箱庭に流れる旋律
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歌い手、都につく
前書き
本日二度目の投稿です。
旋律はこれで今日の分は終わりですが、少年と女神はあと一話投稿します。
では、本編へどうぞ!
「サンドラ様!“ノーネーム”より、“歌い手”のギフト所持者、その従者が到着しました!」
煌焰の都に着き、白亜の宮殿に来たら、運営本陣、謁見の間に連れて来られました。
あれですね。こういう時にどうしたら分からないのですごく困ってます。すぐ横のリリちゃんもガッチガチに固まってます。
「ご苦労様です。その方たちを通して」
部屋の中から幼い声でそういわれ、僕達を連れてきた・・・騎士でいいのかな?の人たちは扉を開け、僕達に入るよう促す。
「この度はお越しいただきありがとうございます。私は新しく火龍を就任しました、サンドラです」
「えっと・・・ご依頼、ありがとうございます。僕は音楽シリーズ、歌い手“奇跡の歌い手”のギフト所持者。“ノーネーム”の天歌奏です」
基本、歌い手としての僕に依頼が来た場合はこの自己紹介をしている。
これなら全部説明できるからね。“音楽シリーズ”という名前を知っている人は多いんだけど、“奇跡の歌い手”では知らない人ばっかりらしい。“共鳴”に関しては相当な物知りでないと知らないそうです。
「白夜叉様よりお聞きしております。それと、見て分かるとは思いますがここに他のメンバーはいません。だからそんなに緊張しなくてもいいよ、リリ?」
サンドラさんは急に口調を変え、リリちゃんにそう言う。
他の人たちの足音すら聞こえなくなったタイミングで言ったってことは・・・ああ、名無し相手にはまずいのか。
「そ、そう?じゃあ・・・久しぶり、サンドラちゃん!」
「うん、久しぶり、リリ!コミュニティが襲われたと聞いて心配した!」
そう言いながらサンドラさんは玉座を飛び降りてリリちゃんのほうに走り・・・飛びついた。
「どう、最近のコミュニティは?ペルセウスに勝負を挑んだって聞いたけど・・・」
「そうなんだけど・・・新しくコミュニティに来た人たちが何とかしてくれたよ!そちらの奏さんもその一人!」
すっごく愛らしい笑顔で話していた二人がこっちを向いた。
よかった・・・正直忘れられてるのかと思った・・・
「歌い手のギフトでどうやって・・・?」
「まあそれについてはまたの機会にでも・・・サンドラさんはリリちゃんと知り合いなんですか?」
説明するのがちょっと面倒なので、そちらについては後にさせてもらおう。
星霊を倒したなんて知れたらさらに・・・
「はい。元々、“ノーネーム”と“サラマンドラ”は盟友でしたから。こちらが一方的に切ってしまいましたが・・・」
「まあそれは仕方ないですよ。それに、サンドラ様個人はリリちゃんとかと仲がいいんですよね?そういった友情が?がったままなら特に文句はありません」
組織としては利益のない同盟なんて切る以外にない。そればっかりは仕方ないことだろう。
「ありがとうございます・・・それと、私に対して敬語も必要ありませんし、呼び方も畏まらなくていいですよ?今回、私のほうから依頼をさせていただきましたから」
う~ん・・・まあ実年齢は下みたいだし・・・
「じゃあサンドラちゃんで。どうにも昔っから異性を呼び捨てにはできなくて。サンドラちゃんも気楽にして。呼び方も奏でいいし、口調も崩してくれれば」
「そう・・・分かった。じゃあ今回の話に移ってもいい?」
「うん、よろしく。まず、僕はいつどこで歌えば?」
「開会式と閉会式、それとこのギフトゲームの決勝が始まる前にもお願い」
そう言いながら一枚の羊皮紙を渡される。
内容は・・・“造物主たちの決闘”か・・・春日部さんがいたら参加しそうな内容だな。
「うん、分かった。じゃあこっちからもいくつか」
「何か必要なものが?」
