眠れぬ夏の夜
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帰路
夜の通学路をいつも通り駅の方へと向かう途中
仲間たちと気づいたらはぐれていた。トンネルをくぐり、知らない街へ
いざなわれ、当然のごとく顔見知りなどいない。
こんな不自然なことなどあって溜まるか―
自分が昨日の今日までごく普通の学生だったことを証明できるものも
存在しない。出口は見当たらない。昨日までの日常に戻りたいかという
と戻りたいと即答はできない。しかし、戻るために直向きに出口を探す。
これはゲームなのか、一種の心理テストなのか。見当もつかない。
小さい頃、こんな話を耳にしたことがある。
恵まれない家庭環境で少年期を過ごす子供たちに、高校3年生の夏に
入ったら特別な世界へ招待するという政府の方針―
そこには家庭の貧富の差、陰湿ないじめ、格差など目を反らしたくなる
ものは何もない。ただ、良くも悪くも人間関係だけがすべて消される。
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