Element Magic Trinity
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届け あの空に
「いあー!終わった終わったーっ!」
「あいさー!」
ナツとハッピーが両腕を空に突き上げ、叫ぶ。
「本当・・・一時はどうなるかと思ったよ。凄いよね、ウルさんって」
「デリオラが叫びだした時はもう人生が終わるかと思っちゃったよ」
ルーシィが溜息まじりに、ルーがいつもの笑顔を浮かべて呟く。
「これで俺達もS級クエスト達成だーっ!」
「やった-!」
「もしかしてあたし達『2階』に行けるのかなっ!」
「行けるよ!だってS級クエスト終わらせたもん!」
「はは・・・」
歓喜に沸く5人。
・・・が、そこにその喜びを一気に消す声が1つ。
「まずはこの先もギルドにいられるかどうかの心配をしたら?」
ゴゴゴゴゴゴ・・・と背後に怒りのオーラが見える様な表情で5人を睨むエルザ。
睨む事も感情を出す事もせず、ただいつも以上の冷たい瞳で5人を見つめるティア。
そんな2人を見た瞬間、5人は恐怖で身体を震わせ、汗を流す。
「そうだ!お仕置きが待ってたんだ!」
ヒィィィィ・・・と怯えるルーシィに、エルザが口を開く。
「その前にやる事があるだろう。悪魔にされた村人達を救う事が今回の仕事の本当の目的ではないのか」
「「「「「え!?」」」」」
「S級クエストはまだ終わっていない」
エルザの言葉に驚愕する5人。
「だ、だってデリオラは死んじゃったし・・・村の呪いだってこれで・・・」
「いや・・・あの呪いとかいう現象はデリオラの影響ではない」
「えぇ。月の雫の膨大な魔力が村人達に害を及ぼしたのよ。デリオラが崩壊したからといって事態が改善する訳ないじゃないの」
「そんなぁ~」
困ったようなルーシィに対し、こちらの3人は全く困ってなどいないようだ。
「んじゃ、とっとと治してやっかーっ!」
「あいさー!」
「どーにかなるよね!」
呑気にハイタッチを交わすナツ、ハッピー、ルー。
「どうやってだよ」
グレイは御尤も過ぎる言葉を呟き、後ろを振り返った。
「あ」
その先にいたのは、今までの会話を全部聞いていたリオンだった。
元はといえば、月の雫を使っていたのはリオンなのだ。
当然治し方も知っているだろう、と思ったのだが・・・。
「俺は知らんぞ」
返ってきたのは予想外の答えだった。
「何だとォ!?」
「だとォ!?」
「とォ!?」
「だってアンタ達が知らなかったら、他にどうやって呪いを・・・」
ルーシィの問いかけに対し、リオンが答える。
「3年前この島に来た時、村が存在するのは知っていた。しかし俺達は村の人々には干渉しなかった。奴等から会いに来る事も1度も無かったしな」
そのリオンの言葉に、一同は疑問を覚える。
「3年間1度もか?」
「そういえば、遺跡から毎晩のように月の雫の光が降りていたはずだよね。なのにここを調査しなかったのはおかしな話よね」
「月の雫の人体への影響についても、多少疑問が残る」
リオンの呟きに、ナツがつっかかる。
「何だよ・・・今更『俺達のせいじゃねぇ』とでも言うつもりかよ」
「3年間、俺達も同じ光を浴びていたんだぞ」
・・・が、リオンの正論に何も言えなくなった。
「気をつけな。奴等は何かを隠してる。ま・・・ここからはギルドの仕事だろ」
「そうはいかねぇ・・・お前等は村をぶっこ」
言いかけたナツの両頬をエルザが挟むように掴む。
そして思い出すのは、ここに来る前、1人で儀式をしていたトビーの言葉。
『シェリーや・・・お、俺達は皆・・・デリオラに家族を・・・殺された者同士だ・・・それでリオンに協力してたんだよ・・・リオンならデリオラを倒してくれる・・・俺達の恨みを、きっと晴らしてくれる・・・』
「奴にも奴なりの正義があった。過去を難じる必要はもうない。行くぞ」
「行こーったって、どうやって呪い解くんだよ」
