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アジアの踊り

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第六章

 オーナーはその話を受けてすぐにカクテルを作りはじめた、それを作りながら笑顔でこんなことを言うのだった。
「いや、この国にいますとね」
「面白いっていうんだね」
「ええ、色々な国の人間と出会えて話せますから」
 こう言うのである。
「いいんですよ」
「色々と規律の多い国だけれどな」
「それでもですよ」
 いいというのだ。
「とても」
「そうなんだな」
「お話を聞く限りお客さん達はそれぞれ国が違いますね」
 同じ東南アジアだがそれでもである。
「その違う国同士の人間が一同に会して踊って飲めるなんてことはね」
「この国ならではだよな」
「私、ムワラッド=モハマドも」
 オーナーはここで自分の名前も名乗った、カクテルのシェイクを続けながら。
「だからこの国にいるんですよ」
「それでか」
「はい、そうなんですよ」
「成程な、それじゃあな」
「今から出来ますからね」
 こうした話をしながら今度は飲む彼等だった、そして。
 彼等はまた酒を楽しんだ、その中でリューが一同に言った。
「またこうしてですね」
「そうね、この顔触れで会ってね」
「楽しみたいわね」
 ワルシャーンとハマラージが笑顔で応える。
「国は違えど意気投合出来てね」
「楽しめたから」
「では今日は心ゆくまでお楽しみ下さい」
 リューもまたカクテルを作っている、とはいってもサイチチャン達とは別の客達へのカクテルであるが。
「今宵は」
「そうだな、それじゃあな」
「今夜はね」
「そうさせてもらうわ」
 三人も笑顔で応える、そして。
 後ろからピアノが聞こえてきた、彼女の奏でるピアノだ。
 彼等はそのピアノの音にも酔いながら酒と今度は踊りは観て楽しんだ。シンガポールのあるバーでの話である。


アジアの踊り   完


                       2013・7・21 
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