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緋弾のアリアGS  Genius Scientist

作者:白崎黒絵
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イ・ウー編
武偵殺し
  1弾 空から女の子が

 雨が降ったら、雨を浴びて楽しめ――――と言ったのはアルチュール・ランボーだったか?負け惜しみもそこまでいくとポジティブというかなんというか。

 バスに乗り損ねた(おれ)はそのランボーだったかに(なら)って、仕方なしに通学路の光景を眺めながらチャリで登校することにした。

 近所のコンビニとビデオ屋の(わき)を通り、台場(だいば)に続くモノレールの駅をくぐる。

 その向こうには、海に浮かぶような東京のビル群。

 ここ、武偵校(ぶていこう)こと東京武偵高校(とうきょうぶていこうこう)は、レインボーブリッジの南に浮かぶ南北およそ2キロ・東西500メートルの長方形をした人口浮島(メガフロート)の上にある。

 学園島とあだ名されたこの人口浮島は、『武偵(ぶてい)』を育成する総合教育機関だ。

 武偵とは凶悪化する犯罪に対抗して新設された国際資格で、武偵免許を持つ者は武装を許可され逮捕権を有するなど、警察に準ずる活動ができる。

 ただし警察と違うのは金で動くことで、金さえもらえば、武偵法(ぶていほう)の許す範囲内ならどんな(あら)っぽい仕事でもくだらない仕事でもこなす。つまりは『便利屋』だ。

 ――――で。

 この東京武偵高校では、通常の一般科目に加えて、その名の通り武偵の活動に(かか)わる専門科目を履修(りしゅう)できる。

 専門科目にもいろいろあって、たとえばいま横を抜けたのが探偵科(インケスタ)の専門棟。

 古式ゆかしい推理学や諸々(もろもろ)の探偵術を学ぶ、この学校の中ではマトモの部類に入る学科だ。

 その先にあるのが通信科(コネクト)、さらに向こうに鑑識科(レピア)、この辺はまだ穏便(おんびん)だが、もう少し行くと去年の1学期だけ俺が在籍していた、強襲科(アサルト)がある。

 ……俺は体育館へ向けて、チャリをターンさせた。

 よし、なんとか始業式には間に合いそうだぞ。

 さすがに1学期の始業式から遅刻するのは何だからな――――



「 その チャリには 爆弾 が 仕掛けて ありやがります 」



 奇妙な――――チラシを切り()りして作った脅迫文(きょうはくぶん)みたいな、妙な声。

「 チャリを 降りやがったり 減速 させやがると 爆発 しやがります 」

 ああ、この声はIAの声だ。ということは、これは人工音声だな。

 そんな分析をしてしまってから、聞こえたセリフの一部を思い出す。

 ――――爆弾……だ?

 いきなり何だ。どこのバカだ。どういう冗談だ。

 (まゆ)を寄せて周囲を見回すと、ギョッとしたことに(おれ)の自転車にはいつの間にか妙な物体が併走してきていた。

 車輪を2つ平行に並べただけで器用に走る、タイヤつきのカカシみたいな乗り物。

 こいつは確か……『セグウェイ』、だったか?前に(あや)と一緒に、解体(バラ)して遊んだ覚えがある。

 まあさすがに、UZIなんて物騒なものは搭載(とうさい)されてなかったが……て、おいちょっと待て。UZIってさすがにそれはやばいだろ。

 UZI。

 秒間10発の9ミリパラペラム弾をブッ(ぱな)す、イスラエルIMI社の短機関銃(サブマシンガン)。それが今、セグウェイの上にスピーカーと一緒に載っている銃座の、さらに上に載っかっている。しかも、ご丁寧に俺の方に銃口を向けて。

「 助けを 求めては いけません。 ケータイを 使用した場合も 爆発 しやがります 」

「……おいおい。さすがにこれはやばくないか」

 小声でツッコミを入れておく。何の意味も無いが、今は少しでも気を紛らわせたい。

 だが、セグウェイは相も変わらず、俺に銃口を向けながら併走してくるので、気を紛らわせるのは不可能っぽい。

 若干、頭がパニクった状態でチャリをまさぐると――――サドルの裏に、いつの間にか変な物が仕掛けられていた。慎重(しんちょう)に、指でなぞる。

 ――――やばい。自作(オリジナル)の爆弾なのか、(タイプ)までは分からないが、これはおそらくプラスチック爆弾だ。それもこの大きさ。自転車どころか自動車でも跡形もなく消しとばせるサイズだぞ。

