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BlackLagoon~Twilight which falls~

作者:虎龍
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Crazy twins

 
前書き
前回でも分かる通り話の進み方は既に大きく変えています。どうなることやら…。 

 
「よぉバン。よくもまぁ昨日今日で店の備品揃えられたな!」

 まるで何にも悪びれてない様子のレヴィを見てさすがのバンも呆れ顔になる。しかし実際問題昨日今日で蜂の巣にされた店の備品が綺麗に元通りなのだから驚きを隠せない。既に何回も半壊しているyellowflagの店主だからこそなせる技なのだろう。単純に備品を常に余分に保持しているだけだとは思うが。まぁ事前にアクシデントに備えると言う事は良い事には変わりない。

「どの口が言うんだが…」

 口ではそうぶっきらぼうに放ちながらも俺とレヴィの目の前に飲み物を奢りで提供してくれる。言わいるツンデレと言っても過言ではないかもしれない。

「それにしても…見ろよ。みんな銃をぶら下げてる」

 カウンター席から後ろに目を回しテーブルの方で飲んでいる集団に視線を向けてみれば、皆が皆銃を腰にぶら下げている。ロアナプラでは何ら珍しくはない光景ではあるが、皆が皆こうも露骨に銃を見せびらかしていると言うことは皆が皆危険に敏感になっていると言うことでもあり、同時に互いを警戒していると言う事でもある。

 なんせホテル・モスクワに喧嘩を吹っかけた犯人の素顔は未だに割れてはいないのだから。

「当然だな。パニッシャー気取りのイカレやろうがうろついてんだからよ。今のロアナプラはポップコーンだ。十分火が通って爆裂するタイミングを待ってるのさ」

 ポップコーン、か。また上手い例えだ。

 だけどロアナプラが余所者の攻撃で爆裂するとは思えない…それこそ相当のイカレ野郎が手練でなければ。更には今回喧嘩を売ったのはホテル・モスクワ。引いてはキリングマシーンの元軍隊を率いるバラライカさんにだ。バラライカさんが負ける姿など…微塵も想像出来ない。

「聞いたかレヴィ。賞金が出たぜ」

 カウンター越しにそう俺達に教えてくれたバンの台詞に思わず目頭を抑えてしまう。

 おいおい、賞金の話を持ちかけないでくれよ…レヴィが調子のってその話に乗ったらどうするつもりなんだ。

「いくらだ?」

「五万だとよ。バーツじゃねぇ。米ドルでだ」

「へぇ…悪くはねぇな」

「ちょっと待てレヴィ。依頼を忘れたのか?」

「おっと、そうだった」

 そう、今の俺達は懸賞首を狩りに出かけるわけにはいかない。ラグーン商会には依頼が来ているのだから。遊んでいる暇などはない。それも依頼主が…バラライカさんだけに余計だ。電話越しに話したバラライカさんのあの冷たい声。思い出すだけでも寒気がする。

 今回の件、間違いなくバラライカさんは犯人を殺しにくる。それも只殺すだけでは済まない。この街に住み着き、人の憎しみに慣れてきたからこそ分かる。あれはちょっとやそっとの憎しみではない。あの感情だけで人を殺せるんじゃないか、って程に相手を憎んでる。

 そんな憎しみの渦中にいるバラライカさんに頼まれた依頼は犯人の捜索。既にヒントを得て相手の特長などは大体だけど予想がついている。それで今は犯人を探している最中なのだが、息抜きが必要と言う事でレヴィに連れられ結局yellowflagで飲んでいると言う訳。

 こんな姿をバラライカさんに見られたら…体の風通しがよくなりそうだ。

 体に穴が空きまくった自分の死体を想像すると鳥肌がたってきた。それを振り払うかのようにアルコール度数の高い酒を一気に喉奥に流し込む。

「お前らいま仕事中なのか。酒なんて飲んでて大丈夫なのか?」

「構いやしねぇよ。それにロアナプラでホテル・モスクワが総動員で探してるのに見つからねぇんだ。あたしらが探した所で簡単に見つかりやしねえ」

 そう、そこなのだ。ロアナプラでは頭を張れる程に巨大な力を人員を持ったホテル・モスクワが総動員で犯人を探していると言うのに犯人が見つかっていない。なのに今回のバラライカからの依頼。正直な所バラライカさんが何を思って俺達に今回の依頼を回してきたのか分からない。