「さあな」
「あらら・・・」
「てへっ」
そう言い、エルザは全員を率いて立ち去る。
が、グレイだけは残り、リオンを見ていた。
「何見てやがる」
「お前もどっかのギルドに入れよ。仲間がいて、ライバルがいて、きっと新しい目標が見つかる」
そう言われ、リオンは顔を背けた。
「く、くだらん・・・さっさと行け」
そしてそこには、リオンとティアが残る。
「何だ、お前はアイツ等について行かないのか?」
「どうしようが、私の勝手でしょ」
フン、とどこか不機嫌そうに言い放つ。
「・・・相変わらずだな、その性格の悪さは」
「何ですって?それを言うなら、アンタだっていろんな意味で変わってないわよ」
「なっ・・・いろんな意味とはなんだ」
「色々ありすぎて全ては言い切れそうにないわ」
ひょいっと肩を竦めるティア。
その横顔には微細な感情しか残っていない。
簡単に見れば無表情にも見える。
「それにしても、お前がいるとは思わなかったぞ」
「私だって来たくなかったわ。けどマスターに言われたら、行くしかないでしょ」
「妖精の尻尾と聞いた時からいる気はしていたんだがな」
リオンが苦笑する。
いや、苦笑というより、ただ口が弧を描いただけ、と言った方が正しいのかもしれない。
「・・・久しぶりだな」
「えぇ、久しぶりね。私がギルドに入ってからは1度も会っていないもの」
背中を預けていた岩から離れ、足を進める。
「またしばらくは会わないだろうな」
「それを願っているわ」
捻くれた言葉を吐き、その場を後にしようとする。
・・・が、途中でピタッと足を止め、ポシェットから箱を取り出し、リオンの横に置いた。
「?何だこれは」
「救急箱」
それだけ呟き、くるっと背を向ける。
「勘違いしないでよ?アンタの事なんか、微塵も心配してないんだから・・・ただ、傷だらけのアンタを放っておいたら、後々恨まれそうだから置いていくだけよ」
そして典型的はツンデレ発言を残し、足早に去っていった。
その後ろ姿を見届け、救急箱に目を移し、溜息をつく。
「・・・全く。素直じゃない所も、変わらんな・・・」
一方、こちらは村の資材置き場。
村を消された為、ここに村人がいるはず、なのだが・・・。
「あれ?誰もいない」
「ここに皆いたのか?」
「村が無くなっちゃったからね。でも・・・どうしたんだろ」
「おーい」
ハッピーが叫ぶが、返事はない。
「とりあえず、傷薬と包帯貰っとくぞ」
「あ、グレイ。手伝うよ」
「悪ィな、ルー」
テントから傷薬と包帯を取り出し、傷の手当てを始める2人。
するとそこに、1人の村人が走ってきた。
「皆さん!戻りましたか!?た、大変なんです!」
「!」
「と、とにかく村まで急いでください!」
「な、何これ・・・」
「昨日・・・村はボロボロになっちゃったのに・・・」
「元に戻ってる・・・」
上からルーシィ、ハッピー、ナツが驚愕の声を上げる。
そう。
昨日シェリー達の毒毒ゼリーによって、村はほぼ壊滅状態へと陥ったはずなのだ。
が、来てみればどうだろう。最初に村に来た時と同じ状態になっていた。
「あら、アンタ達。遅かったじゃないの」
「ティア・・・あれ?僕達について来てたんじゃないの?」
「個人的な用があったのよ」
言い寄ってくる村人の男達を追い払いながら、ティアが呟く。
「どうなってんだコリャ・・・まるで時間が戻ったみてーだ!」
「せっかく直ったんだし、アンタは触らないほうがいいと思う」
家の壁を容赦なくガンガンと殴るナツにルーシィがツッコむ。
「時間?」
ナツの頭に『ほっほっほっほっ』と笑うザルティの姿が思い浮かぶ。
「まさかな・・・いや・・・改心したとか・・・」
少しの間考える、が。
「ま・・・いっか」
「あいさー」
長々と考えるタイプではないので、すぐに考えるのをやめた。
「そーだ!」
「僕達の荷物っ!」
ルーシィとルーが駆けだす。
と、その目にボボの墓と、その前に座るモカが映った。
