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神器持ちの魔法使い

作者:リリック
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ディアボロス
  第07話 フラグだったのか

時の流れは早いもので、気付けば高校二年目の春を迎えていた。

「ふぅ……」

高校初めの一年は案外あっさり終わった。
高校入試は推薦で他のやつらより早く受験勉強とおさらばしたために、半ば家庭教師のような形で一誠を教え込んだ。
そのかいあってか……いや、変態根性のおかげで無事に合格。
入学早々同類を見つけ意気投合して今日も覗きがバレて女子生徒に追われている。

それからグレモリーさんと会長。一応フェニックス家との関わりがあるためにあいさつに行ったところ、それぞれの眷族と顔合わせをした。
それがきっかけとなり、校内で顔を合わせると声を交わすようになったり、たまにあるフェニックス家の依頼のはぐれ退治で共闘したりしている。

フェニックス家といえばレイヴェル。
レイヴェルから冥界(あっち)のこと、俺からは人間界(こっち)のことを定期的に情報交換している。
そんな中でも彼女の口から多く聞くのは小猫のことだったりする。小猫と口ゲンカをしつつもしっかりサポートしているようで、どこかムスッとしながらも楽しそうに話してくれる。
今現在必死で人間界のことを勉強しているとかで、小猫との立場が逆転して大変だとか。

これでその小猫なのだが……

「なんでこんな格好になってるんだ?」

「……自然の摂理だから仕方ないんだよ」

俺の膝を枕にした小猫がリラックスモードでそんなことを言う。

二人っきりの昼休みの屋上、何をするわけでもなく昼飯を食べ終わるなり日向ごっこ。

「それにしても意外だった。あの小猫が無口なクールキャラで通してるんだからな」

「……だってこれしか考えつかなかったんだから」

対人恐怖症がある程度緩和されたから別にいいか。
本人もかなり努力したし。

「……秋人くん?」

「なんでもないさ」

「……にゃぁぁ」

膝に乗る頭をゆっくり撫でる。
気持ちいいのか、屋上には俺たちしかいないことをわかってか猫耳が出てる。

「あ、そうだ」

「どうしたの?」

「最近堕天使の気配を複数感じたから気を付けてね。下級か中級程度だと思うけど」

「……うん。ありがと秋人君。秋人君も気を付けてね」

「わかってるって」

キーンコーンカーンコーン、と学内にチャイムが鳴った。

「昼休み終わったね」

「そんじゃ戻るとするか」

ズボンをはたきながら立ち上がる。

「そういや今日は家に飯食べに来るか?」

「……いいの? 今日部活だから、また遅くなっちゃうよ?」

「気にしない。夕飯作って待ってるから。あ、ちなみに食べたい物あるか?」

「……唐揚げ」

「唐揚げね。リョーカイ」

そんな会話をしながら屋上をあとにして、

「……それじゃあまたあとで秋人先輩」

「おう。またあとでな、小猫」

それぞれの教室に戻っていった。


◆―――――――――◆


あっという間に放課後になった。
教室には友達同士で駄弁っている者、部活動へと向かう者、そしてそそくさと帰路に付く者と様々である。
帰路につく一人としてクラスメイトに挨拶を交わしながら学校を出た秋人は夕飯の材料の買い出しのため、そのままスーパーへ直行した。
小猫たっての希望である唐揚げをメインにその他の料理の献立を考え、冷蔵庫にはアレはあったけどコレはなかったなどと食材を選別して次々に入れていく。

「さて、買い物終了」

買い物袋を片手にスーパーを出た。
帰路の途中、のんびりしてから夕飯を作ろうかと考えながら歩いていると不意に視線を感じた。

(誰かに見られてるな。……この気配は堕天使か)

背に感じるソレから自分を襲う気だと理解する。

(俺を普通の人間だと思っているのか。分かりやすく殺気なんて向けちゃって、見下し過ぎ。……それにしても俺、襲われそうになるようなことしたか?)

疑問を抱きながらも人気のない公園へと誘き寄せる。

(白音に気を付けろと言った矢先にこうなるとは……フラグだったのか)

苦笑しながら公園に入ってすぐに公園一帯を覆うように結界が張られた。

それと同時に生い茂る木々の奥から黒い羽根を生やした一人の堕天使が現れた。

「数奇なものだ。まさかこんなところで神器を宿した人間を見つけるとはな。ましてこのような人気のないところに―――」

後を付けてたくせに白々しい、そう呆れながらも顔には出さず一般人を装う秋人。
それと同時にあることに疑問を持った。

(はて、神器の気配は隠してるはずだったんだがなぜバレた。このカラスがそれほどの実力を持っているとは思わない。となると……フラグのせいか? はい、マジ勘弁。のんびりしたいとは思っても巻き込まれたいとは考えてないし)

堕天使の言葉に耳を傾けるもなく勝手にフラグを立てて、勝手に巻き込まれた自分に対して呆れていた。

先程からしゃべらない秋人を自分に恐怖して声も出ないと思い込んでいる堕天使は気をよくしたのか、次々に言葉を続ける。

「ふむ、恐怖で言葉も出ないか。まあよい。今後の計画に支障をきたす可能性が0ではない、か」

「ん?(計画? まあいいや。殺す気満々みたいだし、帰って夕飯作らないとだし)」

「貴様の命、狩らせてもらおう」

(サクッとやるか)

堕天使が光の槍を作り出し、投影しようとした次の瞬間、

「クハッ! な、なんだ、これ……は……」

禍々しい槍が堕天使を貫通し、風穴を開けていた。

「一般人だと思たのか? 残念。関係者でした。って、聞いてないか」

重力に逆らうことなく落ちた名も知らぬ堕天使を見下ろしなから片手に魔力をかき集める。

「消えて無くなれ」

魔力は炎に変わり、放たれた。
一瞬にして堕天使を包むと炎は火力を増し、消えた。
そして、公園には秋人以外誰もいなくなった。

「ったく、三下のくせに何やってんだか」

荷物が無事なことを確認すると再び帰路に着いた。

「あ、カラス殺った後に鳥の唐揚げとか……白音には悪いけど何か食う気無くすわ」 
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