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MS Operative Theory

作者:ユリス
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MS開発史
  水陸両用MS①

——本物の「水圏」を知らずに進められた水中対応MSの開発——

 「美しい」地球の自然を期待していたスペースノイドは地球に行くと大抵がっかりすることになる。日中と夜の寒暖の差が50度を軽く上回り、砂嵐すら日常茶飯事の砂漠。さまざまな病原体の温床となる熱帯雨林。美しく見える森林にも藪蚊やヒルなどの吸血生物が大量に潜んでいる。ほかにも妙に蒸し暑かったり、やたらと寒かったりと、地球は過酷な場所である。

 海は特に問題だ。潮風はベタ付くし、船が揺れて船酔いもする。沖に泳ぎに行けば海流に流されてしまう。それに水、特に海水は簡単に船を侵食する。宇宙用艦艇もまめな整備が必要だが、海水はチタンの外殻を持つ潜水艦でも無整備で放置すれば、わずか数年で腐食させるほどの侵食性を持つ。海は宇宙よりも過酷な場所だと言っていいだろう。

 また、空気の約1,000倍の重さ、800倍以上の密度、44倍もの粘性(分子間の摩擦)を持つ水の特性、そして移動の際に発生する抵抗や水圧などの諸条件は、海を始めとする水圏の過酷さの証明である。

 だが、地球の表面積の約7割が水圏で占められている以上、地球上にいる限り水も先例は避けては通れない。平時には船をチャーターしたり、飛行機などで移動することも可能だが、地球全域規模の戦闘行為を行う軍他では、水圏に対応した兵器がなくては、その活動範囲は極めて限られたものになってしまう。このために海に面した旧世紀の国家、そしてその後継である地球連邦は、地球上での軍事行動を円滑に進めるための海軍を持っていたが、コロニー国家であったジオン公国では海軍という発想がなかった。

 そこで、地球侵攻作戦を予定していた公国は、U.C.0076,12、地球侵攻用の局地戦用MSの開発をスタートした。この計画において、水中でも運用可能な水陸両用MSが開発されることになった。

 水陸両用MSの開発といってもU.C.0076末当時、戦力化されていたのはMS-­05ザクⅠだけだったこともあって、MSに関するデータが充分だっただったとは考えにくく、開発に着手したといっても基礎研究レベルのものにすぎなかったと思われる。

 もっとも、前述のような水圏の過酷さをデータや海洋コロニーでしか知らなかった公国にとって、開戦3年前の研究開始は意味のあることであった。実際、ベースとなるMSがほとんどないこともあって、水陸両用MSの開発は遅延し、一号機に当たるMSM­-01ことMS-­06M水中用ザクが開発されたのは、地球侵攻作戦開始直前のことであったとされる。

 水中用ザクは、形式番号からもわかるようにザクⅡのバリエーション機で、水密化や水流エンジンの搭載などが行われたが、「人型」の計上は水中に適しておらず、その性能は決して高いものではなかった。汎用機の改修型などという付け焼き刃的なMSでは、過酷な水中で十全な性能を引き出すのは難しい。

 やはり、公国軍は水圏の環境をよくわかっていなかったようだ。だが、公国のMS開発メーカーは水中用ザクで得られたデータを機に、水中戦のみならず地上戦にも対応した「真の水陸両用MS」を生み出していくこととなる。





補足事項

——通常のMSは水中で戦えるのか——

 MSは本来、宇宙用の兵器であり、充分な堅牢性と機密性を保持している。しかし、水中で必要になる耐圧構造や水密構造を採用しているわけではないので、もとから水中戦に対応しているわけではなかった。

 RX­-78-­2ガンダムのような全領域対応MSが限定的ながら水中戦能力をもっていたが、MS-­06J陸戦用ザクⅡはどの地上戦用MSでは機密・水圧性は高くなく、大半の機体が極短時間の水中船にしか対応できなかった。なお、時代が下ったU.C.0150年代にはほとんどのMSが、長時間の水中行動が可能となっている。

——水中用MA、公国軍以外の水陸両用MS——

 一年戦争後、連邦軍は戦力回復のため、鹵獲した公国製MSを各地に配備した。この中には水陸両用MSも含まれており、その重要性に築いた連邦軍は水中用ザクを近代化して配備したほか、総合性能向上型のRMS-192M(ザク・マリナー)を開発している。

 また、ネオ・ジオン(アクシズ)も地球侵攻用にMSM­03C(ハイゴック)の発展型とも言われるAMX-109(カプール)を開発。U.C.0153のザンスカール戦争では、ベスパも可変型のZMT-D15M(ガルグイユ)や宇宙用MAを転用したZMT-A31S(ドッゴーラ)を開発、投入している。ドッゴーラ以前にも、公国軍のMAM-07(グラブロ)のような水中専用MAは存在した。
 
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