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八条学園怪異譚

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第四十二話 百物語その十四

「要するに」
「そうよ、そっちも昔からあったのよ」
「男の女装もですか」
「普通にあってそしてその女装の男の娘をね」
 男が、というのだ。
「そうしたこともあったから」
「昔の日本もそんなのだったんですね」
「凄いでしょ」
「はい、ある意味において」
「かなり凄いと思います」
 今度は二人で話した。
「同性愛、しかも美少年に男の娘って」
「昔の日本もフリーダムだったんですね」
「まさに世界の文化の最先端だったのよ」 
 そうした方面の、である。
「江戸時代なんかはね」
「確かヨーロッパだと凄く悪いことだったのよね、同性愛って」
「そうそう、死刑になる位ね」
 聖花は愛実に対して答えた。
「キリスト教でそう定められてたから」
「そうだったの」
「かなり重い罪だったのよ」
「というか悪いことになるなんて」
 幾ら趣味でなくとも罪になるとは思えなかった、愛実は聖花の言葉に首を傾げさせながらそのうえで言うのだった。
「訳がわからないわね」
「ああ、愛実ちゃんもそう言うのね」
「うん、そんなことで捕まるとかないでしょ」
「けれど昔の欧州はそうだったのよ」
 同性愛が罪になったというのだ、それも死刑になるまでに。
「薔薇も百合も火炙りだったのよ」
「火炙りだったの」
「そう、火炙りだったのよ」
「生きながらよね、それも時間をかけて」 
 愛実は魔女狩りの鬨の火炙りを思い浮かべていた、それは特撮でもあった火炙りの場面からイメージしたものである。
「かなり辛いわよね」
「煙にもいぶされるしね」
「人を殺してもいないのにそんな辛い殺され方されるの」
「今は違うわよ」
「いや、昔でもね」
 それはないだろうというのだ。
「訳がわからないから」
「昔の欧州ってそんな話が多いけれどね」
「というか多いの」
「魔女狩りとかね、キリスト教の教えが絶対だから」
 それでだというのだ。
「そうしたことが通っていたこともあったのよ」
「あまり住みたい時代じゃないわね」
「私もそう思うわ、同性愛は趣味じゃないけれどね」
「それでもよね」
「先輩なんか確実じゃないの?昔の欧州だと」
 愛実はここで茉莉也を見てだ、そのうえでこう言った。
「火炙りなんじゃ」
「確かにね、百合好きだし」
「しかも巫女さんだし」
「下手をすれば捕まってね」
 そしてだというのだ。
「魔女として火炙りね」
「そうなりかねないでしょ」
「ええ、先輩の場合はね」
「まあそうでしょうね」
 自分でもそれを認める茉莉也だった、とはいっても特にそれを嫌がる訳でもなく酒を飲みながらにこにことしたままだ。
 そしてそのにこにことした顔でだ、茉莉也は二人にこう言った。
「まあ今の日本には関係ないから」
「百合でも魔女でもですね」
「関係ないですね」
「日本ではどっちもね」
 同性愛でも魔女でもだというのだ。
「捕まった人いないわよ」
「ですよね、魔女も」
「一人も」
 本当に一人もいない、日本で魔女狩りかそれに類するものが行われたことはない。
 それでだ、茉莉也は今にこにことして言うのだった。 
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