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少年と女神の物語

作者:biwanosin
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第六話

 
前書き
ここだけ書いてみたかったので、一気に書きました。

では、本編へどうぞ! 

 
 私は武双が倒れるのを見ると、目の前の防壁を力づくで破壊し、武双を抱き起こした。

「ここまで傷ついて・・・普通だったら死んでいますよ・・・」

 そして、そのまま唇を重ね、治癒の術をかける。
 もう既に“あの儀式”は始まっていますから、普通に術をかけてもかかりません。だから・・・仕方ない、そう自分を正当化します。

「これで・・・傷は治りましたね。あとは・・・ゼウス様、お機嫌いかがですか?」

 武双は起きる気配がありませんから、ロンギヌスの槍に貫かれているゼウス様に話しかけます。一応、私達神々の王ですし。

「ふむ・・・殺されていい気がするとは思えんが、不思議と悪い気もせんな」
「武双は貴方の予想もしない形で貴方を倒した。それが原因では?」
「かもしれんな。共に暮らしてきた家族だけでなく、つい最近家族になったものまで信頼し、戦う。中々できたことではない!」

 ゼウス様はとても嬉しそうに笑います。本来、まつろわぬ神にとって戦いは喜び。私がおかしいだけで、それが普通なのですから、この反応は正しいのでしょう。

「さて・・・そろそろ姿を見せたらどうですか、パンドラ?」
「あら気付かれていましたか。よく見ればアテ様に神性が戻っていますし、当然でしたね」

 まあ、元凶であるゼウス様が屠られていますし、かなりの時間がたちましたから。これで戻らなかったら、一生戻りませんよ。

「ほう、新たな落とし子の誕生にもう気付いたか、我が偽り・・・パンドラよ」
「ええ、お父様。あたしは神と人のいるところには必ず顕現し、あらゆる災厄と一掴みの希望を与える魔女、ここにいるのは当然でしょう?・・・その子があたしと旦那の新しい息子ね?」

 そう言って、パンドラは私の膝の上に寝ている武双に近づき、その髪をなで始めます。

「ふふっ、苦しい?でも我慢しなさい、その苦しみはあなたを最強の高みへと導く代償、甘んじて受けるといいわ!」

 武双の顔をしっかりと見て、そういっパンドラは立ち上がり、最後の仕上げを始める。

「さあ皆様、祝福と憎悪をこの子に与えて頂戴!七人目の神殺し―――最も若き魔王となる運命を得た子に、聖なる言霊を捧げて頂戴!」
「では、私は精一杯の祝福と、ささやかな愛を捧げましょう!神々の王を殺めたその幸運、まことに見事です!家族として、一人の女神として、私はあなたを愛しております!」

 どうせ聞こえていませんし、私も女神です。
 ここまで来ると、どうしても気持ちが高ぶります。

「ならば、我は祝福と憎悪を捧げよう!神代武双よ、貴様は我の、全知全能の主神の権能を簒奪する初の神殺し!その力を持って、いかなる困難も乗り越えて見せよ!数多(あまた)の試練の中、再び我と合間見えるそのときまでその意志を貫いてみせよ!」

 ゼウス様はそう言うと、完全に消え去ってしまいました。
 つまり、もう既に簒奪の円環は回りきり、武双にゼウスの権能が与えられたということ。

「これであなたは私の天敵となったわけですが・・・家族ですし、気にしなくていいですよね?」

 武双と殺しあう未来は、ないものだと信じたい。
 権能を簒奪されるなら武双に、とは思うけど、武双と、その家族と一緒に、少しでも長く過ごしたい。

「あなたが目覚めるまでの間・・・こうしているくらいはいいですよね?」

 とりあえず、武双を膝で寝かしたまま、その髪をなでて過ごすことにします。



◇◆◇◆◇



 目を開けると、目の前に紫色の髪をツインテールにした幼女がいた。
 え・・・これどういう状態?

「あ、目覚めたのねムソー!」
「あ、うん。確かに起きたけど・・・ここはどこ?」

 起き上がって周りを見回すと、何にもない真っ白な空間があった。

「ここは生と死の境界よ、ムソー」
「はあ・・・なんでこんなところに?」
「それはね、あたしと旦那の新しい息子に会うために、あなたを呼び出したのよ。ちょうど死に掛けてるし」

 さらっとものすごいことが伝えられた。
 生と死の境界とか、今死に掛けてるとか・・・今心当たりができた。
 後先考えてなかったけど・・・確かに、神様殺してるんだよな・・・

「ってことは、アンタはパンドラ?」
「そうよ、ムソー。呼び方はお母さんでも母さんでも、ママンでも、好きなのでいいわよ?」

 母親いったくだった。
 確かに、パンドラとエピメテウスの息子ってことにはなるんだよな・・・

「じゃあ、人間の母さんと被ると面倒だから、ママで」

 そう言うと、パンドラ・・・ママは急に嬉しそうにしだした。

「ムソーはいい子ね!他の子供達は誰もそうやって呼んでくれないから悲しいのよ・・・」
「普通、急に言われても対応できないだろうからな・・・経験したことがないと」

 今の家に引き取られたときも、目が覚めたらすぐそこに母さんがいて、私のことは母親として呼ぶように、と言われた。二度目だからそこまで戸惑わずにすんだな。

「あ、母親だと思っていいみたいだし、敬語とか一切使わず、気楽に接するからな」
「うん、それでいいのよ!その点については他の子供達もそうだから、問題ないわ」

 よし、それならこのままいこう。それに、もう俺は神様を敬うような立場にいない。間違いなく敵だ。

「で、ここに呼び出した理由がお話なら、もう用事はすんだと考えていいのか?」
「ううん、ここからが本番よ。ムソー、あなたは本気でアテ様と暮らす気なの?」
「もちろんだ」

 俺は即答した。そのつもりがなければ、誘わないし助けない。

「半端な覚悟じゃ到底無理よ?本来、まつろわぬ神と神殺しは敵対するものなんだから」
「それ以前に、俺とアテは家族なんだ。神様とかカンピオーネとか正直どうでもいい、二の次だ」

 はっきりとそう言うと、ママは笑い出した。

「そう、これはこれで新しくていいわ!じゃあ、一つアドバイスを上げる。ムソーが考えた方法で確かに神性は封印できる。頑張りなさい!」
「ありがとう、ママ。せいぜい頑張ってみる!」
 
 

 
後書き
こんな感じになりました。


祝福と憎悪のところはかいててたのしかった・・・


では、感想、意見、誤字脱字待ってます。 
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