ギロッとモカが2人を睨む。
「村を元に戻してくれたのはあなた方ですかな?ほが」
「あ・・・いや・・・」
「そういう訳じゃ・・・」
「それについては感謝します。しかし!魔導士殿!一体・・・いつになったら月を壊してくれるんですかな!ほがーっ!」
「「ひぇーっ!」」
モカのあまりの迫力にルーシィとルーはたじろぐ。
すると、それに気付いたエルザが口を開いた。
「月を破壊するのはたやすい・・・」
「!」
「オイ・・・とんでもねぇ事しれっと言ってるぞ」
「あい!」
「しかしその前に確認したい事がある。皆を集めてくれないか」
少しして、村の入り口に村人全員が集まった。
「整理しておこう。君達は紫の月が出てからそのような姿になってしまった。間違いないか」
「ほがぁ・・・正確には、あの月が出ている間だけこのような姿に・・・」
「話をまとめると、それは3年前からという事になる」
「確かに・・・それくらい経つかも・・・」
「あぁ・・・」
エルザは喋りながら足を進める。
「しかし・・・この島では3年間毎日月の雫が行われていた」
ザッザッと砂を踏みしめる音が響く。
「遺跡には一筋の光が毎晩の様に見えてたハズ」
「!」
エルザの足元の地面の色が変わる。
そして。
「きゃあ!」
「!!!」
ズボォッと、落とし穴に落ちた。
覚えているだろうか。この落とし穴、ルーシィがバルゴに頼んで掘ってもらったものだ。
村が直った際に、落とし穴まで復活していたのだろう。
「お・・・落とし穴まで復活してたのか・・・」
「きゃ・・・きゃあって言った・・・ぞ」
「か・・・可愛いな・・・」
「い・・・意外、だね・・・」
「あたしのせいじゃない!あたしのせいじゃない!」
エルザの驚きの一面に、ナツとグレイとルーは驚く。
ルーシィは頭を抱え、唯一無言のティアはエルザの落ちた穴を眺めていた。
「つまり、この島で一番怪しい場所ではないか」
「うあ・・・何事も無かったかのようだぞ」
「たくましい・・・」
ぐいっと何事も無かったかのように穴から出てくるエルザに、村人がざわつく。
「なぜ調査しなかったのだ」
エルザの言葉に、村人が更にざわつく。
「そ、それは村の言い伝えであの遺跡には近づいてはならんと・・・」
「でも・・・そんな事言ってる場合じゃ無かったよね。死人も出てるし、ギルドへの報酬額の高さからみても」
ルーシィに言われ、更にざわつく。
「本当の事を話してくれないか?」
エルザに言われ、モカは少し考えた後、ゆっくり口を開いた。
「そ、それが・・・ワシ等にもよく・・・解らんのです・・・正直・・・あの遺跡は何度も調査しようといたしました」
ティアは落とし穴に向けていた目線を遺跡のある方向に向ける。
「皆は慣れない武器を持ち、ワシはもみあげを整え・・・何度も遺跡に向かいました」
「え?何でもみあげ?」
ルーの疑問はスルーされた。
「しかし、近づけないのです」
「!?」
「遺跡に向かって歩いても・・・気が付けば村の門。我々は遺跡に近づけないのです」
それを聞いて、全員が唖然とした。
・・・ティアは表情を変えていないが。
「ど・・・どーゆう事?近づけない?」
「俺達は中にまで入れたぞ!ふつーに」
「うん・・・別に道に迷うような場所でもないしね」
ナツとルーが疑問を抱く。
「こんな話信じてもらえないでしょうから黙ってましたが・・・」
「本当なんだ!遺跡には何度も行こうとした」
「だが、たどり着いた村人は1人もいねーんだ」
村人たちはがやがやと訴える。
「やはり・・・か」
「え?」
エルザが小さく呟いた。
「さすがは妖精女王。もうこのからくりに気が付くとはねぇ」
村に生える気の上で、左頬を腫らしたザルティが呟いた。
「ナツ・・・ついて来い」
シュワワワワワ・・・とエルザが換装する。
「これから月を破壊する」
ガシィ、ガシィ、と鈍い音を立てながら、エルザが言った。
「おおっ!」