 ラグーン商会で皆同様に疑問を感じていた。少なくとも僕とレヴィ、そしてベニーは首をかしげていた。ダッチのあの様子を見るからに何か勘付いていそうではあったけど。

「まぁなんでも構わねぇけどよ。とばっちりだきゃあご免だね」

「心配性だぜばお。ここは中立地帯だ、誰も手は出させねぇよ」

 一体全体どの口がそれを言うのか。俺もバオも視線を合わせ大きくため息をこぼした。と、その時。

「よぉ!二挺拳銃!相ッ変わらずシケた酒飲んでんなぁ!どうよ景気は!?」

 大きな声を上げながらレヴィの隣に腰を下ろした金色の髪の女性。ロアナプラで協会のシスターをやっている女性だ。シスターと言ってもその中身は当然常識が通じるものではなくエダの務める協会は裏では武器の売買を行っている。

 そんなエダとレヴィの関係はと言うと…犬猿の仲とでも言えばいいのだろうか?仲は悪くはないが、良くも見えない。二人の間では何か強い結びがあるのかもしれないが、俺にはよく分からない。

「何よぉ、色男も一緒じゃん。はぁい元気ぃ?こんなイノシシ女と飲んでないでさ、あたしと遊ばない?」

 エダの日課は神に祈りを捧げることではなく、街の男漁り。決して俺に惚れているだのなんだのそんな浮かれた話ではない。

「ひでるからって男漁りに来てんじゃねぇよ。それにイノシシって誰のことだ。殺すぞ」

 イノシシか…中々にレヴィにあった動物かもしれない。

 あながち間違ってはいない例えに笑いそうになるがどうにか堪えた。此処で俺が笑えばレヴィの矛先は間違いなく俺の方に来ると分かっているからだ。

「わぁ怖い。聞いた色男?こいつってば万年生理不順なのよぉ」

「おうエダ。表出ろ。いいから表出ろ」

「いきんなよ二挺拳銃。喧嘩しに来たんじゃねぇよ、いい話があんのよぉ。金になる話」

「…人狩りの話だろ?」

「レヴィと丁度その話をしてたところだ。だけどこいつらは仕事があるらしくてな」

 今まで黙って様子を見ていたバオがそう言うと、金の話を持ってきたエダは面白くなさそうに顔を顰める。

「仕事だぁ?あんた人狩り狩れば五万だよ五万?この額よりも仕事の方が美味しいってのかい?」

 エダの言葉に俺とレヴィは互いに顔を見合わせ同時に口を開いた。

「「十万」」

 そう、内容は酷く不穏な匂いがするが、俺達ラグーン商会はバラライカから出されたこの額にまんまと釣られてしまった。リーダーであるダッチには何か考えがあるかもしれないが、特に今回yellowflagを壊した請求額が溜まっている俺とレヴィは簡単に食いついてしまった。

 情けない話だが現実金がなければ生きていけない。仕方のない話なんだ…。

「十万!?私にも少しはよこしな」

「はぁ?ふざけた事言ってんじゃねぇよ」

「ったく…羨ましい限りだよ。まぁ折角話に来たんだから良い情報教えてやるよ。既に気の早えのはもう動いてるよ。マフィアは当然としてフリーの殺し屋も集まってる。聞いたところじゃユン兄弟、ビッグワンエミリオ、ロミーKCが街に入ったってよ」

「凄えな。殺し屋の見本市だ」

「他の連中もだ。グリントゥース、ジョニーの野郎なんて傑作だぜ。うちに象撃ち用のライフルを注文しにきやがった。何考えてんだがな」

 象撃ちライフルって…おいおい。一体何と戦うつもりだ。相手は人間だぞ?

 …だけど話を聞くだけでも相手は相当の手練だと分かる。何せバラライカさんが動いていると言うのにまだ捕まらないのだから。この小さい街で…。

 それにしも今名前が上がった人達とは早取り合戦になるっていう事か。これは何時も通り平穏に終わることはないだろうな。

「恐竜とでも思ってんじゃねぇの?あんなんで人撃ったらなくなっちまうよ」

「まぁあの馬鹿は置いておいて、ぼやぼやしてっと持ってかれるぜ、せいぜい仕事の方頑張るこったな」

 エダは最後にそう言った後に腰を上げ、yellowflagを出て行った。

 エダがyellowflagを出たあと、重い空気が俺達を包んだ。今回の話、先程も思ったが相当きつい仕事になる。何せバラライカさんの依頼でもあり、他の殺し屋も動いているのだから。此処で失敗なんて言う言葉は許されない。

 …まずは情報だ。俺に出来る事は…それぐらいしかない。

「レヴィ、そろそろ行こう。エダの言うとおりぼやぼやしてられない」

「…ったく、まだ飲み足りねぇってのによ」

 口では何かぼやきながらもしっかりと俺の言う事を聞いてくれた。

 俺達二人はそのままバンに金を支払い、yellowflagを後にした。









  
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