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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
  38話:光へと変わる体

 
前書き
 
相変わらずの無計画展開……
  

 
  

構えたデバイスを降ろし、こちらにやってくるなのは。それと一緒に、フェイトもやってくる。

「アリサちゃん、すずかちゃん、士君!
「三人共、大丈夫!?」

急に声をかけられた事と、その声の主が自分の親友である事、そしてその親友がいつもの格好じゃなく、異質なものだった事にアリサとすずかが驚き、目を見開いていた。

「なの、は…?」
「フェイト…ちゃん?」

思わずその二人の名前を呼ぶ。
だがそんな中、士は何故ここに二人がいるのか、という疑問が浮かび上がっていた。

「な、なんでお前らが…」
「あ、そうだ!士君、あれ!」

その疑問を二人にぶつけようとすると、なのはが思い出したようにどこかを指差す。
その方向には、ピンク色の塊が宙に浮いていた。その周りには同じ色の小さい粒子が集まっているのも、わずかながら士の目に入っていた。その目で一度確認した事のある光景だ。

「あれは…まさか…」
「なのはのスターライトブレイカーだよ!」

士の疑問の声に答えたのは、フェイトだった。
それを聞いたなのはは、またも思い出したように慌て出した。

「そ、そうだ!あれ私達を狙ってるみたいで、それでそれで…!」

そう言ってる間に、ピンクの塊に集まっていた粒子が止まる。おそらく、そろそろブレイカーが放たれるのだろう。

「なのは、慌ててる場合じゃないよ!士、二人と一緒に一カ所に」
「あ、あぁ…。二人とも、すまないが少ししゃがんで」
「う、うん…」
「でも…」

士はアリサとすずかを肩を抱き寄せるように一カ所に寄せる。
それと同時に、ピンク色の閃光がこちらに向けて放たれる。その光景に、アリサとすずかはまたも目を見開く。

「フェイト、頼む!」
「うん!バルディッシュ!」
〈 Defenser plus 〉

バルディッシュの声と共に、三人の周りに半円状に黄色い障壁が出来上がる。そしてその前に飛び出し、手を前に突き出し、新たに障壁を生み出す。

「なのは!」
「うん!レイジングハート、お願い!」
〈 Wide area protection 〉

さらにそのフェイトの前に、なのはが出てきてレイジングハートを前に突き出す。そのレイジングハートの声が響いたと同時に、ピンク色の障壁が展開される。

その数秒後、周りが一瞬ピンク色になったと思ったら、視界は白い光のみに変わる。さらに地面も衝撃で揺れているようになり、ゴゴゴというような効果音が聞こえてきそうだ。

「くっ、ぅぅ……!」
「うぅ…!」

その衝撃で、二人は苦しそうに声を上げる。
白い閃光も収まり始め、視界に色が戻っていく。地面の揺れも、音と共に小さくなっていく。

そして何事もなかったかのように事が収まり、俺はゆっくり立ち上がる。

「もう、大丈夫」
「すぐ安全な場所まで運んでもらうから、もう少しじっとしてて!」

二人も障壁を解除して、しゃがんでいるアリサとすずかに声をかける。

「あの…なのはちゃん、フェイトちゃん…」
「ねぇ、ちょっと…!」

二人が立ち上がり、状況を確認しようと声を出すが、すぐに足下から光が発生する。それはミッド式の魔法陣で、おそらくは転移魔法。
士もその魔法陣の中にいた為、転移の直前で外に飛び出す。

「っ、つか―――」

それに気づいたのか、アリサが士に手を伸ばすが、その姿は一瞬にして消える。

「見られちゃったね…」
「うん…」

『なのはちゃん、フェイトちゃん、それから士君!クロノ君から連絡!』

そんな時、エイミィから通信が入る。

『闇の書の主に…はやてちゃんに、投降と停止を呼びかけてって!』

それを聞いた士達は、お互いに顔を見合わせ、一回頷く。
そして三人は目を瞑り意識を集中させ、はやてへ念話を送る。

[はやてちゃん、それに闇の書さん!止まってください!ヴィータちゃん達を傷つけたの、私達じゃないんです!]
[シグナム達と、私達は―――]

[我が主は…この世界が、自分の愛する者達を奪ったこの世界が…悪い夢であって欲しいと願った。我はただ…それを叶えるのみ]

なのはとフェイトの声で返ってきた声は、どこか冷めたような声色だった。

[主には、穏やかな夢の内で…永久の眠りを]