「そうじゃなくて、まず伴奏は必要ないし、マイクみたいな増音するものも必要ない。まあ、あっても意味ないしね」
むしろ逆効果なので、あったら困る。今のうちに取り除いてもらおう。
「そう・・・分かった、すぐに撤去させる。他にはある?ないんだったら二人が泊まる部屋まで案内するけど」
「僕はもういいかな。リリちゃんは何かある?」
「えっと・・・サンドラちゃん、何か手伝うことって・・・何もしないのに泊めてもらうのは・・・」
リリちゃんらしい考えだ。でも、一応僕達はゲストとして呼ばれてるわけで・・・
「ゴメン、リリたちはゲストとして呼んでるから、そう言うことをしてもらうわけにはいかない」
「それに、リリちゃんは俺の手伝いをするんだから、そこで働けばいいでしょ?それが、今回リリちゃんがここに来た理由なんだから」
「・・・分かりました!一生懸命お手伝いさせていただきます!」
「うん、よろしくね。サンドラちゃんもそれでいいかな?」
僕はリリちゃんの頭を撫でながら、そうたずねる。
サンドラちゃんは少しボーっとしていたのか、変な間を置いて、
「・・・あ、うん。それでいいよ。じゃあ、案内するね?着いてきて」
サンドラちゃんはそういって謁見の間を出て行く。
どうしたのかは分からないけど・・・とりあえずリリちゃんと一緒についていく。
「そういえば、どうしてサンドラちゃんがサラマンドラを継ぐことになったの?」
驚きはしなかったけど、気にはなっていたことをこの機会に聞くことにした。
「それは・・・私には姉様と兄様が一人ずついるんだけど、姉様はだいぶ前に出て行っちゃて、いないの。それで、残った兄様と私なら私のほうが火龍には向いてたから私が継ぐことになった」
「それで・・・つらいこととかはないの?」
「もちろん、あるよ。でも、私に任せてくれたんだから頑張らないと!」
そういって、サンドラちゃんは胸の前で小さく拳を握った。
まだ親に甘えたい年頃だろうに、という思いと、脆く、壊れてしまいそうだという思いが僕の中を支配した。
「そっか。頑張ってるんだね、サンドラちゃんは」
「え・・・か、奏?」
サンドラちゃんは僕の急な行動に戸惑い、そう名前を呼んできた。
まあ、急に頭を撫でられたらそう反応するのが当然だろう。
「ゴメンね?頭撫でられるの、いやだった?」
「ううん、そうじゃなくて・・・久しぶりだったから、驚いた」
どうやら嫌がっているわけではないようなので、このまま続けさせてもらおう。
「でも、つらいことを溜め込んでたら、いつか壊れちゃうよ?誰かに相談しないと」
「でも、マンドラ兄様には相談できないし・・・」
「じゃあ、僕に相談してよ」
「奏に?」
「うん。コミュニティが違うからいつでも聞けるわけじゃないけど、会った時に愚痴ぐらいは聞けるし、相談にも乗れる」
「でも、迷惑じゃ・・・」
「それも気にしなくていいよ。迷惑だとは思わないから。誰かが頼ってくれるのは嬉しいし」
そして、僕はリリちゃんのほうを見る。
「まあ、さすがに僕にはし難い話もあるだろうけど、リリちゃんもいるし。いいよね?」
「もいろんです!遠慮しないで相談してね、サンドラちゃん!」
「・・・うん!ありがとう、奏、リリ!」
その後、僕の部屋でリリちゃんとサンドラちゃんの愚痴、相談を聞き、二人は部屋から出てリリちゃんの部屋へと向かったのだが・・・
「奏さん・・・広くて落ち着かないので、同じ部屋ですごしてもいいですか?」
リリちゃんはそういって戻ってきた。
“ノーネーム”では百二十人で寝てるし、一人でこの部屋を使うのは落ち着かないんだろう。
僕も一人で過ごすよりは二人のほうが楽しいから、そのまま同じ部屋で過ごした。
後書き
こんな感じになりました。
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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