パンデミック
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第十六話「強き兵士」
ーーー【レッドゾーン "エリア48"内 とある建物の屋上】
「スコーピオ」
「…………………………」
「おい、スコーピオ」
「…………………………」
「聞いてんのか!?おい!」
「聞こえている。近くで喚くな、ハエが。それと大声出すな。気づかれる」
「実戦データは?」
「上々だ。うまい具合に戦場を引っ掻き回してくれている」
「"マンティコア"か………さすが、お前の自信作だけあるな」
「さてさて、"エクスカリバー"諸君。何人生き残れんのかなぁ?」
ーーー作戦開始から30分
ーーー【"エリア48" 大通り】
ソレンスの活躍は目覚ましいものだった。
感染者が複数襲いかかってきても、怯まずに立ち向かった。
感染者の顔面に膝蹴りを食らわせ、怯んだ隙に、首にナイフを突き立てる。
素早くナイフを逆に持ち変え、うしろから来た感染者の頭を切り裂く。派手に血を吹きながら倒れた。
「ふぅ……これで片付いたな……………っ!?」
一息ついたソレンスの背後に、突然の衝撃。
感染者がソレンスの背中に突っ込んできたのだ。
「オオォォオオォオォオオ!」
バランスを崩しうつ伏せに倒れるソレンス。猛獣のような咆哮。
まずい………殺される!
その時……
「やあああぁぁぁぁぁ!」
一人の兵士が、叫びながら武器を降り下ろす。
ザシュッ
感染者の頭が、ククリの斬撃で深く抉れた。後頭部から頭の中心まで斬れている。
ソレンスは感染者の死体をどかし、自分を助けてくれた兵士の方に顔を向けた。
以外な人物だった。
「ユニ……?」
「ハァ……ハァ……間に合って…よかった……」
ユニだった。ソレンスは心の底から驚いた。
「お前……なんでここに?」
「ソレンスが一人で戦ってるところを見かけて……追いかけて来ちゃった」
ユニは苦笑いを浮かべて言った。そんなユニを見て、ソレンスは少し申し訳ない気持ちになった。
こんなか細い、少女のような子が、自分を助けに来てくれたというのか……
………情けないな、俺は……
「ソレンス?……大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ………?」
ふと、ユニが手に持っているククリが目についた。
ん?たしか、ユニの武器は……
「ユニ、お前の武器って、たしかダガーじゃなかったか?」
「あ、これ?……クレアさんがくれたの。"これの方が殺傷力が高いから"って」
「そう……か………」
ユニは元々、争い事を好まない人間だった。
女性だから、と言えばそうなのだが、同期がケンカをすれば必ず仲裁に入る。
言ってしまえば、彼女は優しすぎるのだ。
優しすぎる性格から、同期には"兵士に向いていない"とよく言われていた。
そんなユニが、自ら望んで殺傷力の高い武器を持っている。
ソレンスにとって、それは複雑な心境だった。
兵士にならなければ……この子は…………
「心配しないで、ソレンス。これは私が望んだこと」
「クレアさんにもらったこの力で……私は誰でもいいから……助けたい」
ユニは、優しさを保ったまま強さも選んだ。
オルテガは、恐怖に打ち勝って戦場に来た。
俺も……………強くならないとな…………………
ーーー【"エリア48" 時計台通り】
グシャッ グシャッ グシャッ グシャッ グシャッ グシャッ グシャッ グシャッ グシャッ グシャッ
肉を食いちぎる、不快な音。人間の筋肉が千切れる、耳障りな音。
「ぎいあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひいぃぃ!た、助け……………」
「あがぁぁぁ……うぎっ…………」
バラバラに潰した兵士の四肢を喰らいながら、"マンティコア"は口を開く。
「アアァ…………ハラ………ヘッタナァ……………」
後書き
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