それで何処に行くの?」
 由紀はデートをする場所を尋ねた、今度は。
「一体」
「テーマパークはどうかな」
 達也が出した場所はそこだった。
「そこでどうかな」
「そうね、じゃあね」
 由紀に異論はなかった、それでだった。
 達也の言葉に笑顔で頷く、それでこうも言ったのである。
「今度の日曜ね」
「一緒に行こうね」
「何か夢みたい」
 ここでこう言った由紀だった。
「本当にね」
「夢みたいって?」
「いや、私も大学生だし」
 驚きと喜びを隠せないままにだ、由紀は達也に自分のことを語っていく。
「前に付き合ってた相手もいたし」
「そうなんだ」
「それでデートもしたことあるけれど」
 自分のその経験を話すのだった、ここで。
「いや、それでもね」
「俺とのデートははじめてだから」
「達也君が今まで一緒にいた人の中で一番好きだから」
 無意識のうちに爆弾発言もした、達也も由紀の今の言葉に顔を真っ赤にさせて由紀もそれを見たがもう止まらなかった。
「だからね、もう嬉しくて」
「それでなんだ」
「驚いて、じゃあね」
「今度の日曜にね」
「一緒に行こうね」
 達也に対して満面の笑顔で告げた。
「それで一杯楽しもうね」
「うん、じゃあね」
「今度の日曜に」
 その日曜の話をするのだった。 
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