その声に反応して、三人は顔を上げる。その視線の先には、念話の間にやってきていた闇の書の管制人格の姿があった。

「そして……愛する騎士達を奪った者には、永久の闇を!」

念話ではなく、はっきりと聞こえる声。彼女は手を前に突き出し、足下に魔法陣を展開する。

「闇の書さん!」
「……お前も…その名で、私を呼ぶのだな…」
「っ……」

なのはの呼びかけにも、彼女は悲しそうな顔で静かに答えた。
次の瞬間、地鳴りと共に道路が割れ、そこからある生物の一部と触手が現れる。それは以前、シグナムとフェイトが戦う前に蒐集対象とされていた生物だ。
胴体の部分はビルを突き破り、触手は三人を縛り上げる。

「ああっ、くぅ!」
「うぅっ!」
「ぐぁ…くっ、うぅ…!」

「それでもいい……。私は…主の願いを叶えるだけだ…」

彼女はそういいながら、闇の書を手の上に浮べて、ページを開く。

「願いを…叶えるだけだと…?」
「そんな願いを叶えて…それで、はやてちゃんは本当に喜ぶの!?心を閉ざして、何も考えずに、主の願いを叶えるだけの道具でいて…あなたは、それでいいの!?」

「我は魔道書。ただの道具だ」

俺の呟きの後を継ぐように言ったなのはの叫びにも、彼女は淡々と答えるだけ。その頬には、一筋の涙が流れる。

「だけど、言葉を使えるでしょ!?心があるでしょ!?そうでなきゃ可笑しいよ……。ほんとに心がないんなら…泣いたりなんか、しないよ!」
「この涙は、主の涙。私は道具だ…。悲しみなど、ない…」

「バリアジャケット、パージ…」
〈Sonic form〉

フェイトの呟きを聞いたバルディッシュが術式を発動、周囲が一瞬光に包まれる。それにより三人を縛っていた触手が消滅し、なのはは少し後退。士はうまく着地を成功させるが、先の戦いの疲労で少しうめきながら膝立ちになる。

「悲しみなどない?そんな言葉を、そんな悲しい顔で言ったって…誰が信じるもんか!」
「あなたにも心があるんだよ!悲しいって言っていいんだよ!あなたのマスターは…はやてちゃんは、きっとそれに応えてくれる、優しい子だよ!」
「俺達ははやても、お前の事も…救いたいんだ!だから、はやてを解放して、武装を解いてくれ!」

少しの沈黙が流れるが、すぐにそれは地面が揺れる音で破られる。そして所々から炎の柱が吹き出し始める。

「早いな…もう崩壊が始まったか。私もじき、意識をなくす。そうなれば、すぐに暴走が始まる。意識のある内に…主の望みを、叶えたい…」
〈Blutiger dolch(ブラッディー・ダガー)〉
「「っ!?」」
「っ、なのは!フェイト!」

彼女が手を前に突き出すと、なのはとフェイトの周りに赤い短剣のようなものが現れる。

「闇に…沈め…」

短剣が発光し始め、一斉に二人に向け放たれ、爆煙が起きる。だが爆煙が晴れていくと、二人は元いた場所より少し上の辺りにいた。フェイトの高速移動により、回避したのだ。

「この…だだっ子!」
〈Sonic drive〉

体を寄せ合っていた二人は一旦離れると、フェイトが姿勢を小さくしながらバルディッシュを後ろに目一杯引く。両手首、両足首にある黄色の羽根が、大きく羽ばたく。

「言う事を―――」
〈Ignition〉
「聞けぇぇ!!」

そして管制人格の元へ一気に飛び出す。それを静かに見ていた彼女は、開いていた本を中身を見せるようにフェイトへ向けた。

「お前も、我が内で…眠るといい」

管制人格の目の前へと到達したフェイトは、バルディッシュを大きく振り下ろす。
だが、その攻撃は彼女の前に現れたベルカ式の防壁によって阻まれた。

「っ―――え…?」

すると衝突の衝撃で動きが止まったフェイトの体が、光り始めた。いや、光の粒子へと変わっていっていた。

「フェイトちゃん!?」

段々と光に包まれていくフェイト。見ていたなのはも叫ぶことしかできない。
自分が落ちていくのを自覚しながら、覚悟するフェイト。

だが、次の瞬間。

グイッ
「っ、わ!?」

誰かに肩をつかまれ、フェイトの体は後方へと無理矢理下げられる。向かう先にいたなのはは、うまくフェイトをキャッチする。

それと同時に響く衝突音。二人は思わず顔を上げると、そこでは剣を管制人格へと向けて振り下ろしている士がいた。管制人格の方も、士の剣をフェイトの時と同じベルカ式の防壁で防いでいた。
管制人格の意識が防御へいったおかげか、フェイトの体の変化も収まっていた。