 全身に悪寒(おかん)が走り、冷や汗が(にじ)む。

 ここまで来たら、さすがに認めるしかないな。こいつはたぶんイタズラじゃない。

 ハメられた。なんてこった。チャリを乗っ取られた。

 ――――世にも珍しい、チャリジャックじゃねえか!



 まったく、なんで俺がこんな目に。

 ――――俺は万一に備え、とにかく人気(ひとけ)のない場所を探して走り、第2グラウンドへと向かった。

 金網越しに見た朝の第2グラウンドには、いつも通り(だれ)もいない。

 俺は仕方なしに、その入り口めがけてチャリをこぐ。

 セグウェイは相変わらず、銃を向けながら併走してくる。

 というか今更気づいたが、この手口、白雪(しらゆき)が言ってた<武偵殺(ぶていごろ)し>の模倣犯(もほうはん)じゃねえか。

 さて、どうしたんもんかな。

 ここに来るまでに考えたが、手段は一つしか思い浮かばなかった。

 仕方ない、アレをやるか。

「――――?」

 その時だった。俺はこのありえない状況の中、さらにありえないものを見た。

 グラウンドの近くにある7階建てのマンション――――たしか、女子寮――――の屋上の(ふち)に、女の子が立っていたのだ。

 武偵校(ぶていこう)のセーラー服。

 遠目にも分かる、長い、ピンクのツインテール。

 彼女は――――有明(ありあけ)の白い月をまたぐようにして、飛び降りた。

(――――飛び降りた!?)

 一瞬ペダルを踏み外しかけた俺は、慌ててチャリこぎに戻る。

 ウサギみたいにツインテールをなびかせて、虚空(こくう)に身を(おど)らせたその女子は――――

 ふぁさーっ。と。

 事前に屋上で滑空準備させてあったらしいパラグライダーを、空に広げていった。

 チャリをこぎつつその光景に目を丸くしていると、女の子はツインテールをなびかせ、あろうことか、こっちめがけて降下してくる!

「お、おい!バカ!こっちに来るな!この自転車には爆弾が――――」

 俺の忠告は間に合わない。少女の速度が意外なまでに速い。

 ぐりん。ブランコみたいに体を揺らしてL字に方向転換したかと思うと、右、左。少女は左右のふとももに着けたホルスターから、それぞれ銀と黒の大型拳銃(ガバメント)を2丁抜いた。

 そして――――

「ほらそこのバカ! さっさと頭を下げなさいよ!」

 バリバリバリッ!

 俺が頭を下げるより早く、問答無用でセグウェイを銃撃した!

 拳銃の平均交戦距離は、7mと言われている。だが、少女と敵の距離はその倍以上ある。しかも不安定なパラグライダーから、おまけに二丁拳銃の水平撃ち。

 これだけ不利な条件が(そろ)っていたにもかかわらず、彼女の(たま)は魔法のように次々と命中していく。反撃するヒマもなく、敵の銃座と車輪はバラバラにぶっ壊されていった。

 ――――うまい。

 なんつー射撃の腕だ。

 あんな奴、うちの学校にいたか?

 くるっ、くるくるっ。

 二丁拳銃を回してホルスターに収めた少女は、今度は、ひらり。

 スカートのオシリを振り子みたいにして、険しい表情のまま俺の頭上に飛んできた。

 そうだ、安心するのはまだ早い。向こうの事はどうでもいい。

 なぜならこっちには、ビルの解体にでも使えそうな爆薬が、現在進行形で()り付いてるんだからな!

