蘇生してチート手に入れたのに執事になりました
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まもなくあの方成仏するそうなんですが・・・・
前書き
さて、第三話突入で御座います。
小説家になろうでは第十四章更新いたしました。
少しずつこちらも更新していきます。
コンクリートの地面には俺を涙目で、上目遣いで見上げる容姿端麗の少女。まだ時刻は六時過ぎなのに、すでに月が出ていて、彼女を月光が照らす。月の光に照らされた彼女のあどけない表情が身体がよく見える。涙目の上目遣いというドキドキ要素でなんか俺は変な気分になってくる。
しかし、彼女は俺のその気分を全く知らずひたすらに震えていた。俺は何故かいたたまれない気分になる。そんなとき、彼女の目線がふと、俺の隣に向き・・・・
「あ、田中さん・・・。」
彼女は俺の隣を見て、呟く。不思議に思い隣を向くとそこには・・・・
「・・・・・・・・・・?」
理解不能理解不能。俺の視覚がすぐさまそれを訴える。しかし、俺の目の前にいるものは、まぎれもない理解不能だった。
まず目立つのはその禿頭。月光に照らされて、その頭はさらに存在感を増している。年齢は五十代後半といったところだろうか。垂れた目や、ぜい肉だるだるの頬、よれよれの白Tシャツ。その全ての要素が、定年退職したオヤジです!を世界に向けて主張していた。しかし、そんな主張が消し飛ぶほど、その男性は特徴的だった。男性は・・・・
下半身がなかった。いや、正確には、下半身らしきものはあった。なぜか半透明の布のようなものが、男性の本来脚のあるべき場所から出ていて、風もないのにヒラヒラしていた。そして、布だけではなく、男性の身体全身が半透明で、透けていて、男性を通して向こうの景色が見える。しかも男性は浮いていた。地面から数十センチほど上をプカプカと。
「・・・・・・・・?」
なんでこんなものが俺のすぐ隣に?ていうかコイツ誰よ?え?なにこれ?夢?幻覚?
「え?あなたも見えるんですか?」
混乱している宏助にさらに彼女が爆弾投下。え?あなたも見えるってことは彼女も見えるってこと?確かにさっき『田中さん』とか呼んでたど・・・・。そういった様々な疑問を宏助は彼女に視線で訴える。すると彼女はその意図を理解したのか、小さくうなずき、話はじめる。
「彼の本名は、田中正一。五十年前にタバコと酒によって煩った肝臓の病によって死んでしまったんですけど・・・・」
「心の底からどうでもいいわっツ!」
思わず大声で俺は叫んでしまう。すると彼女は、
「彼の死がどうでもいいっていうんですか・・・?そんないくら彼が自分の身体のことを考えずにタバコや酒を摂取していたとしても、それはいくらなんでも・・・。」
と悲しげに俯く。思わずその表情に困り、田中、と呼ばれた男の方を見ると彼は「ザマぁ。」とでも言いたげななんともむかつく表情をして、俺を見ていた。
「・・・・・死ねぇ!」
「もう死んでます!」
彼女の適切なツッコミと共に渾身の右ストレートを叩きこむが、俺の拳は彼をすり抜けただけで、何の感触ももたらさない。彼の背後にあったベンツが俺の拳の風圧で凹んだ気がするが・・・・気のせいではないだろう。
「・・・・なんとなく予想はしていたが、やっぱり当たらないか・・・・?さっき死んでいるって言ってたけど、もしかして・・・?」
「ええ、彼は幽霊ですね。」
数秒の沈黙・・・そして、世界の反転。
「ドリャあ!」
「だから彼には当たりませんて!」
またも彼女のツッコミを背中で聞きつつ存在否定のために渾身の左ストレート。後ろのベンツは先程凹んだ部分にまたも風圧を受け今度こそ貫通。ベンツの後部座席のシートが削れて、吹き飛ぶが、田中は平然とスマシ顔。こいつ・・・・・ウゼぇ・・・・。
「しかし、あなたが見えるのが不思議です。普通は人間であれば見えないはずですが・・・。」
人間であれば・・・・という言葉にドキリとする。俺は人間の姿こそしているが、能力的にはほぼ化け物だ。自分は人間なのかと自問自答していた時期もあった。
そんなとき、急に田中が呆れたように肩を竦める。すると彼女のほうが、
「この人も幽霊・・・・?なんですか・・・?」
と、聞き捨てならぬ発言。俺が幽霊・・・?確かに一度死にはしたが、こんなフワフワウザウザはしていない。しかも彼女はまるで誰かと会話しているような口振りだ。どうしたんだろう。