「「「えーーーーっ!」」」
「本気なの?エルザぁ・・・」
「あら」
それに対し、ナツは嬉しそうに、ルーシィとグレイとハッピーは驚き、ルーは首を傾げ、ティアは少し驚いたような声で、それぞれ言いたい事を言ったのだった。
「今からあの月を破壊する。そして皆を元に戻そう」
それから少し、エルザとナツは村の高台にいた。
「目の前で見れるのか・・・月が壊れるのを」
「おお・・・」
「やっと元の姿に戻れるんだぁ」
村人たちは期待を込めた眼差しで2人を見つめる。
「エルザ、月を壊すならあの遺跡の方がいいんじゃね?ここより高いし」
「十分だ。それに遺跡へは村人は近づけんからな」
興奮気味のナツにエルザが呟く。
「月を・・・壊すって・・・」
「さすがのエルザでもそれは無理・・・だよな」
「な、何をするつもりだろ・・・?」
「ドキドキするね」
「いろんな意味でね・・・」
村人達と高台を見上げるルーシィ達も、不安だ。
まぁ、1名を除いて。
「この鎧は『巨人の鎧』。投擲力を上げる効果を持つ」
そう言ってスゥゥ・・・と手を上げ、ギィン、と上げた手に1本の槍が握られた。
「そしてこの槍は闇を退けし『破邪の槍』」
「それをぶん投げて月を壊すのか!うおおっ!すっげ!」
それを聞いたルーシィ達が『イヤイヤ・・・無理だから・・・』と思ったのは言わずとも解るだろう。
もちろん、エルザもただ槍を投げるだけで月に届くとは思っていない。
「しかしそれだけではあそこまで届かんだろう。だからお前の火力でブーストさせたい」
「?」
「石突きを思いっきり殴るんだ。巨人の鎧の投擲力とお前の火力を合わせて月を壊す」
「おし!解った!」
「いくぞ」
それを聞いたルーシィとグレイは小さく震える。
「2人とも、なんであんなにノリノリなんだよ・・・」
「まさか本当に月が壊れたりしないよね・・・」
「壊れるんじゃない?エルザとナツだし」
「月は壊れないわ、絶対に」
「?ティア?」
「絶対」とまで断言するティアを、ルーが首を傾げて見る。
が、それ以上ティアは口を開かない。
その間にも、エルザは槍を構えていた。
「ナツ!」
「おぉう!」
炎を纏った左の拳で、ナツは石突きを思いっきり殴る。
「そらぁ!」
それを見た全員が目を見開く。
「届けェェえええええっ!」
エルザの叫びに応える様に、破邪の槍はドグォンという漫符を見せるかのように勢いよく空へ上る。
そのまま空へと飛んでいく破邪の槍は、強い光を放ちながら月へ向かい、光った。
そして、ピキィ、とヒビが入る。
『おおおおおっ!』
「「うそだぁーーーーーーーーーーっ!」」
「つ、月が割れたぁっ!?アルカの為に写真撮っておかなきゃ!カメラカメラ・・・」
月にヒビが入ったのを見て歓喜する村人達、驚くルーシィとグレイ、慌ててカメラを探すルー。
ピキピキィ、とヒビは徐々に大きくなっていく。
そして、パキィィィィン、と割れた。
割れた・・・のだが。
「え!?」
「月!?」
「これは・・・」
そう。
割れたはずの月が、姿を現したのだ。
しかも紫ではなく、キラキラと輝く黄金の光を帯びて。
「割れたのは月じゃない・・・」
「空が割れた・・・?」
紫色の「それ」は欠片となって落ちていく。
「どうなってんだ!コレぁ!」
「この島は邪気の膜で覆われていたんだ」
「膜?」
ハッピーが繰り返す。
「月の雫によって発生した排気ガスだと思えばいい。それが結晶化して空に幕を張っていたんだ。その為、月は紫に見えていたという訳だ」
エルザが説明を終えると、村人が綺麗な光に包まれる。
「邪気の膜は破れ・・・この島は本来の輝きを取り戻す」
光が消える。
そして村人たちの姿は元に・・・。
「・・・」
「あ」
「・・・」
「あれ・・・」
戻らなかった。
「けど・・・元に戻らねぇのか・・・?」
「そんな・・・」
「いいえ、これで元通りなのよ。でしょ?」
「あぁ」
エルザがいつもの鎧に戻る。
