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第五章
「そうなんだ」
「やっぱり歳のせいかな」
「それでも他の場所が健康になるのなら」
「効果は出ているよね」
「間違いなくね」
このことは確実だとだ、間宮も言う。
そして新島が今も食べている大蒜を焼いたものを見つつだ、こうも言うのだった。
「そうそう、大蒜だけじゃなくてね」
「他のものもだね」
「椎茸もいいんだよ」
この茸も話に出すのだった。
「あれはまさに栄養の塊だよ」
「不老長寿の薬にもなるっていうのね」
「そうだよ、だからね」
「椎茸もだね」
「食べるといいよ、とにかくね」
何でも食べてみろというのだ、間宮は親友に対してかなり親身になっていて新島の方も彼に応えて健康というか精力を回復させようと躍起になっていた。
だが本当に何も動かない、それでだった。
新島も途方に暮れていた、その時に。
ふとだ、仕事の休憩時間に部下にこんなことを言われたのだった。まだ入社したての若い男の部下である。
彼は笑ってだ、新島にこんなことを言ったのである。
「最近の女子高生の制服ですけれど」
「どうかしたのかい?制服が」
「はい、また変わったんですよ」
「変わったというとデザインがだね」
「ええ、スカートの中ですけれど」
制服は制服でも言うのはこのことだった。
「スパッツなんですよ」
「ああ、中が見えない様にだね」
「はい、それでなんです」
「だったら短くしなければいいと思うけれどね」
「そこはファッションなので」
どうしてもそうしなければならないというのだ、ファッションは時としてそうした合理性や健康を無視してしまうものだ。
「しない訳にはいかないんですよ」
「成程ね」
「けれど見られるのは嫌なんで」
下着をだ。
「だからなんです」
「下にスパッツをはくんだね」
「しかも冬は温かいですよね」
この効果もあるというのだ。
「ですから」
「それでなんだ」
「はい、流行ってるんですよ」
「そういえば昔はスパッツなんてなかったね」
「ブルマでしたよね」
「僕が学生の頃はね」
こう部下と話す、幸い今二人の周りには女子社員はいない。休憩室にお菓子があるのでそれをお茶と一緒に楽しんでいるのだ。
「そうだったよ」
「ブルマですか」
「君の年代ではもうないよね」
「ええ、消えていました」
完全になくなっていたというのだ。
「影も形も」
「そうだよね」
「部長の頃は全盛期でしたよね」
「うん、そうだったよ」
最早遥か過去の話だ、新島の青春時代いやブルマがあった時代は。
「高校までね」
「そうでしたね、けれど私等の頃は」
もうなかった、部下はこう話す。
「体操服の下はスパッツか半ズボンでした」
「それでスパッツだね」
「部長の頃は下はあれですよね」
「うん、勿論ね」
ブルマだというのだ。
「そうだったよ」
「そうですよね」
「本当に変わりましたよ」
遠い目にもなる部下だった。
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