「「士(君)!?」」
「ぐぅ、おぉぉ!」
「お前はディケイド……いや、門寺士と言うべきか」
「知っててもらえるとは、光栄だね…!」

二人が面と向き合って話している間にも、士の剣が徐々に彼女の防壁にヒビをいれていく。
その事に気づいた彼女は、自分の脇に二本の赤い短剣を出現させ、士の腹へと放つ。

「っ!がはっ!?」

士も気づきはしたが、そこは空中。飛行魔法は勿論使えず、ましてやディケイドには飛行能力はない。身動きが取れないまま、士はその攻撃をもろに受ける。
短剣の爆発で管制人格から離れる士。しかもその間に遂に限界が来たのか、変身が解けて子供の姿に戻ってしまった。

「主の願い…お前も、主と共に眠るといい…」
「なん…っ!?」

士は彼女の言葉に何か言おうとしたが、すぐに自分の体がフェイトと同じように光り始めたのに気づき、言葉を切る。

「(くそっ!逃げきれねぇ!)なのは!フェイト!」
「「……!?」」

回避は不可能と判断した士は、顔を後ろに向けてなのはとフェイトを見る。その二人は士を助けようと必死に手を伸ばそうとしていた。

そして士は消える直前、口を開いた。


――――諦めるなよ!


その声にならなかった言葉を残し、士は光と共に消えていった。

〈Absorption(吸収)〉

そして最後に機械的な音声を残し、輝いていた闇の書の光が収まっていく。

「「………」」

呆然と見るしかできなかったなのはとフェイト。伸ばしていた手は垂れ下がり、その二組の眼には涙が溜まっていた。

だが、フェイトは……次の瞬間動きを見せた。

「こ……のぉぉぉぉぉ!!」
「「っ!」」

大きく見開いていた目はキッと鋭くなり、目に溜まった涙を振り捨てるように管制人格の元へと飛んだ。

「フェイトちゃん、ダメェ!!」
「士を……返せぇぇぇぇぇぇぇ!!」

先程と同じようにバルディッシュを振り下ろすフェイト。だが、結果は変わらない。同じく防壁によって阻まれる。

「うあぁぁぁぁぁ!!」
「怒りで我を忘れたか……だが、お前にも心の闇があろう…」

管制人格の言う通り、フェイトは怒りに任せて叫ぶ。士が居なくなってしまった事に、そして士を助けられなかった自分に。
だが管制人格が呟くと同時に、再び闇の書が開かれ、フェイトは光の粒子へと変わっていく。

「うあぁぁぁ!(士、ごめん…助け、られなかった…)」

頬を伝う涙がフェイトの顔から落ちた瞬間、フェイトの姿は士同様、光となって消えていった。

〈Absorption〉
「全ては…安らかな、眠りのうちに…」


















唐突に暗がりだった視界が白へと変わる。これはおそらく、目の前から光が当てられたのだろう。思わず一回目の前に腕を持ってきて、目へと来る光を断つ。
そしてゆっくり、何故か重い瞼を開けると、そこには何気ない、何処にでもありそうな家のリビングがあった。

「あ、あれ…?」

先程の光は何だったのか。ここは一体何処なのか。そんな色々な疑問を含んだ呟きを漏らす俺、士。

ま、まずは状況確認だ。記憶の奥を探ってみよう。
一番最初に思い出した事柄は、俺はさっきまで闇の書の管制人格を目の前にしていた事。その次に思い出したのは、段々と光へと変わっていく自分の体。

「そうだ俺……どうなったんだ?」

だが結局その後俺はどうなったのか、そしてここは何処なのか、という疑問はわからずじまいで終わる。
次に俺は、視界に入るリビングを見渡す。何処にでもありそうな、普通の家具。テレビ、意外と大きいな……

「そうだ、トリス…」

思い出して右手首を触ってみるが、そこにはただ自分の手首があるだけ。トリスは何処にもいない。

「どうして……」








「―――どうしたの?お兄ちゃん」



「っ!?」

またしても疑問の声を漏らした瞬間、背後から不意に聞こえた声に、俺はビクッと反応する。

そして勢いよく振り向くと、そこには大体小学四年生ぐらいの女の子が、片目を擦りながら立っていた。

  
 

 
後書き
 
非難の声が今にも聞こえてくる……恐い……
  
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