「邪気の膜は彼らの『姿』ではなく、彼らの『記憶』を冒していたのだ」
「記憶?」
「そう。『夜になると悪魔になってしまう』・・・という、間違った記憶ね」
ナツは意味が解っていないようだが、ルーシィは解ったようだ。
「ま・・・ま・・・まさか・・・」
「そういう事よ」
ティアが呟き、エルザが頷いて続ける。
「彼らは元々悪魔だったのだ」
その言葉にナツは愕然とし、ルーシィは悲鳴を上げて座り込み、あの驚いているかどうかよく解らないルーでさえ、あんぐりと口を開けていた。
「ま・・・マジ?」
「う、うむ・・・まだちょいと混乱してますが・・・」
グレイが村人の1人に訊ねる。
「彼等は人間に変身する力を持っていた。その人間に変身している自分を本来の姿だと思い込んでしまったのだ。それが月の雫による記憶障害」
「でも・・・それじゃあリオン達は何で平気だったの?」
「アイツ等は『人間』でしょ。どうやらこの記憶障害は『悪魔』にだけ効果があるみたいね」
ティアが肩を竦める。
「あの遺跡に村人だけが近づけないのも、彼等は悪魔だからだ。聖なる光を蓄えたあの遺跡には闇の者は近づけない」
そうエルザが説明を終えると、誰かがやってきた。
「さすがだ・・・君達に任せてよかった」
その男は、悪魔だった。
「魔導士さん、ありがとう」
それは村人の1人であり、ナツ達をこの島の途中まで連れてきてくれた船乗りであり、死んだと聞かされていた村長の息子・・・ボボだった。
「ボ・・・ボボ・・・」
「「幽霊!」」
「あああああっ!」
「船乗りのオッサンか!?」
突如現れたボボにモカは震えながら呟き、ルーシィはハッピーを抱え、ルーはそんなルーシィをハッピーごと抱きしめ、グレイは驚愕の声を上げた。
「え・・・!?だって・・・えぇ!?」
「胸を刺されたくれェじゃ、悪魔は死なねェだろうがよ」
驚愕する村人に、豪快に笑ってみせるボボ。
「あ、あんた、船の上から消えたろ・・・」
グレイが問いかけると同時に、しゅっとボボが消えた。
「あの時は本当の事が言えなくてすまなかった」
「おおっ」
ボボは羽を広げ、空を飛んでいた。
船から消えたのは、空を飛んでいたからだろう。
「俺は1人だけ記憶が戻っちまってこの島を離れてたんだ。自分達を人間だと思い込んでる村の皆が怖くて怖くて。ははっ」
笑いながらそう語るボボを見て、モカは涙を浮かべる。
そしてボボの様に羽を広げ、ボボに向かって飛んでいった。
「ボボー!」
「やっと正気に戻ったな、親父」
それを見た他の村人達も、羽を広げて飛んでいく。
「ふふ・・・悪魔の島、か」
「でもさぁ・・・皆の顔見てると・・・」
「悪魔ってより、天使みてーだな」
黄金に輝く月をバックに飛ぶ村人達を見て、エルザ、ルー、ナツは呟いた。
「今夜は宴じゃー!悪魔の宴じゃー!」
「何かすごい響きね、それ・・・」
「あい」
「ご覧になりました?」
『あぁ』
一方、ザルティは水晶玉にそう呟いていた。
『なぜ村を元通りに?』
「サービス♪」
『やれやれ・・・』
水晶玉に映る人物は溜息をついた。
『しかし・・・思いのほかやるようだな・・・』
頬杖をつく水晶玉に映る男は、薄い笑みを浮かべる。
『妖精の尻尾。俺達の邪魔にならなければいいがな』
そう言うのは、ジークレインだった。
バッとザルティが仮面を取る。
もわもわ・・・と煙が起こり、中年男性の顔が、若い女の顔になる。
「そうね」
そこにいたのはザルティではなく・・・ウルティアだった。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
10月1日から始めて、10月の終わりにガルナ島編まで終わる・・・。
どんだけ更新しまくっているんだ、私は・・・。
感想・批評、お待ちしてます。
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