すると、また彼女は話し出した。
「この人は厳密に言うと、幽霊ではない。しかし、ほぼそれに近いもの。魂が未練を残し、この世に戻ってきた際に、なんらかの特別な事象が起きて、魂が肉体に戻った。それで、こんな人外の力を得ている、と。そうなのですか・・・?」
ブツブツ独り言を呟いていたと思ったら急に俺の方を向いて聞いてくる。そうなのですかと言われても?ていうかさっきからこの娘誰と話しているのだろう?不思議でしょうがない。
そんな疑問の視線をまたも宏助が彼女にぶつけると彼女は、
「あ?すいませんね?さっきはあなたの力に驚いて、すっかり怯えちゃって。あなた私を助けてくれたんですよね?どうも有難うございます!」
と急に立ち上がって宏助に感謝の礼。せっかくのタイプの女性からのお礼を受け取ったのに、俺の脳内は混乱状態だった。
「あのぉ~?さっきから誰と話しているんですか?」
一番気になってたことを聞いてみる。すると、彼女はあぁ、という風に納得のポーズ。そして、
「すいません。まだ私、自分のこと話してませんでしたね。私、生まれつき、幽霊とテレパシーみたいなもので会話できるんです!素敵な能力でしょう?」
突拍子もないことを言い出した。
・・・・・???????????????????????
頭が疑問符だらけの宏助に彼女は更に追撃。
「こんなこと普通の人に言っちゃ駄目って、麗には言われているんですけど、あなたはそういうことを知っているみたいだから・・・。私の影響で幽霊が見えるんですね。」
疑問符だらけだったが、段々と宏助にもわかってきた。
つまり、この俺の前にいる田中という男は幽霊で、さっきから彼女と会話している。で、どうやら俺のことを田中が話したらしい。
しかし、そこでまたひとつの疑問。
「なんで田中って人は、俺がアンタを助けたことを知っているんだ?」
あくまで田中の方は向かずに彼女にのみ焦点を合わせる。ささやかな抵抗だ。
しばらく間があって彼女、
「私がさらわれたところを見ていた田中さんが、それを追いかけていくあなたを見て、あなたがただの人間じゃないことに気づき、ここまで追ってきた、と言っています。確かにあなたは魂が変ですね。ほぼ幽霊のものです。」
と彼女。魂が変って?と彼女に聞くと彼女は、
「私は人の魂を見ることが出来るんです。大体人はほぼ心臓と同じ位置に魂を宿していて、魂の形や色はその人を表しているんです。しかし、あなたの魂は、なんだか、半透明で、まるで幽霊みたいです。」
・・・・また不思議少女が謎の能力を紹介。一体何なんだこの女性は。
さまざまな疑問を抱えたまま俺は問う。
「あんた、名前は?まだ聞いてねぇぞ。」
結局俺は、それを問う。彼女はよく分からない謎の能力の持ち主だけど、俺のことを全部知ってるみたいで、たとえこのフワフワウザウザした田中とかいうオッサンがそれを彼女に教えたとしても、なんだか、それを知った上で接してもらえるのはうれしくて、気がついたら自己紹介をしていた。
「俺は伊島宏助だ。あんた達が言う、魂だの肉体だのってはなしはよく分からないが、とにかく蘇って人外となった化け物だ。そんなことを知って俺に接してくれた人間はあんたがはじめてだよ。」
素直な言葉で彼女に言う。すると彼女も答える。
「私は、神条麗です。あなたこそ、私のこの不思議な能力を聞いても、私と接してくれるなんて、麗以来です。そんな人は。」
彼女も素直に俺に言う。俺はそんなことを言われて、少々ドキリとした。
そんな一風変わった自己紹介を見ていた幽霊ー田中は満足したような笑みを浮かべる。そして彼は、
その半透明の身体を天へと散らせ始めた。
「!!」
その様子に気づいた彼女が田中の方を向く。
「た、田中さん!そんなまだ早いです。あなたはもう逝ってしまうんですか?あなたの未練は・・・・これで果たされたんですか?田中さ~ん!」
田中のその半透明の身体は白い霜のようなものに変わって天へ舞い上がっていった。彼は最後に俺に微笑し、そして・・・・消えた。
「・・・・そんな田中さん・・・・・。」
俺はそんな中ただ一人思っていた。
・・・・え?なにこれ?
後書き
どうでしょうか?
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