 俺は少女から逃げるように、第二グラウンドへ入る。

「来るなー。来たら危ないぞー。この自転車は減速すると爆発するからなー。お前も巻き込まれるぞー」

 俺の忠告はもはや投げやりである。でもなー、このタイプの奴はどうせ言っても聞かないだろうからなー。

「バカっ!」

 案の定、俺の方にそのまま突っ込んできた彼女は……げしっ!

 白いスニーカーの足で、俺の脳天を力いっぱい踏みつけてきた。

武偵(ぶてい)憲章1条にあるでしょ! 『仲間を信じ、仲間を助けよ』――――いくわよ!」

 『人の頭を踏みつけるな』とか『いつから俺とお前は仲間になったんだ?』とか、色々言いたいことはあるが、今は黙っておこう。

 女の子が、気流をとらえてフワッと上昇する。

 華麗なパラグライダー(さば)きに、(おれ)はおもわずその光景を見上げてしまう。

 なんて運動神経だ。でもスパッツぐらいはけ、とは思う。まあ一瞬で飛んでったから、何も見えやしなかったけど。

 ていうか――――今の言いぐさ。

 『いくわよ!』って、もしかしなくてもアイツ、俺を助ける気なんだろうなあ。

 でも、いったいどうやって?

 少女はグラウンドの対角線上めがけて再び急降下し、こっちへ向けて鋭くUターンする。

 そして――――ぶらん。

 さっきまで手で引いていたブレークコードのハンドルにつま先を突っ込み、(さか)()りの姿勢になった。

 そのまま、物凄(ものすご)いスピードでまっすぐ飛んでくる。

 都合、俺はアイツに向かって走る形になった。

「おいおい――――マジかよ……!」

 相手の意図が分かって、俺は青くなる。

 こっちが気づいたことに気づいたらしく、少女は、

「ほらバカっ! 全力でこぐっ!」

 大声で命令しつつ、逆さ吊りのまま両手を十字架みたいに広げた。

 ――――バカはそっちだろっ!

 そんな助け方があるか!

 でもまあ、(ほか)に方法も――――あることにはあるが、できればやりたくないしな――――ねえし、やるしかない、のか!

 俺はもうヤケクソで、チャリをこぐ。

 こぐ。こぐ。こぐ! 全力で!

 俺はアイツに、アイツは俺に近づいていく。

 二人の距離はみるみる縮まっていく。

 ああ、昨日見たアニメに、こんなシーンがあったな。

 ――――でもあれ、男と女が逆じゃなかったかな!?

 そう自分にツッコんだ瞬間――――上下互い違いのまま、俺は少女と抱き合った。

 そしてそのまま、空へさらわれる。

 息苦しいくらいに顔が押しつけられた少女の下っ腹からは、クチナシの(つぼみ)のような、甘酸っぱい香りがして――――

 ドガアアアアアアアアアンッッッ!!!

 閃光(せんこう)轟音(ごうおん)、続けて爆風。

 (おれ)が乗り捨てたチャリが、()端微塵(ぱみじん)に爆発したのだ。

 あの爆弾は、やはり本物だった――――!

 熱風に吹っ飛ばされながら、俺たちは――――引っかかった桜の木にパラグライダーをもぎ取られ、グラウンドの片隅(かたすみ)にあった体育倉庫の扉に突っ込んでいった。

 がらがらと音を上げ、何にぶつかったのかも分からず……

 俺の意識は、一瞬、途切れた。 
 

 
後書き
前回を読んでくれた皆様はお久しぶり。この話から読み始めたよ!という少し風変わりな人は初めまして。白崎黒絵です。
やっと本編開始?です。メインヒロインのあの娘が出てまいりました。
まあ、この作品は二次創作なんで誰がメインヒロインかは決まってないんですけどね(笑)
上記のとおり、この作品は二次創作です。
「二次創作なのに、(ほぼ)原作そのままとかどうなってんですか!訴えますよ!」
そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。裁判沙汰は勘弁してください。
という訳で今回もまた、本作の主人公であるミズキから一言。

ミズキ「細かいことぁ、気にすんな!」

それでは皆さん、読んでくださってありがとうございました。また次のお話で会いましょう!(前回のコピペ)
疑問、質問、感想、受け付けてます!(前回のry) 
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